従業員エンゲージメントの低下を防ぐ:社員に「コントロール」を与える

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初めて職場で瞑想をしてみた。果たして正しくできたのか、効果があったのかどうかはよくわからない。その日は会議に遅れそうで急いでいたため、朝の瞑想はスキップしていた。脳はハイスピードでフル回転し、心の中はRed Ball Jetsブランドのスニーカーのように速く、高く飛んでいるような状態だった。

職場で集中し、没頭しつづけることは困難である

多くの人がそうだと思うが、私のTo doリストは課題が多すぎて完了することは不可能に近く、結局はTo doではなく、To readという「見るだけリスト」になっていることが多い。しかし、幸運なことに私は今の仕事が好きである。それ故に、金曜の夕方、週末を前に皆が早く退社するのを羨ましくもありながらも、オフィスでひたすらプロジェクトに没頭している自分がいる。

Gallup社とSteelcaseの調査によると、私のようなものは極めて少数であるらしい。ワーカーのほとんどが仕事は生活のため、働くことを楽しいなどとは思っていないのである。働くことに意欲を持てないワーカーは世界の就労者の87%を占め(Gallup社とSteelcase別々の調査でも同様の結果)、エネルギーを絞り出しながら仕事をし、賃金をもらっているのである。

働くことに意欲を持てないワーカーは世界の就労者の87%を占め、エネルギーを絞り出しながら仕事をし、賃金をもらっているのである。

わたしが思うに、定時に退社する人が必ずしも働く意欲に欠けているわけではない。むしろ、彼らは自分のオンとオフをうまく切り替えられる人たちである。夜遅くまで働くことは必ずしも労働意欲とも関係ない。しかしながら、仕事に没頭しているがゆえに時間の感覚が分からなくなる、つまり、「フロー」の状態になることもある。そして、彼らは往々にして、楽観的で強い目的意識を持っている人が多い。

従業員エンゲージメントの低下を解決するには

多くの企業のリーダーたちは、従業員エンゲージメントの問題は心配の種と感じつつも、どうしていいかわからないでいるのが現状である。過労や心労によって、完全燃焼し、働く意欲が低下するという調査結果も出ている(だから、私は瞑想をするのだが。)。

ニューヨークタイムズ紙に掲載された 「Rethinking Work 仕事を再考する」という記事の中で、 Barry Schwartz,氏はこう言っている。それは強く信じることで本当になる自己実現的予言のようなものであると。経済学の父とされるアダム・スミスは効率性、分業の意義を唱え、人間は有形報酬によって動機づけられ、懸命に働き、さらに報酬が増えると説いている。

労働分業の中でも満足を見出さない単調な反復作業はつまらない仕事と思われている。公平な報酬はもちろん重要であるが、したい仕事、つまり、やりがいのある仕事によって、仕事に対してより適切な判断とコントロールがしやすくなると、Schwartz氏は述べている。

企業のリーダーたちは従業員エンゲージメントの問題に果敢に立ち向かい、さまざまな戦略を試みているが、まず簡単にできることが、社員にコントロールを持たせることである。

企業のリーダーたちは従業員エンゲージメントの問題に果敢に立ち向かい、さまざまな戦略を試みているが、まず簡単にできることが、社員に「コントロール」をもたせることである。私たちの研究調査によると、「コントロール」はオフィス環境の満足度を左右した最も大きな要因のひとつであった。世界中の労働意欲が最も高いワーカーの88%は、作業に応じてどこでどう働くかを選択でき、労働意欲の最も低いワーカーの86%にはその選択肢がないことが明らかになっている。

働く「場」に「コントロール」をどう組み込むか

社員にどこでどうやって働くかのコントロールを与える。どうやって働くか、また、どこに座って(または立って、歩いて、横たわって、腰掛けて)仕事をしたいかの豊富なチョイスを提供する。

境界線を明確にし、人の移動を予測する。 コントロールを与える際に重要になるのが境界線と人の動きの予測である。それがないと、一度に多くの人がカフェテリアやソファに集まり、グループとしての結束が乱れることになりかねない。

自立と自由裁量を与える方法を考える。 職場において、少しの自立と自由裁量を社員に与えることで、社員は仕事をこなすひとりの自立した人間として尊重されていると感じる。

新たな働き方を試す機会を与える。 社員に新しい働き方を試みる明示的、暗黙的な許可が安心感をもたらす。例えば、午後のほんの5分間だけでも瞑想することで、生活のコントロール能力が増し、より高次のやる気や意欲が沸く土台を築くことができる。


世界のエンゲージメントと職場環境実態に関する新たな調査を実施

Steelcaseの最新調査で世界17カ国の3分の1以上のワーカーのエンゲージメントが低いことが明らかになりました。Steelcaseグローバルレポートはグローバル市場調査会社であるIpsos社と提携し、エンゲージメントと職場環境の相関関係を探った初の世界的調査です。

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