コラボレーション

遠隔地をつなぐワーク環境をつくる

所要時間 12分

分散型チームは環境の不平等感がコラボレーションを困難にする

今日の競争力の激しいグローバルなビジネス環境において、企業にはよりスピーディ、より賢く、より革新的であることが求められています。グローバル企業においては優秀な人材を集わせ、イノベーションを生み出し、問題を解決し、地球のどこにいようと最善がつくせるような環境を整備することが命題となっています。

分散型チームが普及するにつれ、従業員や企業が成功するために直面する課題が明らかになりつつあります。今日、組織横断的や異文化環境の中でチームワークを構築する際に従業員に求められる新たなスキルセットには国境、タイムゾーン、文化を越えながら柔軟に仕事がこなせる能力も含まれます。遠隔から働くことには明らかに「存在の格差」を生み、従業員、企業双方にとって、隣の席で働くことに比べたらコラボレーションも困難で、それが生産性を脅かす要因にもなっています。

距離をなくす

Steelcaseの研究員たちは数年前から分散型チームが直面するさまざまな問題を研究しています。明らかになったことは、2人で仕事をこなす最も効率的な方法はやはりお互いに隣りに座って仕事をすることでした。しかしながら、企業は様々な理由によって、時間的、距離的に人やチームを分離したことで信頼ベースの絆は薄くなりました。Steelcaseはこれらの歪んだ人間関係を再びつなぎ、物理的距離を感じなくさせる新たな方法を模索しました。

Steelcaseではアジアパシフィック地域の分散化チームとコ・ロケーションワークのニーズと課題を先取りし、遠隔同士をつなぐテクノロジーを活用した統合ワークプレイスの長期的実験に着手しました。実験として、2地点の間をつなぐ連続的に開いた窓のようなリアルタイムの高精細ビデオ接続である「ワームホール」という概念を採用しました。実際にはアジアのSteelcaseのすべてのWorkLifeセンター内の営業部署と営業サポートチームがあるマレーシアのSteelcaseのグローバルビジネスセンターを専用SRN(セールス・リソース・ネットワーク)でつなぐというものでした。ビジネスサンターでは350人が働き、アジア全域の支社や販売代理店のための、製品スペックやレンダリングなどの営業、マーケティングサポートを提供しています。マレーシアのクアラルンプールにあるSRNサポートチームは広範囲に及ぶスキルやリソースを保有し、各地域の営業部署を遠隔からサポートし、市場での競争力の向上を目的に設置されました。

「ワームホール」は分散型チームメンバー同士の信頼と理解を深めるという目的で2011年に初めて導入され、その目標はまるで隣同士で働いているかのようなパーソナルなつながりを構築するというものでした。「ワームホール」への統合の前は、SRNはその物理的距離によって、営業への対応も遅れ、皆が不満を抱え、その機能は上手く活用されていませんでした。「ワームホール」はそのパイロット版として、まずは4箇所の営業部署とビジネスセンターをつなぎ、現在、全部で11もの「ワームホール」が可動しています。

「ワームホール」の設置によって、分散型メンバーの間の物理的距離が排除され、シームレスでリアルタイムなコラボレーション体験が可能になりました。まるでそこにいるかのような環境を創出するスペースデザインと動画体験を最大限に活用することによって、その物理的ギャップを最小限にできたという意味で物理的環境は重要な意味を持ちます。各地域のWorkLifeセンターの営業部署では、通常、大型画面のあるビデオ会議システムユニットは営業部員が座るベンチデスク上か、その近くに配置されています。そして、クアラルンプールのSRNチームが座るベンチデスクの端にはテレプレゼンスユニットが設けられ、画面上には国境を越えて、まるでそのデスクの延長線上に営業部があるかのように映り、いつでも、直接、素早く要件を確認できる環境を実現しています。「ワームホール」の秘められた真の価値とは単に情報を共有できるだけでなく、「環境認識」をつくりだすことにあると言います。つまり、環境を整備することで遠隔チームは確かにいると目で見て意識することが人間関係の構築に役立つという考え方です。

「分散型チームにとって、その空間デザインの鍵はそこに存在しないことのギャップをいかに排除するかにある。」

Patricia Kammer研究員、STEELCASE INC.

複雑性を排除する

この「ワームホール」の活用はビジネスセンターのあり方をメールや電話主導の機能ベースの共有サービスの提供から、専用サポートチームがリアルタイムで営業部署をサポートする方向へと変換しました。これらの導入前は営業部員がまず要望をメールアドレスに送り、クアラルンプールの誰かがそれに対応してくれることを待つしかありませんでした。電話上で信頼関係を構築することは極めて困難で、見積もり、図面、インサイトが必要な大型案件にあってはそのプロセスが長引きことが多々ありました。

各地域のサポートを強化するために実行した「ワームホール」の導入とビジネスセンター内のチームの再構築によって、この複雑なプロセスが排除されました。必要な時には常に誰かが対応し、顔を見ながらの即座の対応が可能になったのです。レンダリングやレイアウト図面のような要件は動画を介して、さらに明確な指示を受け、リアルタイムでコミュニケーションし、理解を深めながら仕事を進めることができます。

12%  営業からの要望の約束期限を守ることが改善

20%  営業の要望に対する処理時間を1日削減

分散型チームが異なる国や文化で構成されている場合には特に視覚的につながることが重要になります。視覚的な手がかりは他国との間の言語の壁を打破するのに役立ちます。言語のアクセントや方言などは特定の単語やフレーズによって、理解することが難しくなることもあります。目を見ながらコミュニケーションすることで、相手が理解していないことの直接的な手がかりを得られ、言い直したり、さらに説明したりすることができます。その結果、コミュニケーションも良好になり、お互いに文化的違いに敏感にもなります。

距離を越えて信頼関係を築く

「ワームホール」上で次から次へとプロジェクトが続き、密な関係が構築されると、互いの間には暗黙の絆が形成されていきます。実際にはリアルに隣に座っている人よりも「ワームホール」上で話すことのほうが多く、並んで座っているのと同じような関係が構築でき、ますます強くなっていくのを確信できます。また、異なる考え方や性格の人と交流することを学びとして、自己の対人能力も向上します。

「ワームホール」はチーム内の良好な信頼関係も構築します。仕事を通して、また、毎日コミュニケーションをすることで、分散したメンバー間の理解を深め、コラボレーションの質が向上します。個人的な関係が確立されるようになると、画面の向こう側の人に共感や感情移入が伴うようになります。Steelcaseシドニー支社の営業マネジャーであるAndrea Albiezはこう述べます。「サポートチームと家族や仕事以外のこともおしゃべりしながら、お互いを知ることが良好な関係を構築することに役立っています。」

「ワームホールは仕事での良好な人間関係を築くのに役立ちます。個人的な関係が確立されると画面の向こうにいる人にも共感や感情移入が伴うようになります。」

Christy Lee営業マネジャー、香港支社

Steelcaseビジネスセンター(GBC)のマネジングディレクターであるBarbara Reimboldは変化を目の当たりにしている一人です。「ワームホールによって、人々は電話で話している時よりも穏やかで思いやりと理解を持って接しているように見えます。ワームホールでの対面式コミュニケーションによって構築された人間関係と信頼は貴重なもので、電話会議とは比較になりません。誕生日を祝ったりとさまざまな社会的交流も行われています。」

「夜遅くに誰かにメールを送って、相手からすぐに返信がきたら驚くでしょう。相手はそんなに遅くまで働いているのかと思わず嬉しくなったことはありませんか。これも社会的信頼の絆が成功した例です。ワームホールを活用しての私たちの実験では、あるチームが誕生日を祝うソングをワームホール上で歌っているのを聞いた人々が何千マイルも離れている画面の向こうの相手の誕生日を一緒に祝うということも起きるのです。」

Jason Herediaマーケティング担当副社長、アジアパシフィック

グローバルなコミュニティをつくる

このワームホールの導入でグローバルチームの一員であることをどこよりも強く感じているのがSteelcaseインド支社です。「私たちは30名という小さな所帯ですが、ワームホールのおかげで距離感をまったく感じないようになりました。画面上のクアラルンプールのオフィスはまるでチームの一部であるかのようで、自分たちがグローバルコミュニティの一員であることを強く感じています。」とムンバイの営業マネジャーであるRahul Shettyは語っています。クライアントがワームホール上でデザイナーたちと話すこともあり、グローバルレベルのリソースを保有するグローバルな企業であることを改めて再認識することが多々あります。まさに分散型チームの利点をリアルタイムで紹介し、難しい案件でも競争できるスキルとリソースを持ち合わせていることを実感できる機会を提供しています。

上海の営業サポートのリーダーであるFrancesco Yanも同様に「お客様が来社した時には必ず、ワームホールで立ち止まり、見積もりやレンダリングでサポートしているクアラルンプールのチームをワームホール上で紹介します。お客様にSteelcaseがいかにグローバルなリソースを保有する企業かを印象づける良い機会なのです。」と語っています。

Steelcaseアジアパシフィックでの分散型チームのように、人間同士の交流がシームレスになって初めて、多くの利点を得られます。同じ場所にいるチームメンバーとの間に起こる距離的ギャップはいかに空間やテクノロジーを考慮するか、また、明確なプロセスや仕事の割り当てを上手く計画することによって排除され、分散型メンバー間の対面コミュニケーションと信頼関係は向上し、ワームホールを介してのリアルタイムなコミュニケーションによって、地域の営業部署はビジネスセンターが保有するスキルやリソースを最大限に活用できる環境が整備されました。

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