ポスト・コロナ時代のオフィス

ポスト・コロナ時代の競争力を強化する

オフィスの新たな役割と正しい活用法

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当ストーリーは、Steelcaseの最新冊子、 、「来るべき時代へ舵を切る:ポスト・コロナ時代のオフィス」の関連記事です。

コロナ危機で、何百万人もの人が在宅勤務を余儀なくされた。経済再開に向けて動き出す中、自粛中に経験した多くの教訓を通して、企業のCEOたちは今後働き方がどう変わるかに注視し始めている。企業間競争のあり方も変化してきている。かつてないほど変動しやすく、全てが複雑に絡み合ったビジネス環境に突入した今、組織や従業員に必要なものは、コロナ以前の元の状態に戻ることではない。企業が存続し、成功し続けるには、将来の社会情勢の変化にも迅速かつ柔軟に対応し、順応する組織体質へのシフトこそが鍵になる。

当記事では、下記項目に重点を置いた当社の研究結果を紹介している:

テレワークや在宅勤務のみという極端なオフィス戦略に走らせる3つの憶測がいかにリスク高か (コストの比較生産性の定義ウェルビーイング重視の視点から)

今日、現状維持ではなく、変化を推進するのはなぜか。

次なるステップ:安心・安全なオフィスづくりに向けての5つの方法

まさに私たちは時代の転換期の真只中にいる。企業の経営層は従業員がどこでどう業務を遂行するかの選択を迫られていると言ってもいい。選択を間違えればあらゆる面に影響し、その正しい判断を下すことへのプレッシャーは大きい。

完全テレワークにまつわる真実

オフィス不要論は今に始まったことではない。過去に遡れば、Wi-Fiやノートパソコンの普及に伴って、それは常に囁かれてきた。今回の未曾有の危機の中、企業はその柔軟な働き方をようやく受け入れられるようになったのだ。自粛要請の間、多くがテレワークによる在宅勤務を強いられ、仕事に支障はないと感じる人も多くいたはずである。しかし、数ヶ月が過ぎ、ウェブ会議にも疲れを感じ始めた頃、多くの人(調査では88〜90%*)が、再びオフィスに戻りたいと感じている。

多くの人(調査では88〜90%*)が、再びオフィスに戻りたいと感じている。

それにも関わらず、依然としてオフィス不要論が叫ばれているのはなぜなのか?

その背景には、テレワークや在宅勤務が企業にとっても働く人にとってもメリットがあるという根拠のない憶測があると思われる。

テレワークにまつわる

憶測の背後にある真実

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コストの比較

企業にとって、オフィス賃料と人件費は、最大コストの2大要素だ。コスト削減の一貫として、オフィス面積を削減しようと検討している企業もある中、実は人材にかかる目に見えないコストがあることもしっかり把握しよう。

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生産性の定義

企業にとっての「生産性」とは何を意味するのだろうか。業務は自宅でも遂行できるとして、企業の成長や繁栄はそれだけで実現できるものだろうか。競争優位の源泉となる組織力は、斬新なアイデアの創出であり、問題解決力であり、イノベーションに向けての独創的思考力ではないだろうか。

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ウェルビーイング重視

テレワークや在宅勤務は、ワークライフバランスの実現を目指す意味でも理想的な取り組みともいえる。しかし、テレワークに偏った戦略は、生活と仕事の境界線が曖昧になりがちで、生活リズムが崩れてよりストレスを感じるという意見も多い。

憶測 #1

「テレワークの方が費用はかからない。」

オフィス賃料やその関連費用を削減することは、もちろん、大きなコスト削減につながる。しかし、完全テレワークや在宅勤務への移行の前に、見えないコストがあることも理解しよう。

テレワークは万能ではない。

オフィスには、仕事に必要なスペースとツールが揃っている。しかし、在宅となると、人によっては自宅の狭さや家族の存在、機器やネット環境等の問題で仕事が捗らないケースも多いのは事実である。


真実:

全ての業務には適さないテレワークや在宅勤務は、人材流出を招くこともある。

一部の企業経営者は、在宅勤務が広く定着していると言うが、実際のデータではそれは実証されていない。広さと設備が整った環境が自宅にある一部の人は、問題はないだろうが、実際に業務を行う人は、多くの課題が残され、苦労しているという企業も少なくはない。

自宅での仕事環境に関する当社のアンケート調査では、企業の上級管理職(部長以上)は、一般社員よりも自宅に環境や設備が整っていると報告している。

blue square to identify date related to directors in the graph 上級管理職 purple square to identify date related to individual contributors in the graph 一般社員

  • エルゴノミクスチェア(人間工学を配慮)
  • 46%
  • 24%
  • 上下昇降デスク
  • 36%
  • 14%
  • パソコンモニター
  • 43%
  • 29%

在宅で、人間関係を構築するのは難しい。

チームの活発な協調行動の中から信頼関係は生まれる。イノベーションを加速させるのも「信頼」である。対話こそが、信頼ベースの絆を構築し、連帯感や仲間意識を醸成させるのである。

当社のアンケート調査によると、上級管理職以上の75%が常に/ほぼ自宅のデスクで仕事をしているのに対して、一般社員は46%にとどまる。世界中の大都市では、とかく居住面積は狭く、決して快適とはいえない環境の中で仕事を遂行することになる。北京のチョンコン大学院経営大学院の調査によると、半分以上のオフィスワーカーは、在宅勤務で効率が落ちたと回答した。

自宅に仕事環境が整っていない人にとっては、オフィスという選択肢をなくすことで、離職を考える人も増えるかもしれない。実際、ほぼ在宅勤務という人ほど離職率が高く、人材が定着しにくいという調査結果も出ている(離職を考えたことはない=ほぼ在宅勤務という人の5% vs 在宅勤務経験のない人の28%、 Workplace Trends & Virgin Pulse調査)。

ほぼ在宅勤務という人の中で、離職を考えたことがないと答えた人は、たったの5%である。

(Workplace Trends & Virgin Pulse調査)


真実:

テレワークに偏る環境は、イノベーションに不可欠な信頼関係の強化が難しくなる。

カリフォルニア大学アーバイン校のジュディ・オルソン博士によると、テレワークに成功する主な4つの要因のひとつは、リアルな「場」ですでに構築された同僚との人間関係がベースにあることだと言う。オルソン博士は、テレワーク研究の第一人者として100を超える研究論文を発表している。リアルに対面しながら協働してきた人々の間には、協調行動、つまり、うまく連携できる価値観の共有がすでに確立している。これこそがまさにイノベーションのベースとなる信頼関係である。

シティグループ投資銀行の取締役であるパコ・イバラは、ファイナンシャルタイムズ紙*のインタビューで、リモートワークが進み、今後対面での交流がないとしたら、いずれどこかで必ず人々の信頼関係は崩れるはずだと懸念を示した。長年、リアルな「場」で築き上げた信頼関係がリモートワークによって弱体化するまでには一年ほどかかるだろうとも述べた。信頼関係が喪失すると、士気の低下を招き、離職率が上がり、生産性が低下し、最終的に企業はテレワークを放棄し、オフィスへの復帰を望むことになる(VitalSmarts社)。


真実:

在宅勤務は、従業員の安全と情報漏えいのリスクを高める。

米国、ヨーロッパのほとんどのホームオフィスは、労働安全衛生局(OSHA)などが企業に対して規定している厳格な労働安全衛生法を遵守していない。ホームオフィスはその対象外になっている (Forbes.com)。在宅勤務中の怪我や火災の危険性、不十分な照明、人間工学に乏しい什器など解決しなければならない課題は依然として多い。

また、テレワークを行う際のセキュリティ対策も必須である。自宅への来客、ホワイトボードやデスクまわりからの情報漏えいのリスクは高い。また、機密文書がある社内サーバーへのリモートアクセスやIPのセキュリティ対策も万全にしなければならない。実際、IT専門家の84% が、自宅でのデータ損失は重大な懸念事項だと口を揃えて述べている。従業員の労務管理とセキュリティ対策を考えると、テレワークに偏る環境は企業にとっては、さらなるリスクを抱えることにもなり、その導入コストと将来のリスクの両面から慎重に検討する必要がある。

憶測#2

「オフィスと同じよう(またはそれ以上)に自宅でも仕事は捗る。」

これは、「生産性」の定義をどう論ずるかで異なる。自宅でも問題なく遂行できる業務がある一方、創造性、イノベーション、変革を伴う業務は困難を伴う。特に短期間でその効果を判断することは非常に難しい。

優れたアイデアは予期せず生まれる。

潮の満ち引きのように起こる創造プロセスを短いウェブ会議で実現するのは不可能に近い。人は一緒にいながら、情報を共有し互いのアイデアを発展させながらアイデアを具現化し、問題解決へとつなげていくことができる。


真実:

個での作業が増え、コラボレーションの頻度は減少し、創造性は低下している。

マイクロソフトの300人体制のモダンオフィスチームの調査によると、短い会議は急増、長い会議は減少傾向にある。

全体の会議時間は10%増加

30分の短い会議が22%増加

1時間以上の会議が11%減少

短い会議は、表面的には業務効率につながっているように見える。しかし、実際はかなり違っている。あるテック企業の経営者はこう述べている。「実際はある会議から次の会議に一日中追われ、その会議の結果を処理したり、考えたり、実行に移す時間さえもないのです。」要するにコラボレーションとは決してシンプルには語れないのだ。

62.6%の人は、他者との協働が減少したと感じている。

(Steelcase WorkSpace Futuresによる研究)

55%の人は、在宅からのコラボレーションは困難であると感じている。

(U.S. Work from Home 2020調査、ゲンスラー)

ある調査は、危機的状況の中でもネットを介してのコラボレーションは上手くいったと報告している。この結論に入る前に、まずはコラボレーションには下記の3タイプがあることを理解しよう。

– 情報型: 情報の共有や業務調整

– 評価型: 選択肢の検討と意志決定

– 生成型: 今までにないアイデアの生成と複雑な問題解決

自宅での生活音が仕事への集中を難しくする。

なぜオフィスへの復帰を望むのかと尋ねると、誰かと一緒にいたいと答えた人が多い。目標や価値観を共有しながら意欲的に働くには、やはり人と人が対面する時間と「場」が必要になる。


真実:

近接性と社会的義務が生産性を高める。

近接性がチームの生産性を向上させることは、科学的データで証明されてきた。オルソン博士(カリフォルニア大学アーバイン校、ミシガン大学)は、フォードとの共同研究で、同じ場所で働いているチームの生産性は、別々のフロアで働いているチームの2倍になることを実証した。近くにいることで互いの表情や仕草で相手の本音を読みとったり、必要な時にすぐに助けを出したり、質問にもすばやく答えたりすることができるからだ。台頭しているアジャイルな働き方は、まさに同じ「場」にいることを実践し、それを実証している。また、熱心に働く人に囲まれると、その波動に共鳴するように熱心に働く傾向があるとも研究は示唆している。これは社会心理学では「ソーシャル・ファシリテーション=社会的促進」と呼ばれる概念である。実際、聴衆がいると人間はより速く走り、よりクリエイティブに、より問題解決に熱心になることが ハーバード・ビジネス・レビューでも引用されている。

情報型と評価型コラボレーションは、ネットを介して簡単に行うことができる。しかし、通常の環境でも難しい生成型コラボレーションは、バーチャルな環境となるとそのハードルはより高くなる。ウェブ会議を経験している多くの人が、コンテンツ共有の際に表情や視線、間合いや空気感など非言語メッセージを読みとるのに苦労をしている。コンテンツ共有は、イノベーション創出に不可欠な活動である。グーグルのCEOであるサンダー・ピチャイは、最近の ワイヤード 誌のインタビューで、まさにこのことを示唆した。かつて対面で一度も一緒に仕事をしていない人とバーチャルな環境で創造性を伴うブレストをする場合、果たして期待通りの成果を上げることができるのかと疑問を呈した。


真実:

働くことは、本質的に社会参加である。偶然の出会いはネット上では起こらない。

ゲンスラーの「US Work from Home 2020調査」では、オフィスで懐かしく感じるものは何かと尋ねると、74%の人が「人」だと答えた。これは単なる感情的指標ではない。働くことは、本質的に社会的交流でもある。回答者のオフィスに戻りたい主な理由は下記の4つである。


真実:

職場が「行き場のない迷える若者」を生み出す。

完全テレワーク・在宅勤務は、ミレニアル世代やZ世代という若者にも大きな影響を与えている。彼らの多くが、他世代と比べて最も達成感がないと感じており、在宅勤務での仕事が会社の目標にどう貢献し、何を期待されているかが理解しにくいと答えている(U.S. Work from Home 2020調査、ゲンスラー)。在宅勤務は効果があると答えたのは、上記世代グループの僅か35%である。X世代(39%)やベビーブーマー世代(44%)の数値はそれをわずかに上回る。また、テレワークは、若手社員のネットワーキングや人材育成の機会を奪うことにもなりかねない。実際、能力開発とコーチングと答えた人は、オフィスへの復帰を願う人の3分の1を占めた。極端なテレワーク導入は、次世代のリーダーや管理職育成制度にも影響を与える可能性もある。

54%

偶然に起こる
対面コミュニ
ケーション

54%

同僚との 雑談

54%

予定された
同僚との 会議

45%

コミュニティ の一員

モニター上の小さな四角い画面だけでの対話は極めて限定的で、専門性を持った人とのネットワークでは縮小傾向にある。オフィスの通路で偶然交わされる会話も存在せず、新たな出会いも難しい。スティーブ・ジョブズは、偶然に人が出会うことの価値を信じ、啓蒙していたひとりである。かつて、ピクサーのオフィスレイアウト設計に参加した際に、社員同士の偶然の出会いを促すように意図的に設計をつくり込んでいた。それを「計画的偶然の出会い」として語ったことがある。また、マイクロソフトのサティア・ナデラは、原材料の生産性指標が改善されてもあまり喜ばないようにと社員に警告した。会議前後で何気なく起こる会話やアドバイスに価値を見出し、それを検証するのは実際のところ非常に難しいと語ったことがある。イノベーションとは、何かを生み出すためにアイデアが衝突し、コンセプトをつなぎ合わせていった結果として生み出されるものである。そして、その偶然の出会いや発見はいつ起こるかわからない。

憶測#3

「在宅勤務の方がワークライフバランスは向上する。」

在宅勤務にはメリット、デメリットがある。通勤時間や服選びへの時間の削減、家族やペットと過ごす時間が増えるなど確かにメリットも多い。しかし、データによると、そこには様々なデメリットもあることを認識しよう。


現実:

「仕事」と「生活」の境界が曖昧になるため、長時間仕事にどっぷり浸かりやすい。

コロナ発生直後からのテレワーク導入によって、世界中のワーカーの平均労働時間 は劇的に増えた。

アメリカ

1日3時間
増加

イギリス
フランス
カナダ
スペイン

1日2時間
増加

ドイツ
オーストリア
オランダ
ベルギー

1日1時間
増加

在宅勤務は、一日中「仕事づけ」になりがちだ。

通勤時間や通勤途中でコーヒーを買うといった習慣が、無意識に仕事モードに切り替えるスイッチになっている。

ハーバードビジネスレビューによると、企業と従業員がお互いに与え合う交換関係のベースになっているのが「社会的交換理論」という概念で、従業員は在宅勤務を許される代わりに通常より一生懸命に働こうとするというものである。企業は、仕事を増やし、一定期間に完了するよう要求し、それが社員のストレスや燃え尽き症候群につながるという。 バッファーの「State of Remote Work調査」 によると、在宅勤務の際の最大の苦労は、コラボレーションやコミュニケーションの難しさ、孤立感、そして、息抜きをできないと回答する人が多い。

また、完全在宅勤務は、「時間的崩壊」と呼ばれる現象を引き起こす可能性もあると言う。 例えば、今日が何曜日なのかわからなくなったら、曜日感覚が麻痺し、最終的には孤立感や目的の欠如をも引き起こすと言う。オフィスまで車で行く、同僚と一緒にいるなど、場所に基づく毎日のちょっとした習慣があると人は曜日感覚を持ちやすくなる。つまり、仕事と生活を物理的に分けないとその境界線は区別しにくくなるのである。


真実:

ウェブ会議は、対面式会議よりも疲れる。

「ズーム疲れ」と言う言葉をよく耳にするようになった。PC画面に向かうことが多い現代人の疲労要因は、脳科学でも解明されている。人間の脳は言葉からだけでなく、相手の表情や仕草、声のトーンや間合い、沈黙など些細なことを手がかりに情報を集めている。しかし、ビデオ通話では、その多くの視覚的情報が限られるために脳がフル活動し、通常よりも疲れ易くなると言う。また、誰もがそのステージのような画面上の自分を意識し、緊張とストレスでよりエネルギーを消耗してしまうのだ。仕事と生活の区切りを設けたり、休憩をとったりすることだけでも疲労はかなり軽減される。このようにネットを介しての環境では、全てを計画的に実行することが非常に重要になる。

パンデミック中に当社が実施した調査によると、自宅で仕事が捗ったと回答した人はわずか21%で、コロナ危機以前の当社の グローバルレポート:「世界のエンゲージメントと職場環境」 での回答結果の34%を大幅に下回っている。また、オンラインのみに偏ったコミュニケーションが続くとデジタルストレスにもなりやすく、仕事への意欲が削がれる可能性があると結論づけた調査もある。テレワークの頻度が多い従業員の3分の2は、仕事へのやる気も低下している (Workplace Trends & Virgin Pulse調査)。緊急事態宣言の間は、多くの人がテレワークを余儀なくされ、従業員が職場に復帰している現在、会議はますますリアルとネットの融合になると予想される。つまり、オフィスにいる人といない人の間には「存在の格差」が生まれやすくなり、結果として非効率な状態を生み出すことになる。


真実:

座りがちな仕事は、健康リスクが上がる。

世界最大の医療情報サイトWebMDは、アメリカで1,000人以上を対象にしたアンケート調査で、女性の半数と男性の25%が在宅勤務中に「体重が増加した」と報告している。その要因となるのが、身体を動かさない、姿勢を変えない、過食になりがちといったことである。さらに、自宅では人間工学的に適切な什器が整っていないため、長時間に及ぶパソコン作業が身体の痛みや疲労を誘発する要因にもなっている。イギリスの職場環境戦略コンサル会社、WKspaceの調査は、84%の人が仕事を遂行するのに適したスペースを自宅に望んでいると報告している。在宅勤務では、運動量、人間工学的サポート、バランスのとれた食生活といった従業員のウェルビーイングに関わる全ての側面が欠如しがちになる。

一日を通して、身体を動かすことが重要である。

在宅勤務が長期化し、毎日、同じ場所に座って、パソコン画面に向かいながら仕事をすると、身体面、精神面、情緒面での疲労が蓄積していくのは避けられない。身体は常に動かすことで身体の中からエネルギーが湧き、気分転換にもつながる。

次なるステップ:現状維持ではなく変化を推進する

働き方とその職場環境は将来どうなるのか?それは元の状態に戻そうとするのでも、コスト削減を前提とした偏った方法に走るのでもないのだろう。必要なのは職場環境への新たなアプローチである。働く「人」を主体とした安心かつ安全な環境、「組織」にとっては成長を踏まえた賢いソリューションを考えることである。

WKspaceの世界的なアンケート調査は、在宅勤務での生産性は、ある一定期間を過ぎると低下し始めると報告している。在宅勤務を導入してわずか5週間後には、働く楽しさやモチベーション、人とのつながりといった要素は減少し、生産性は低下し始めた。

世界のリーディングカンパニーは、長期的なテレワークや在宅勤務導入から多くの教訓を学び、戦略へとつなげている。結局は、企業の成長と企業カルチャーの構築、グローバル経済を推進するイノベーションを加速させるためには、働く「場」は不可欠であるという結論に至り始めている。

しかし、かといってそれは今までのオフィスへと戻ることではない。これらのリーディングカンパニーは、オフィスを排除するのではなく、競合他社にはない競争優位性とどうつなげていくかという観点からオフィスの役割を再考し始めている。

アップルやグーグルを代表格とする多くのリーディングカンパニーは、テレワーク戦略を導入しながら、従業員を安心・安全にオフィスに復帰させる方向性を示している。そして、その核となるのが、オフィスやサテライトオフィス、自宅といった様々な場所をつなげる包括的かつ柔軟な「場」のエコシステムの構築である。つまり、様々な「場」を選択できるようにすることで従業員が安心・安全かつ意欲的に働けるような環境を整備しようとしているのだ。このアプローチは、従業員、企業双方にとって最大の利益をもたらし、将来のいかなる混乱の際にも迅速かつ柔軟に対応できる弾力性ある組織と環境で事業を後押していく。


安心・安全なオフィス構築のための5つの方法

下記は、当社の何十年にも及ぶ研究をベースにした戦略の一部である。変化し続ける状況に順応し、従業員が帰属意識を保ちながら、安心・安全かつ生産的に働ける環境を構築するものである。

1

豊富なチョイスとコントロールを与える「場」のエコシステムを構築する

安全だと感じる感覚は十人十色で、それも日々変化していく。オフィス、サテライトオフィス、自宅など従業員がその時々のニーズに応じてどこでどう働きたいかを選択できる「場」のエコシステムを構築することが重要である。「場」の選択を与えることで、自己管理能力の向上や安心感にもつながる。当社のグローバルレポート:「世界のエンゲージメントと職場環境」でも、自律的な働き方をしている従業員はより職場環境に満足し、仕事への意欲も高いということが分かっている。

優秀な才能を確保するためには、多様な人々のニーズを把握し、働きたいと思える魅力的な職場環境づくりが必要である。集中、コラボレーション、交流、学習、休息といったさまざまなタイプの活動や多様な働き方をサポートするための空間づくりである。

2

固定的から流動的へとシフトさせる

内装や家具が固定された仕事環境は、もはや機能しない。感染症も含め、歴史的な自然災害や社会的混乱は予測不可能である。これからの不確実な時代には、従業員自らが容易に迅速にレイアウト変更できる環境が必要不可欠になるだろう。そうすることで、現在のような対人距離の確保が自由自在にできるだけでなく、将来の業務内容やプライバシーニーズの変化にもより柔軟に対応できるようになる。

3

「チームの中の個」を重視する

オフィスを設計する際、台頭するチームと個の両ワークのニーズのバランスをとることも考慮しよう。コロナ以前は、チーム主体に重きを置く傾向があり、多くのスペースから個人の集中ワークスペースが削られていった。ポスト・コロナ時代のオフィスでは、テレワークでは困難なコラボレーションをよりサポートするようになり、個人とチームの両ワークを素早く切り替えられることが鍵になるだろう。在宅では困難な集中のための多様なスペースやストレスと不安を解消する休息のためのスペースも必須になる。また、長期化する出張制限によって、分散型ワークが増え、オフィスに出社する人とテレワークの人が混在するため、動画通話の頻度は今まで以上に増えることも予想される。そのため、ビデオ通話を邪魔しないように今まで以上の多くのスペースが不可欠になる。

4

あらゆるコラボレーションの「場」を高機能にする

コロナ以前、コラボレーションの「場」として多く利用されていたのが、カフェの雰囲気を持つオープンスペースと個室タイプの会議室だ。今後は、そのどちらをも見直し、パフォーマンス重視の高機能スペースに進化させるべきである。調査によると、オフィスの中で最も魅力的な空間はあまり利用されていないのが分かっている。やはり、人は仕事をよりこなせる「場」に引き寄せられていく。従来の個室タイプの会議室には、ホワイトボードや機器が完備されていても、創造的思考を促すようには設計されていない。そして、今では対人距離の問題も浮上している。これからのコラボレーションスペース には、刺激的かつ高機能、そして、安心・安全な環境が望まれる。オープンと個室の両タイプ、豊富なタイプのチェア、電源を装備したリラックス空間、プライバシーレベルの調整などの要素は必須になる。そして、アイデア出しや活発な情報共有のためのホワイトボードや大型のコラボレーションデバイスの完備も欠かせない。

5

リアルとネットを融合する

緊急テレワークの導入によって、多くの人のデジタルスキルは向上した。そして、現在、リアルとネット両方での働き方がようやく実現し、同じ場所にいる人といない人が共に集い、つながる「場」が必要とされるようになった。チームによるオンラインでのコラボレーションが増えるにつれ、クリアな鮮明度でどこにいようと、人とコンテンツにつながる臨場感あるビデオ体験を提供する大型のコラボレーションデバイスが脚光を浴びるようなった。

「スマート&コネクト」テクノロジーが組み込まれ、職場でのタッチレス体験を促す動きも加速している。スペース利用率データは、密集度を調整できると同時に、消毒頻度を把握したりなどデータ主導の意思決定プロセスをサポートするようになる。また、どの段階で環境を変更すべきかを判断する際のデータ活用も、今後は戦略の重要な部分を占めることになるだろう。

出典元:

*Cushman and Wakefield which surveyed 40,000 people globally reports under 10% will work from home full-time.

*Gensler’s U.S. Work from Home Survey 2020 reports only 12% of workers want to work from home full-time.

Buffer and AngelList, “State of Remote Work 2020,” lp.buffer.com/state-of-remote-work-2020

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https://asia.nikkei.com/Business/Business-trends/Work-from-home-to-cost-Japanese-companies-12.1bn-study-finds

https://www.statista.com/statistics/1120075/hong-kong-disadvantages-of-working-from-home/

https://www.bbc.com/worklife/article/20200309-coronavirus-covid-19-advice-chinas-work-at-home-experiment

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