問題解決+情熱が医療スペースの設計デザインを加速させる
私たちは皆、病院に行った経験があるはずだ。James Beukema氏のように妻の出産に立ち会い、娘の誕生を感動的に迎えた時。あるいはRyan Ramos氏のようにアルツハイマーを患った母の入院に付き添った時。それは時に喜びであり、時に不安や心配という感情が溢れる場所である。
BeukemaとRamos両氏は、病院で時間を過ごす年間何百万もの人の内のたった2人であり、偶然にもSteelcase Healthで医療/ヘルスケアの空間を設計デザインするチームにも関わっていた。病院という医療現場のスペースで時間を過ごす人をどうサポートできるかに関して深い知見を持ちながらキャリアを築いてきた二人だが、その私的な実体験が医療現場で働く方々の共感を得ることになった。
「人々の生活に影響を与えること、私はまさにそれをしたかったのです。」
Ryan RamosSteelcase Health工業デザインダイレクター
BeukemaとRamos両氏は、ある種の制約の中でプロジェクトを遂行することになった。保健条例や清潔性、機能性、臨床医からのリクエスト、収納と空間の最適化など多くの項目を考慮しなければならなかった。しかも、これらの課題に加え、医療施設でより快適な時間を過ごせるようにすることも課されていた。
BeukemaとRamos両氏の実体験が今日の医療現場における課題のひとつである患者の部屋で過ごす家族をサポートすることにつながった。Beukema氏は妻の出産の立ち会いのために病院で過ごした夜を思い出していた。
「部屋にある家具は居心地が悪かったのでその夜は一睡もできませんでした。妻の付き添いとして何をしていいかも分からず、それはまるで角に置かれた鉢植えの植物のようでした。」
James BeukemaSeniorインダストリアルデザイナー、Steelcase Health
病院での家族のストレスを感じたことがあるだろうか。仕事、食事、睡眠、連絡等平常心を保ちながら患者の支えとなり、患者の容態を記憶しながら医師と情報を共有しなければならない。これこそがBeukemaと Ramos両氏が患者とその家族をひとつとして捉えなければならないと強調した背景になる。
「家族のストレスを減らすこと。それがひいては患者や臨床医をサポートする環境を創出することにもなるのです。」とBeukema氏は言う。

Steelcase Healthのチームに属すRamosとBeukema両氏は、患者の家族とそのニーズを深く理解するために、実体験と様々な事例から客観的に観察をし続けてきた。これらの知見がベースとなって誕生したのが Surround(サラウンド) コレクションで患者の看護をする際に家族が担う様々な役割をサポートしている。

Ramos氏によるとSurroundのディテールは、親しみやすく、スタイリッシュかつ機能的にデザインされている。病院を訪れる多くの人はテレビを観ながら時間を過ごすことが多い。観察をするとその姿勢は前屈みで決して快適なものではなかった。これを改善するためにさらに追加されたのがもたれることができる高めの肘掛けである。それに加え、肌触りが良く、臨床現場では不可欠な漂白洗浄剤に耐えうる張り地が採用された。
「全ての決定は観察と実体験をベースにしました。ユーザー体験に基づいた意思決定。それが全てでした。」とBeukema氏は言う。

Surround開発の意図としたシーン、つまり、一体化されたスライド式テーブルを動かし、高い肘掛けにもたれて休み、自然にハンドルを掴んで寝台を引き出すなどの一連の行為をユーザーが無意識に行う。それを見た時にRamos氏は格別な満足感を得た。
Beukema氏は言う。「これを我が家にも置きたいと口から無意識に出た時、まさにその時にこれは成功するだろうと感覚的に分かりました。」
Surroundは2017年NeoconにおけるBest in Show NeoCon金賞に輝いた。さらなる詳細は デザインビデオ や Surroundウェブサイトをご覧ください。