ハイブリッドワーク:新・働き方へのシフト

未来の働き方はハイブリッドでより豊かに。

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コロナ禍によって加速した出社とリモート併用のハイブリッドワーク。しかし、その考え方は決してコロナ禍を機に始まったわけではありません。かつてのモバイルワークは固定席から従業員を解放し、より多くの選択肢と自律性でオフィス中を動きながら好きな場所で仕事ができる戦略のひとつでした。そして、一部の進歩的な企業のものであったハイブリッドワークはコロナ禍を契機に注目を集め、以前は検討さえしなかった企業にも浸透しつつあります。

ハイブリッドワークの導入規模に関わらず、コロナ禍によってその導入時期が大幅に前倒しされたことは確かです。

もちろん、ハイブリッドワークがすべての企業や職種に当てはまるわけではありません。しかし、少なくとも実現可能な企業は導入せざるをえない状況に置かれ、最新調査でも就職先を選ぶ際の重要指標のひとつにも浮上しています。

「売り手市場」といわれる今日の労働市場。求職者の企業選びのポイントや企業への要望が人材戦略にも影響を及ぼしているのは確かです。実際には人材争奪戦はコロナ禍前から活発化していました。IT技術の進歩で高スキル労働者はより良い待遇を求めて転職し、テレワークによって都市部からより安価な郊外へと居住を移す人も増加しています。いまや、企業にとって、才能をめぐる人材獲得競争は距離や国境を超えて世界規模へと広がっています。

在宅勤務のメリットを体験し、その柔軟な勤務体制を継続してほしいと感じる従業員も増えています。一方、企業は、従業員の意識や要望の変化をリアルで切実な課題として認識し始めています。

今後、ハイブリッドワークがますます普及する中、自宅などオフィス以外の場所で効果的に働ける体制をいかに整備していくかが企業と働き手双方にとっての課題になることは間違いありません。しかし、その実現にはハイブリッドワークが企業の組織文化と合致していること、その運用が適切であること、そして、従業員の働く体験そのものが成果につながり、より豊かになることが前提になります。

Steelcase最新調査 から分かること:

世界の企業経営者の89%は、ある程度の選択肢とハイブリッドワークの導入を計画している。
従業員の78%は、テレワークなどより柔軟な勤務体制の継続を望んでいる。

ハイブリッドワーク導入の際には、対面とリモート両方での働き方にメリットがあり、どちらにも自分の居場所があることが鍵になります。

ハイブリッドワークの概要

ハイブリッドワーク戦略を導入する場合、必ず自社の状況に合わせた方法での運用を検討すべきです。全員がオフィス出社という従来のアプローチがベストな場合もあれば、その反対に状況に応じてテレワークなど柔軟な勤務体制が適している企業もあるからです。

ほとんどの企業はその中間で下記のような運用を採用しています:

曜日で設定。この場合、企業側が出社日数を設定し、通常は週3日です。状況に応じて頻度数は推移し、チームと個人両方のニーズに柔軟に対応します。企業によっては出社日数を設定しますが、どの曜日に出社するかは各チームに委ねられています。

出社日を曜日で設定する場合は、火曜から木曜までを出社とし、月曜と金曜はテレワークという具合です。これによってオフィスに縛られないより自由な働き方を実現しながら、組織文化を醸成し、競争力を高める対面での協働タイムも維持しています。出社日が決まっていることで対面ミーティングの調整も容易です。

週で設定。月単位で出社ウィークを設定する場合は、月のうち1週間または2週間集中して出社するというものです。組織全体で出社ウィークが設定されているか、あるいはその設定がチームに委ねられている場合もあります。

チームで決定。出社日など働き方の権限をチームに任せている稀なケース。基本的に高度な自律性でオフィス以外の場所での仕事の遂行と時折の対面報告を奨励し、出社日はチームリーダーが対面の必要性があると感じた場合に設定されます。

ハイブリッドワーク導入下においても、業務の性質と組織文化の醸成にはある程度の対面での協働やコミュニケーションの機会を考慮する必要があります。この場合、なぜ出社をしてほしいか、出社の際の勤務時間、さらには組織、個人両方の側面からのメリットを明確に伝達することが従業員の不安等を取り除きます。

有能人材の獲得競争はますます激化しています。人材確保が困難になればなるほど、従業員同士の接点を増やし、組織の一員として帰属意識を感じることや十分な自律性や選択肢を与えることがいかに重要であるかを実感できるはずです。

また、これからの予測不能な時代にあって、こうした方針もビジネス環境に合わせて変化し続けることを肝に銘じましょう。生産性の測定、組織文化の考慮、そして、従業員のリアルな声に基づいて常に更新、改善されていくことが理想的です。

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主要な考慮事項:バランス、変更、そして、選択肢

加えて心に留めなければならない点は、運用に向けての考慮事項や導入プロセスは非常に複雑であるということです。最善の方法としては、まず何が機能するかを探し出し、継続的に学びながら時間をかけてそれを微調整していくことです。その際には以下の点を念頭におきましょう。

個々の従業員にとって最善であることが必ずしもチームや組織全体にとっても最善であるとは限らないこと。要はその両方のバランスを適切に図ることです。確かに通勤時間ゼロが従業員のワークライフバランスを大幅に改善し、柔軟性という観点からハイブリッドワークは高く評価されています。

その一方で、オフィスでの対面時間が減少することで上司と部下、同僚間の信頼関係、コラボレーションやメンターシップ、従業員モラルといった要素の低下を招いています。従業員が組織に定着しなければ、組織文化の醸成も不可能です。おそらくハイブリッドワークの最大課題はいかに個人と組織のニーズのバランスを図るかということになるでしょう。

そのバランス状態がどうであれ、今後確実に再定義されることは間違いありません。しかし、ハイブリッドワークへの大幅な移行にはコストも伴います。しかも、その具体的な運用方法や効果は誰にもまだ分からないというのが現状です。よってその戦略は短期、長期両方の観点から策定するようにしましょう。

一部の企業ではハイブリッドワークが定着しつつもコロナ禍前に逆行している企業もあります。確かなことはオフィスが新たな役割を担い、働き方はより豊かなものへと進化していくということです。世界のトップ企業は、ハイブリッドワーク戦略を将来的には微調整していくことを念頭にとりあえずは運用を開始しています。

そして、何よりも重要なことは従業員が豊富な選択肢を望んでいるということ。Steelcaseの最新実態調査 では、働き手はより多くの選択肢と自律性を与えられることで仕事により意欲的になることが報告されています。企業側は従業員を信頼し裁量権を与えること、つまり、従業員自らが当事者意識を持って自発的に行動することがチームと組織の成果につながるという考え方です。ハイブリッドワークで従業員を満足させながら、同時に事業や組織文化をどう継続していくかとの微妙なバランスを図っていくことが鍵になります。

有能な人材を魅了する企業の多くは、従業員が最善を尽くして仕事をこなせるような環境に注力する傾向があります。その中にはオフィスでの多彩な「場」はもちろん、自宅やカフェなどオフィス以外のさまざまなスポットも含まれます。

リモートメンバーとの円滑なコラボレーション

オフィスとリモート両方にいるメンバーのコラボレーションを円滑に機能させるのは決して容易ではありません。分散した同僚や国境を超えたビジネスパートナーとのコラボレーションを実践してきたグローバル企業の最善事例からそのヒントを探りましょう:

スケジュールの共有化。 スケジュール共有システムを開発し、出社予定の人の見える化を図りましょう。

雑談で始める。 会議で本題に入る前に数分間何気ない雑談をして信頼関係の構築に努めるように。互いに初めて顔を合わせる場合には簡単な自己紹介も忘れないようにしましょう。

ビデオ通話は常時オンにする。 リモート参加者はできる限りビデオ通話をオンにすることで距離の障壁を減らすことができます。

音声を確認する。 会議室のマイクの位置を把握し、リモート参加者が全員の声を明瞭に聞けるかどうかをチェックしましょう。

映像を確認する。 会議前にリモート参加者からの見え方をチェックし、カメラ位置を動かしたらマーカーボードのコンテンツを事前に画像で送っておきましょう。

敢えて進行停止する。 時々進行を止めてリモート参加者の発言を促しましょう。チャット担当を決めたり、意見は挙手制にするかなどウェブ会議の際のマナーと進行方法を事前に設定しましょう。

次のステップを明確にする。リモート参加者は、会議退出後のまとめを見逃しがちです。終了時の会議のまとめや次へのステップを聞いて退出するようにしましょう。

「裁量で決める」を奨励する

ハイブリッドワーク方針により、個人やチームは組織が設定した枠組みの中で仕事を効果的に遂行できる場所を選択できるようになります。企業は個人やチームがどうすればそれが可能かを自主的に考え、計画できるよう奨励しましょう。その際には下記のポイントを考慮しながら最も効果的に働ける「場」を決定することが成功のポイントです。

  • 仕事の性質。反復的なルーティン業務や熟考が必要な業務は在宅向きです。一方、問題が複雑で緊急を要する場合、ブレストやアイデア生成など創造ワークを伴う場合、他者とのコラボレーションが必要な場合等はオフィスが適しています。
  • デリケートな問題。ビデオ通話は顔を見ながらの対話が可能ですが、視線の動きや表情、しぐさといった非言語情報を得るのは困難です。このため、誤解を招きがちな込み入った内容や難しい交渉は可能な限り対面にしましょう。
  • モチベーションを高める。在宅勤務も長期に渡るとメリハリがなく単調に感じることも。仕事をスムーズに進めるにはモチベーションを高める工夫が大切です。例えば、1日はオフィスで過ごす、見える景色を変える、オフィス内を歩く、活気ある環境に身を置く等々。ちょっとした気分転換が心身のウェルビーイングを改善し、仕事の生産性が高まります。
  • 休息タイムを探す。今までは仕事を充実させるためのコツは仕事と生活を切り離すことでした。しかし、ハイブリッドワークの普及でそれも困難に。自宅では騒音や生活音などの悩みで仕事に集中できない、逆にオフィスでの1日が待望の休息タイムということがいまや現実になりつつあります。
  • 人とのつながりとキャリア開発。 オンライン上でも人とのつながりは構築できますが対面に優るものはありません。他者から学ぶ、人的ネットワークを構築する、助言や手助けをしてくれる仲間との力強い信頼関係をつくるには対面がベストです。在宅勤務でのデメリット対策を講じると同時に、対面コミュニケーションが学びと成長、より価値ある人間関係構築にとって大事であることを認識しましょう。
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人を引きつける「場」

多くの従業員にとって、出社とリモートどちらか一方に傾く傾向にあるため、柔軟な働き方の選択肢としてはまだ根づいていません。多くの人にとって、その選択に迷いがあるのも確かです。実際、最近の Steelcaseの実態調査 によると、34%の人は出社とリモートの二者択一いう選択を望んでいません。つまり、より仕事の成果と満足度を高める働き方を生み出すためには「通勤をしてでも出社したい」と思える仕掛けをすることの重要性を示唆しています。

什器やネット環境が整った快適な仕事スペースが自宅にない人は、オフィスの快適さをむしろ好みます。 Steelcaseの実態調査によると、オフィスに自席があればテレワークでなくても良いと感じている人が多くいるということです。実際、自宅は仕事とプライベートの切り替えがうまくいかず、さまざまな要因から仕事への集中や熟考がしづらい環境です。その解決策として、予約可能なスペースをオフィスに設置することで時間や仕事の非効率性を回避し、集中ワークの「場」を確保できます。このように多くの人はオフィスに快適さや自律性だけでなく、帰属意識を醸成できるスペースなどさまざまなニーズや欲求をサポートしてくれる仕掛けを望んでいます。

ハイブリッドワークがますます普及し定着する社会に向けて、オフィスを出社したいと思える「場」の選択肢として再構築することが企業には求められています。自宅にはない活気と魅力溢れる「場」。それが有能な人材を惹きつけ、戦力として定着させます。

さらに、従来のオフィスはもはや通用しないということです。今までのオフィスは自席での仕事を念頭に一人当たりの占有面積をベースに設計されてきました。しかし、今後は人とのつながりやコラボレーションのためのスペースが中心になり、これは在宅勤務では実現し得ないということです。オフィスとリモート併用の時代にあっては、協働とテクノロジーの観点から「ハイブリッドコラボレーション」にますます注目が集まります。最近のSteelcaseの実態調査結果でも多くの企業が働き方を進化させるソリューションとして「ハイブリッドコラボレーションスペース」を挙げています。

しかし、オフィスでコラボレーション、自宅で集中ワークというようにどちらかに偏りすぎるのも問題です。Steelcaseの実態調査でも多くがオフィスでのプライバシー欠如に悩んでいることが分かっています。結局のところ、在宅はオフィスより窮屈で思ったより仕事に集中できないと実感している人は決して少なくありません。

そこで考えたいのが、オフィスを働くための理想的な「目的地」にすることです。まずは「働く」を「集中」、「コラボレーション」、「交流」、「元気回復」、「学習」という5つのワークモードに分類します。こうすることで出社日を管理でき、遂行する仕事や目的に基づいて働く「場」を選択するという働き手の自律性を促すことがより容易になります。

環境を自ら調整できる「コントロール感」は、 Steelcaseの実態調査で特定された5つの従業員欲求である「生産性」、「快適さ」、「安全性」、「帰属意識」と並ぶ要素です。

目の前のタスクに合わせてスペースを自由に選択できるようにすること、つまり、豊富な「場」の提供によってこの「コントロール感」を満たすことができます。「生産性」には、目の前の仕事に集中できると同時にイノベーション創出のために人的交流を促すスペース。「快適さ」には、自宅のリラックスした雰囲気をオフィスに取り込むことで元気をチャージできるスペース。「帰属意識」には、組織の一体感やコミュニティ意識を育てるコラボレーションや交流、学習のためのスペース。「安全性」には、感染防止的観点から清潔さや換気に加え、ソーシャルディスタンスが確保できるような柔軟性の高いスペース等といった具合です。

しかし、最上のオフィス構築は、物理的空間だけでは実現しえません。空間はあくまでも全体の中のひとつの側面であり、働き方をサポートするひとつのツールにすぎません。理想的には「組織文化」、「業務プロセス」、「ツール」といった他要素とあわせて適切に計画されるべきです。組織文化とは組織の理念やルール、価値観であり、業務プロセスとは仕事を遂行する方法、ツールとはテクノロジーや他の仕事ツールのことを指します。

下図は、これら4要素の相関関係を表しています。そのすべてが揃うことで「あらゆる場所がオフィス」となる柔軟な環境を構築でき、その環境が有能な人材を引きつけ、逃さず、戦力として定着させることができます。

Steelcaseの実態調査では、「オフィスに愛着がある人」は、仕事により意欲的(33%)で、組織文化とのつながりがより強く(30%)、生産性がより高く(9%)、離職率がより低い(20%)と報告しています。適切に設計されたオフィスは、発想力や人間関係を強化し、自宅に代わる魅力ある選択肢として威力を発揮します。

重視される職場の「公平性」

世界中で多様性への受容が叫ばれる中、人間の基本的欲求のひとつである「公平性」の欠如が離職する理由のひとつに挙げられています。職場での 「公平性」の重要性は当社の最新実態調査でも明らかになっています。不公平感を放置することは従業員の仕事への意欲や愛着心にも大きく影響し、離職へのリスクを高めます。

しかし、ハイブリッドワークの導入によって、この職場での「公平性」が問題視され始めています。業務によってはテレワークができず、誰もが同じような柔軟な働き方を享受できない不満や不公平感が生まれているのです。よってその導入には慎重な対応が求められます。

テレワークに不公平感を抱いている人や部署による出社日数の違いも考慮しながら出社勤務の従業員に対する心理面でのケアも検討しましょう。

また、「公平性」への対策のひとつは、まずは全体の規範を確立すること、そして、その規範をベースに意思決定プロセスを見える化することです。従業員はなぜ、どのように意思決定が下されたかを知らされることで企業への信頼感は高まります。

また、変化に抵抗しない組織であること。ハイブリッドワークは浮上したばかりの新しい概念です。仕事の成果という観点から在宅勤務のメリットを実感し、さらに拡大すると感じるなら出社とリモートの境界線はさらに曖昧になり、受容しやすくなるだろうと考えます。

最後に、説明責任を組織文化に根づかせること。責任を曖昧にするのではなく、自由度と自律性がある人は業績と結果に責任を負っていると納得させることで「公平性」が問われる機会は少なくなります。

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「従業員エンゲージメント」を高めるためのヒント

いかに従業員エンゲージメントを向上させるかはコロナ禍前から企業が抱える重要課題のひとつでした。そして、コロナ禍、多くの時間をオフィス以外の場所で費やしたことでその低下の深刻度が増しています。

従業員のやる気や仕事へのモチベーションを高めるには、組織や個人の将来のビジョンや目標を明確にするという方法があります。目指す将来の姿を楽しみにしている従業員は、幸福度が増し、その結果として仕事の成果が向上したという調査報告もあります。例えば、チームの定例会議の開始時に必ず1週間とか1か月単位での計画を明確にするとか、組織の未来像を描き、そこへの道のりとその達成方法を皆でブレストするビジョンセッションのようなものを開催することも解決策のひとつです。

また、組織として、チームとして、過去の失敗事例の要因や改善策を話し合い、気づきを共有すること。それが仕事へのモチベーションにつながります。弱みや弱点を明確にし、教訓として学び、互いに補い合うことがチームの結束力を高め、改善のためのアイデアを生み出すこともあります。

そして、ハイブリッドワークを社内に定着させるには共有体験を意図的に共有すること。同僚間の結束力はタスクやプロジェクトで密に協働することで形成されていきます。その鍵となるのが目標の共有や役割分担の方法です。交流を促すソーシャルイベントの開催も役立ちます。ただし、こうした交流イベントはチームによって考え方も異なるため、その開催は慎重に検討しましょう。

さらに、チームや部署の枠を超え、組織内の個人の孤立化を回避することも重要です。他の部署やチームとの主要プロジェクトの情報交換用プレゼン、社外の人やグループとのネットワーキングも解決策として有効とされています。個々人の視野や視点が広がり、日頃の業務の見直しや質の向上につながるからです。

人間は社会的動物で他者とのつながりを本能的に求めるものです。未来像を描く、心を開く、チームの一員としてとして骨の折れる仕事も進んでやる、仕事以外での時間を共に過ごすなどの行動が仕事へのモチベーションを上げるきっかけにもなります。

「信頼」を築くためのヒント

信頼は良好な人間関係の礎です。しかし、リモートで信頼関係を築くことは困難だともいわれています。ハイブリッドワークの導入でリモートが増え、対面コミュニケーションが少なくなる場合にはいかに信頼を育むかの対策にもっと力を注ぐすべきです。

  • 目的を持ってつながる。従業員が毎日出社しない中、出社した際には経営層は率先して意識的にコミュニケーションをとるようにしましょう。経営層と従業員との偶発的な雑談が会社に対する信頼感や愛着心を育てます。
  • 予測できる。先行き不透明な時代にあっては、人は拠り所となる確信を求めがちです。信頼は日常的に蓄積されることで確固としたものへと変わります。信頼を維持するには挨拶や笑顔、思慮深い行動を常に心がけること。それはまるで感情の信託銀行に預金をするようなものです。
  • 分かりやすい。自分の意思を分かりやすく伝えられるリーダーは社員から信頼される傾向があります。自分の考えを明確にし、心を開いてありのままを伝えることが結果を生みます。
  • きちんと褒める。部下が素晴らしい仕事をしたらその功績を認め、たっぷりと褒めましょう。また、部下を信頼し、味方になって戦うべき時は戦えるリーダーは部下の忠誠心を育てチームの団結力をさらに高めます。
  • 性善説で管理する。テレワークの際に上司は部下の様子が見えずに仕事をしているか疑心暗鬼になりがちです。ハイブリッドワークで成果を出すには部下やメンバー同士の信頼関係が前提にあります。そのためには自己裁量を認め、仕事に対する当事者意識を持たせることも大切です。信頼関係が薄れてきた場合には、まずはその関係修復に注力しましょう。

ハイブリッドワークでは、時間の経過とともにその信頼関係は脆弱化しがちです。その際に試されるのはリーダーシップ力です。こういう混乱と変化の時こそ、率先して信頼関係の構築に力を注ぐ姿勢が大事です。

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部下との対話の機会を維持する

対面コミュニケーションの機会が少ないハイブリッドワーク時代でこそリーダーシップの資質が問われます。接点が少ない中での帰属意識や結束力を高めるヒントのいくつかをここに紹介します。

部下の日常の悩みや不安、仕事の課題などに親身に耳を傾けるコーチングと意思決定プロセスに時間を割くこと。時にそれは上司と部下という上下関係の壁を取り去り、仕事で悩んだ時にはいつもそこにいるという安心感が信頼関係を一層高めます。

上司はカメラを常にオンにして部下が必要としている際には気軽に対話ができるような環境を整えましょう。定期的な1on1ミーティングなどは進捗状況の確認や重要な問題への迅速な対応ができるという意味で効果的です。また、カレンダーツールでのスケジュール共有でメンバーの動きを見える化し、即座のミーティング設定も容易にできるようにしましょう。

上司は、部下が必要とする時には必ず応え、指示出しができるようにしましょう。部下が指示を求めた場合は、後回しにするのではなく、その場で対応することが肝心です。もちろん、意思決定に時間を要する場合にはその旨を伝えましょう。部下の要請には迅速に対応し、業務の邪魔になるボトルネック上司にならないようにしましょう。

上司と部下、メンバー同士の距離があるハイブリッドワーク環境では、互いの細かな気遣いや思いやりを意識的に心がけること。その心がけが信頼感を高め、結束力向上につながります。

進化への分岐点

オフィス変革への分岐点となるのが今回のハイブリッドワークです。各企業にあったベストな方法を探究しましょう。その際に不可欠なのが従業員との対話と実験的試み、そして、試行錯誤です。働く「場」と働き方が実際の仕事の成果につながること、活気に満ちた魅力的な環境であること、そして、ハイブリッドワークへの課題を設定し、時間の経過にあわせて改善していくこと等を心に刻みましょう。

最後に、情熱と熱意を持って、それぞれの企業にあった出社とリモート併用のベストなバランス具合を見つけ出すことです。働き手が仕事で最善を尽くせるようにするには、個人やチームにとって最大効果を発揮できる場所を自己裁量で選択できること。そのためには、働き方を徹底的に分析し、すべてのワークモードをサポートする多彩な「場=目的地」の構築が不可欠です。

是非ご相談ください

私たち、Steelcaseは、業界をリードするグローバルな販売ネットワークと連携し、世界中から集積した知識と経験を生かしながらハイブリッドワークプレイス構築のためのお手伝いをしています。本社のコンサル集団である Applied Research + Consulting (ARC) の手法を用いてお客様向けのユーザー調査やワークショップを実施し、共に学び、実験し、構築するサポート体制を整備しています。ご興味がある方は是非当社までお問合せください。