新・働き方と新・ルール。 (全編)

「ハイパーコラボレーション」が チームと個の両ワークをどう再定義するか

所要時間 16分

Amazon、Airbnb、Uber、Netflixといった新世代の破壊的ビジネスモデルが世界を席巻している。単に新製品を市場に導入するだけではなく、市場をひっくり返し多くの付随的損害をもたらしている。クレディ・スイスによると、その技術破壊によってS&P 500企業の寿命は1950年代の60年から現在は20年以内へと短縮されたという。

企業は、こぞって消費者が欲しているものを把握し、競合他社よりもさらに革新的で魅力的な何かを生み出そうと躍起になっている。だからこそ、今、企業リーダーたちがチームに焦点を合わせ、イノベーションに向けて多様な思考や創造性を育む企業文化を構築しようとしているのは極めて自然なことだ。


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なぜ「チーム」? なぜ「今」?

コラボレーションをする機会はますます増えている。 Steelcaseが実施した最新調査では、90%の人が新たなアイデアを生み出すためにはコラボレーションは不可欠であると答えている。企業リーダーたちの認識はさらに強く、その93%がコラボレーションはアイデアの創出には無くてはならないと考えている。

Googleのチームパフォーマンスを研究する「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」に関するニューヨークタイムズの最新記事では、チームは素早くイノベーションを起こし、より良い成果を達成し、仕事への満足度が高いと結論づけている。コラボレーションが増えると収益性も上がる。他の研究でもこのGoogleの結論を裏づけるものが多い。企業生産性機関(Institute for Corporate Productivity)によると、コラボレーションを推進する企業のパフォーマンスはそうでない企業と比べて5倍ぐらい高い。一方で企業の幹部、従業員、教育関係者を対象とした最近のセールスフォース(Salesforce)調査では、被験者の86%がコラボレーション欠如は職場環境の失敗だと答えている。ハーバードビジネスレビューによると、コラボレーションの定着により、チームベースの作業に費やす時間が過去20年間で50%増えたという。驚くべき数字だ。Steelcaseの研究でも今日、ワーカーは1日の半
分以上を他者とのコラボレーションに費やしていることが分かっている。

「現在、企業には単に製品を導入することだけではなく、創造性、イノベーション、デザインといった要素に注力しながら対応の迅速化も求められている。そのためには仕事は部門別ではなくプロジェクトベースかつ組織横断的に遂行されていくことになるだろう。」とAMChamの未来スキルに関するEU Future of Skillsレポートは予測している。

Steelcaseの研究員やデザイナーは、20年以上もの間「コラボレーション」を研究し続けている。最近では北米、中近東、ヨーロッパにおける「高性能チーム」についての研究に着手し、新たなタイプのチームワーク登場によって広い意味で変化が起きていることに着目した。チームが重きを置いているのは以下の2つだ:

新たなアイデアの生成: 新しい製品、サービス、ソリューションを創造し、具現化していくこと。
実行の徹底度を高める: アイデアを予想通りに迅速に開発し、市場に投入していくこと。

これらのチームは、重点が何かに関わらず、複雑な問題を解決しながら迅速に仕事をしていくというプレッシャーをかけられている。彼らは「ハイパーコラボレーター」と呼ばれ、個々のタスクに集中することがチームの貢献につながった昔とは一線を画す。Steelcaseのリサーチ、デザインチームがそこで目にしたのは、情報やアイデアの継続的な交換、P2P(ピア・ツー・ピア)学習の実践、好奇心を持って顧客と繋がろうとするワーカーたちの姿だ。迅速な反復サイクルで遂行されるタスクは相互に関連し合いプロジェクトは極めて流動的である。調査でも分かるようにこの相互依存する働き方とスピードは、以前のチームとは根本的に異なるものでその実践は決して容易ではない。

現代版チームワークは何が違うのか?

「水泳とサッカーチームの違いで考えてみましょう。水泳選手はひたすら自分のレーンを泳ぐのに対して、サッカー選手はお互いを頼り、常に動きながらプレーをしています。これは現代版チームの行動と非常に類似しています。素早いワークフローで互いのアイデアをぶつけ合い反復しながらアイデアを改善していきます。」と語るのはSteelcaseのワークプレイスイノベーション&ブランドコミュニケーションチームの担当副社長であるGale Moutrey氏だ。

誰もが仕事を前進させる責任を担い、これらのチームの多くがデザイン思考やアジャイルな動き方を実践している。以前はITやクリエイティブチームだけのものであったこの働き方は、いまや一部の先端を行く人々のモノだけではなくなった。

多くのチームが立ちながらミーティングやスプリント、ワークショップを習慣とし、チームの仕事のスピードを上げ、顧客との対話を重視している。そして、これらのチームの活動や行動規範を理解したことで誕生したのがチームの新たな働き方をサポートするスペースの創造だ。

「デザイナー」のように考える

創造的問題解決のための方法論であるデザイン思考は、身体的にも認知的にも活発に動かざるをえない。その一連のチーム活動は、ワークショップやブレストを頻繁に行い、壁やホワイトボードをふんだんに使ったコンテンツ表示やアイデア共有のために集うといったものだ。メンバーは近くに座り、リアルタイムで対話できるため結束力も高まり、仕事を迅速にこなすことができる。また、集中して情報を吸収し、自身の考えを整理整頓するためにグループから離れてひとりになる時間も作ろうとする。立つ、座る、書く、ジェスチャーをする、資料やモノを動かしたりとその行動はダイナミックかつテンポが速い。

「アジャイル」的変革

「アジャイル」とは、ソフトウェア開発から派生したプロセス重視の開発手法で仕事のスピード、柔軟性、顧客重視の環境を構築することから現在では多くの業界が実践し始めている。アジャイルチームは、迅速にタスクを実行し、進捗状況を監視し、ワークフローを再調整できるように仕事の配列は体系化されている。そして、タスクに応じて個人やグループでのワークモードは絶えず切り替わりながら仕事は遂行されていく。

悪戦苦闘する日々

チーム活動に重きが置かれる中、研究員やデザイナーたちは、ほとんどの職場環境がそのチーム活動の弊害となっている、つまり、少なくとも彼らの仕事をやりにくくしている現状を目の当たりにした。

Steelcaseの主任研究員であるJulie Barnhart-Hoffman氏はこう語る。「ほとんどのオフィスは未だ主には個人ワークと一方向的作業を基準に設計されています。通常、オフィススペースはチームベースではなく個人単位に割り当てられ、部門によって分かれているため組織横断的プロジェクトを遂行するのが非常に難しいのです。」

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新しい働き方と古いオフィ

スほとんどのオフィスは、一方向的な仕事を念頭に設計されており、デザイン思
考やアジャイルワークに向けての必要なワークフロー、チーム活動や行動をサポートしていないのが現状だ。

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「ホーム」がない

チームは情報交換のために近くに座って働く必要があるのにそれを可能にする「ホーム」がない。

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コントロールの欠如

チームメンバーは自分の環境をコントロールできずチームと個の作業バランスをとるのに苦労している。

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アイデアに行き詰まる

ほとんどのコラボレーションスペースが情報共有や座って聞くという受動的な参加を念頭に考えられているため、問題解決に向けて心身ともにアイデアが出にくい環境をつくりだしている。

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ツールが足りない

ほとんどの人は、グループワーク用の大画面のデバイスを利用できない。利用できる人もスペースが障壁になってその利用が限定され、画面上のコンテンツ共有が困難になることが多い。

多くの企業はチームが「協働する」ための「ホーム」、つまり、チームの結束を築くための「場」を提供していない。チームは、個々の考えをお互いに伝え合い、仕事を可視化する必要があり、個人とグループ両方の作業を簡単に切り替えられることも重要になる。今日、多くの企業では未だグループワークには昔からの会議室(長テーブルと壁掛けホワイトボードの典型的スタイル)が利用されている。これらのスペースは、上司主導の情報共有等のフォーマルなコミュニケーションを念頭にしたもので今日のアジャイルな働き方や共創造と行った一連の活動をサポートするように設計されているわけではない。さらにほとんどの会議室は基本的に共有されるために壁やホワイトボードに情報を残すことが難しく、会議が終了するとワークフローは中断されることになる。

例え、チームが所有できるスペースがあったとしても状況は変わらないと言うのはSteelcaseの研究員のBarnhart-Hoffman氏だ。「チームが遂行する活動は極めて流動的で現在のスペースはそれに対応していないからです。スペースは常に変化する彼らの活動に合わせて素早く適応できるものでなければなりません。それなのに作業から作業へと容易にシフトできず、チームの人員構成、ニーズ、優先順位に合わせてスペースを再構成することもできません。その結果、チームは、その勢いのまま仕事に没頭し続けることができないのです。」

さらにSteelcaseの研究員が観察した行動の中には、オープンな執務スペースの1番の問題であるプライバシーの確保に苦労している姿もあった。それが仕事のスピードや質を悪化させているのだ。オープンオフィスの中でもひとりで熟慮し、集中する時間は不可欠である。オープンレイアウトでは席の近くを通る人によって仕事は簡単に邪魔され、フローが途切れることはよくある。仕事への集中のための視覚的/ 音響的プライバシーを確保できる仕掛けは必須といえよう。

「ほとんどのオフィスは未だ主には個人ワークと一方向的作業を基準に設計されています。」

Julie Barnhart-Hoffmanプリンシパルデザインリサーチャーワークスペースフューチャーズ

オープンな執務スペースがワーカーの最大の弊害だとするとその次に来るのがテクノロジーだ。実際、Steelcase の調査によると、コラボレーションにおける5つの弊害のうち3つがテクノロジー関連だ。チームミーティングでよくあるのがテクノロジー関連への苛立ちでその多くが音や視界にまつわるものだ。必要な情報にアクセスできないとか仕事を視覚的に表示できない等だ。また、遠隔にいるチームメンバーとのビデオ会議では、特にメンバーが立ち上がってその周りを動いたりすると視界から外れ、同じような条件では会議に参加することはできないという問題もチームは抱えている。

もう1つの問題としては、チームが使用する一般的なテクノロジーは、個人ワークまたは情報表示用で共創造や対話用ではないということだ。Steelcaseの調査では、大画面デバイスの場合にはコラボレーションの頻度が多いチームメンバーというよりは経営幹部の利用率の方が圧倒的に高い。また、スペースのレイアウトがワーカーとテクノロジーの間の障壁になっているのも観察から分かった。それがテーブルのカタチなのか立ち上がるのが面倒になるクッション性の高いチェアなのか、そういった要素が画面やホワイトボードでのコンテンツ共有を難しくし、結果としてワーカーの意欲を削いでいるとも言えなくはない。

オフィスを再起動する

チームワークという概念は決して新しいものではない。20世紀型チームは専門分野とタスクで明確に分かれ、それはまるで組み立てラインのように機能していた。仕事は階層構造に基づき、スペースはその階層型組織をサポートするように設計されていた。 20世紀初頭、経営学者のフレデリック・テイラーが発案した「科学的経営」に触発された企業は、効率性を重視し仕事は個々の業務で明確に分割されていた。このテイラーモデルはその当時は理にかなっていたが、個人ベースのワークスタイルは仕事のスピードを減速させ、エラーを見落としがちで好機を逃しやすいものだった。

今日の多くのオフィスは、この「仕事は一方向」という考え方が反映されている。Barnhart-Hoffman氏によると、オフィスレイアウトは個人ワークに焦点が置かれ、中央に配された「ブルペン」エリアの周囲には個室があった。しかし、アイデアのフローをスムーズにするために多くの企業がこのレイアウトをよりオープンに変化させていった。最近のSteelcaseグローバルレポートによると、全オフィスの69%がオープンな執務レイアウトを採用している。チームはベンチ型デスクで働き始め、会議室でプロジェクトの進捗状況を皆で確認し合う。しかし、この環境でも結局仕事は分割され、ミーティングや井戸端会議があちこちで行われているのだ。

オフィスを再起動するという取り組みは大きく遅れているといってもいいだろう。今日のワークプロセスやチーム活動は劇的に変化したにも関わらず、働く「場」は進化していないのが現状だ。仕事はより複雑でネットワークや横のつながりで遂行されるようになってきた。同僚が海外に散らばることもある。皆が相互に依存しながらより流動的なチームとして結束力を高めなければならない。その中で今日のオフィスとは、「チームの中の個」である個人のニーズを満たしながらチームを最大限にサポートするように設計されなければならないのだ。

「チームに個はないという考え方はもう古いのです。チームは個人で構成されています。個人が最善の仕事ができるようにしながら専門性をもつ多彩な人材からなるチーム活動に向けてスペースを設計する必要があります。」とMoutrey 氏は語る。

チームと個の両ニーズのバランスを適切に保つことは難しくもある。そして、最初のスペースを繰り返すことは決して正しい方法ではないということだ。重要なのはチームが自分たちの環境をコントロールできるようにすること。そうするとチームは変化するニーズに合わせてスペースを調整し、何が機能するかを自ら検証できるようになる。

Barnhart-Hoffman氏は、SteelcaseのITチームのためのアジャイルワークのプロトタイプスペースに関わったひとりだ。ワークフローの中で実際にスペースを利用する人がレイアウトを再構成できるよう権限委譲することが重要であることを強調している。「ユーザーがスペースをコントロールできるようにすることが求められています。プロジェクトの進み方に合わせてスペースを調整し、チームと個がどうやって上手く機能するかはチーム自らの判断が正しいのです。個人やチームが自分のスペースをよりコントロールできるようにすることは、チームの結束力を高めると同時に企業カルチャーや信頼関係の構築にもつながっていくことになります。しかし、現在、多くの企業の社員は、オフィスへの要望を提出しても通常、その変更は数週間から数ヶ月も待たなければならないのが現状なのです。」

「チームには個がないという考え方はもう古いのです。チームは個人で構成されています。個人が最善の仕事ができるようにしながら専門性をもつ多彩な人材からなるチーム活動に向けてスペースを設計する必要があります。」

Gale Moutrey担当副社長、ワークプレイスイノベーション+ブランドコミュニケーション

プロジェクトの仕事はフェーズを経ながら変化し、フェーズ毎に活動も大きく異なる。チームが遂行する仕事内容が変化するにつれ、チーム力やその人員構成も変わってくる。「そうなるとスペースがプロジェクトとともに進化できることが重要になります。もちろん、チームは仕事のターゲット完了日に合わせて仕事の範囲も設定しています。その自律性が環境にも反映されていないとワークフローは滞ります。理想は周囲の環境を変え、作業内容に合わせてチームが働きやすいように家具を動かしながら働けることなのです。」と言うのはBarnhart-Hoffman氏だ。

チームが望むもの

チームは何を欲し、職場環境に何を期待しているのか? Steelcaseは、優れたチームをつくるには企業は以下の3つの要素を考慮すべきだと提案している:

チームのための「ホーム」をつくる
チームスペースの役割には単に仕事自体をサポートすることよりも重要なことがある。それは人間的側面への配慮だ。

  • 「適切だと感じられる」スペース: チームスペースは、チームの慣習やワークスタイルを反映し、それをサポートすべきである。
  • 共に信頼を築く: 例えば、一緒に「料理をつくる」など何かを一緒に作り上げることを通してチームの一体感、結束力、信頼感を育成する。
  • 遊び心を取り入れる: 遊び心のある交流は、新たな視点を刺激し、今までにない手法を試すことでチームが新たな概念に挑みやすくなる。

融通が利くスペース
仕事のプロセスに合わせて変化するダイナミックなスペースが必要である。

  • 適応性と即時性: スペースによって、チームは速いサイクルで自然かつ自発的なやり方で再編成できる。
  • フローが見える: コンテンツを整理でき優先順位をつけられる「ステージ」としての「場」が必要である。

チーム力を高める
個々の好みやプロジェクトのニーズに迅速に対応するためにチーム自らが環境をコントロールする必要がある。

  • 無駄に待たない環境づくり: PCのソフトウェアのように現在のスペースや家具を更新できること。それがプロジェクトを前進させる。
  • 個人の嗜好に合わせてスペースを調整: チームと個人が要求に応じてスペースを素早く調整できるようにする。
  • 施設管理の役割を変える: 容易にレイアウト変更ができると施設管理は管理・監視する役目からアドバイザーとしての役目に変わっていく。

Barnhart-Hoffmanは次のように述べる。「学習はお互いにつながり、偶然耳にしたり、たまたま見かけたりしたことで起こります。これは私たちが耳にするオープンレイアウトのマイナス面とは逆です。こうやって私たちは多角的な視点で学びながらそれを仕事に生かしています。しかし、集中を要するコラボレーションでは、チームと個の両ニーズのバランスを取ることが重要になります。コンピュータ、モニター、キーボードなどデスク上を自分好みにカスタマイズしたい、私物の収納や文房具、スナックなどの共有アイテムも保管したいと思うでしょう。仕事に集中し、自分の考えをさらに発展させるにはプライバシーも必須です。これには変化を予測し、適応できる環境が必要になるのです。」

人間だからこそ出来ること

ハイパーコラボレーションチームにとってはこういった人間ならではの体験が全てと言っていい。何故ならメンバー同士の信頼と結束が鍵になるからだ。そのためにはメール等にはあまり依存せず、できるだけ近くで仕事をしながら対話することが一番である。Menlo Innovations のCEO、Richard Sheridan 氏は、同社のアジャイルな職場環境について次のように述べている。「人間は生まれつき声帯という高速声帯技術を持ち、そのおかげでリアルタイムに対話ができています。それは素晴らしいことなのです。」互いに知り合い、信頼し合い、共に学び成長することができる空間の中でこそイノベーションが起こる確率は高くなるのだ。