ウェルビーング

進化するワークプレイスにおける姿勢

テクノロジーやトレンドがワークプロセスを大きく変化させている中、姿勢への影響を理解することは極めて重要です。それは職場におけるより安全、快適、効果的な働き方を推進することにもつながります。

Gesture Postures

テクノロジーやトレンドがワークプロセスを大きく変化させている中、姿勢への影響を理解することは極めて重要です。それは職場におけるより安全、快適、効果的な働き方を推進することにもつながります。

1980年代以降、ワーカーの激化するPC作業に対応して、人間工学専門家たちによって「座る」という生体力学への研究が加速し、その結果、職場での健康を助長するさまざまなソリューションが開発されました。

30年を経て、オフィスチェアは単純に「座る」モノから 身体のサイズや作業内容によって調節できるエルゴノ ミクスツールへと変化してきました。オフィスワーカー の多くは1日のうち最大で80%を座りながら過ごし、 身体に過度な負担や緊張を強いて生活をしています。 そのことが仕事への生産性、健康やウェルビーングに 大きな影響を及ぼしている事実がさらに綿密な調査 を実施するきっかけになったのです。

直立に固定された状態で座るようなチェアを販売し ているメーカーもある中で、1990年代初頭から実施 された数々の人体研究によってそのアプローチはすで に通用しないことが明らかにされました。オランダの Delftテクノロジー大学のPeter Vink博士は「直立に固 定された状態で座ることを擁護することは今や難しく なっています。何故ならリクライニング姿勢が椎間板 への負荷を軽減することが実証されているからです。 」と述べています。

もう一人の人間工学専門家でワシントン大学の環境ヘ ルス&サイエンスの教授であるPeter Johnson氏は同 様の見解を持っており、「現代の人間工学における目 標の一つは姿勢を変えることを促進することです。一 つの姿勢を続けることはそれが例え快適であっても 身体にはよくないのです。」と述べています。

エルゴノミクスチェアは身体を的確にサポートし、身 体の動きを制限せずに自然な動きに追従するように デザインされなければなりません。このことは人々の 働き方や使うツールが変化する今、ますます重大な項 目になりつつあります。1日中ずっと決まったデスクで

同じチェアに座って、同じ仕事を一人で遂行しつづけ た時代は終焉し、今は多くの人が個人でのタスクワー クと他の人とのコラボレーションワークの間を頻繁に 行き来しながら仕事をこなす時代に来ています。人々 は高いパネルで閉ざされたデスクで仕事をするので はなく、オープンなレイアウトやチームでのセッティン グで他の人と頻繁に交流しながら、ホワイトボードや PC画面、壁などに情報を表示しながら働く姿は普通 になってきています。

テクノロジーは仕事のプロセスに最も影響を及ぼす 要素です。今日、多くのワーカーはデスクトップPCを 使用するだけでなく、ノートパソコン、タブレット、ス マホなど複数のデバイスを使用しながら仕事をして います。RJIインサイト&サーベイセンターが実施した 調査によると、スマホとタブレットを両方使用する成 人の数は2012—2013年にかけて21%から46%に倍増 しています。

2 進化するワークプレイスで適切に姿勢をサポート 人間工学 働き方や仕事のツール、働く人のタイプが急激に変化 する際には、それに合わせて人間工学的要素を再考す ることが必要です。実情を把握するために、Steelcase は2013年に11カ国、2000人以上のもの人々を対象に グローバルに座位姿勢調査を実施しました。次のステ ップは今日働く人々の人間工学的サポートとはどうい うものかを理解するために、観察した変化を体系的に 特徴づけ、それらの影響を分析することでした。

姿勢を左右する3つの要素

テクノロジー的要素

Steelcaseの姿勢研究の主なる発見はスマホやタブレ ットのような小型のタッチ操作デバイスが働く姿勢を 劇的に変えているということでした。手でデバイスを 持ちながら、かつてないほど姿勢を変えながら動い ているのです。Steelcaseの研究員が観察した30の異 なる姿勢のうち、9つが今までに現れたことがない姿 勢でした。一つの姿勢に固定された状態で長い間座 ることが身体によくないとされていたので、その理論 からいうと表面的には健康的な変化に見えます。しか し、実際は新しい小型のデバイスによってもたらされ た姿勢の多くが痛みの原因となり、身体に悪いストレ スと身体への負担を生み出していました。

人体的要素

Steelcaseの研究員たちが特定した2つ目の影響力は 労働力の多様化です。グローバル化と欧米で増加し ている肥満傾向が身体的な多様性をオフィスに持ち 込みました。

社会的要素

3つ目の影響力は世代です。今、職場では5世代が共に 働き、姿勢への嗜好もカジュアルなリクライニング姿 勢からフォーマルな直立姿勢まで様々です。これらの発見によって、Steelcaseの調査チームは人 々が姿勢とデバイスを変える際に身体とチェアがどの ように相互に動くのかというところに大きなビジネス チャンスがあると考えました。何故なら、仕事をして いる時の身体はかつてないほど動いていて、その動き を適切にサポートするためにはチェアはシステムとし て身体に追従すべきだと考えたのです。特に、身体の コア(中心)とリム(上肢)、そしてチェアの間のイン ターフェイスを再度評価する必要がありました。

コア(中心)部分をサポートする

体系的アプローチ

人間工学の専門家たちは数十年もの間、身体のサイズ に関わらず、長時間座っても健康的であるための製品 ソリューションは直立からリクライニング姿勢までユ ーザーが簡単に姿勢を変えることができる調節サポー トの付いたチェアであると認識していました。これに よって動かない背骨への負担を軽減することができる と同時に、背もたれは背骨の動きを真似て追従し、背 中全体に持続的なサポートを与えることができます。

過去の調査では一つのポジションのままでいること が背中をサポートする筋肉や靭帯を疲弊させてしまう ことが分かっています。その反対に、身体を動かすこ とで上肢は新たな筋肉と靭帯に生まれ変わり、圧迫 された筋肉や靭帯を和らげ、回復させ、疲れを軽減す ることができることが明らかになっています。また、 栄養を行き渡らせるためにも動くことは不可欠な行為 なのです。それはまるでスポンジを絞ったり、緩めた りすることで液体が出たり入ったりするのに似ていま す。身体のポジションを変えることで古いモノを椎間 板から絞りだし、新鮮な栄養を入れるのです。

統合されたシステムのように、身体は相互につながり ながら動いています。最近のSteelcaseの姿勢調査で はさらに重要な発見が分かりました。人々はチェアに 座ってよく身体を動かしていること、その際にはチェ アの座面と背面がつながり、シンクロするように動く ことで中心部と腰椎に持続的サポートを提供でき、最 大のサポートを得られるということです。

姿勢調査では今日のワーカーに最適なチェアは様々 な姿勢をサポートする必要があることが明らかにな りました。

リム(上肢)部分をサポートする

ワークプレイスに新たなデバイスがツールとして登場 したことを受けてSteelcaseの姿勢研究で明らかにし たことは、人々はキーボードを操作していた時代とは 異なる方法で腕を動かしていることでした。人間工 学的調査との相関関係にあるこれらの観察によって 新しいアームデザインは人間工学的観点から言うと 極めて重要になることが改めて認識されました。オ フィスワーカーの間では肩や首の不快感は累積外傷 性障害(CTD)や反復ストレス障害(RSI)、筋骨格障 害(WWSD)と呼ばれています。長時間に渡るコンピュ ータ作業、特に毎日繰り返されることによって筋肉に 負担がかかり、最終的に痛みをもたらし、疾病につ ながります。「腕に関していうと、この累積外傷性障 害については医学文献でも明らかになっています。腕 や手を不自然な位置で繰り返し動かすことは痛みや 障害を生み出すことは明らかです。」とVink博士は述 べています。

さらに、アームサポートが適切でないことが原因で肩 や首に痛みを覚える座り方を自然としているのです。 また、アームサポートがないことで作業面の鋭いエッ ジに手や腕を置くことになり、状況をさらに悪化させ ています。

比較的直立姿勢で、左右対称に腕を置く多いキーボ ード操作やノートパソコンでの作業とはちがって、新 たなタッチ操作のデバイスは非対称で行う作業が多 く、極度に首を屈曲させる傾向があります。これらの 現象に対する対処方法としてさらに動きの範囲を拡 げるアームサポートの必要性が高まったのです。 身体の上肢における研究をしつづけているJohnson 博士は「身体や筋肉、関節への負担やストレスは非対 称の動きを適切にサポートされていない時により深刻 化します。」と述べています。

適切に人間工学が考慮されたアームサポートは腕と アームレストの間の幅を最大にでき、ユーザーのサイ ズにフィットすることが条件になります。これは特に 身体のサイズが地域によって大きく異なるグローバ ル市場を視野にいれた製品に関しては特に留意する 点です。

歴史的には、肘の高さでアームレストの高さ範囲が、 臀部の幅でアームとアームの間の幅が決められていま した。CAESARという人体寸法データを使用し、それ にある程度の余裕を加え、男性の下から5%はアーム 間の幅は約33cm、女性の上から5%は約52cmの幅を 必要としており、チェアはこの範囲が基準となって、今 日のワーカーの多様化する身体のサイズに対応する ように設計されています

キーボード操作をする際には、人間工学の専門家た ちは肩から自然におちた上腕、腕は身体に近づけて、 肩、上腕、手首は不自然にならないようにすることと 説いていました。

このことは体格の小さなユーザーまでサポートする にはアームレストがシートのエッジからさらに内側ま で調節できなければならないことを示しています。ま た、幅の調節を拡げることで手に持った小型のデバイ スを的確にサポートでき、デバイスは目線にまで持ち 上げることができ、不自然な姿勢や不健康に首が屈曲 することも防ぐことができます。

収益性:

改正された「イスの科学」

効果的なチェアデザインとはこのイスの科学と人の 身体とチェアとの間の相互作用を理解することから 始まります。異なる仕事のタイプは異なるソリューシ ョンを必要とし、チェアデザインのダイナミックなコ ンセプトは仕事のプロセスとツールに歩調をあわせ ながら変革してきました。新たなデバイスの登場に よって異なる人間工学サポートが必要な姿勢が現わ れ、ユーザーの健康とウェルビーングをさらに助長す る環境の必要性を生み出しました。新たなデバイス、 新たな体格の多様性、新たな仕事のプロセスが働く 際の姿勢を変化させました。よってチェアは身体に動 きにあわせて追従し、積極的にワーカーをサポートし なければならないというニーズが高まり、状況を複雑 にしながらも、今までになくその役目が重要になって いることは確かです。

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