コラボレーション

未来の働き方を試験運用する

最新の世界的調査結果がハイブリッド型勤務を導入する際の指標となる

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世界を動かすリーディングカンパニーが注目しているのが、ポストコロナ時代に向けての新たな働き方へのシフトである。 Microsoft の調査では、世界中の企業の41%の従業員が退職を検討していると報告している。そのことをきっかけとして、個人やチーム、組織の変化に対応した新たな勤務形態となるハイブリッド型勤務の導入に向けていかに取り組むかの議論が活発になってきた。

Steelcaseの最新の世界的調査から見える重要ポイントは:

テレワークを増やす最大の理由は、従業員に柔軟性を与えるためである。

変革に向けての最大の推進力は、従業員の情緒的ウェルビーイングの改善である。

各自が1日の働き方を自発的に調整しながら組織やチームの一体感を強化することで事業目標を達成すること、これは既存のシステムでは成功しないし、リスクが高い。選択のバランスを間違えると有能な人材が離職するということにもなりかねないからだ。

この状況下で企業組織として何をすべきか。他社の動向をうかがいながら慎重になる企業もあれば、未来に向けて前進する企業もある。不確実な時代にあって何がその判断基準になるのだろうか? 2021年春のSteelcase世界的実態調査では、世界8か国の企業リーダー¹ に向けての意識調査も実施している。

 

優良事例を分析する

「コロナがなかったらこうした議論はおそらくしてないはずです。変化を成し遂げた10年後に私たちはそれについて話すでしょう。」とある経営トップは語った。経営トップの多くは、コロナ禍が変化を大きく加速させたと認識している。

従業員を取り巻く環境に柔軟性を持たせる
コロナ禍は確かに変化を加速させた。特に日本、ドイツ、イギリス、アメリカの企業リーダーたちの多くは、将来的にハイブリッド型勤務を導入する計画をしている:

ハイブリッド型勤務を
導入予定の企業の割合
対コロナ前増加率
日本 86% 23%
イギリス 66% 23%
アメリカ 75% 21%
ドイツ 73% 20%
インド 77% 17%
中国 61% 16%
フランス 62% 10%
オーストラリア 54% 1%

企業がハイブリッド型勤務方針を正式に決定するということであれば、それに対して投資をしやすい環境が整う。しかし、現在、多くは従業員自らが出社日を選択できるようになっている²。

31% 従業員が毎日働く場所を自ら選択
46% 従業員が出社日を連続で選択
23% 企業が出社日を決定

オフィス面積の増加
勤務形態がシフトしている一方、すべての国、特に中国の企業は、2022年末までにオフィス面積が増えるだろうと予測している。調査ではこれを企業成長によるものだと分析している。

面積の予測増加率
中国 40%
インド 25%
イギリス 23%
フランス 19%
ドイツ 18%
日本 18%
アメリカ 17%
オーストラリア 14%

興味深いことに、テレワークが普及しても必ずしもオフィス面積に影響を与えないことである。テレワークを推進する(在宅勤務重視とオフィス勤務比重レベルが小)企業も、2022年末までにはオフィス面積を増やすことを視野に入れている。下記はその割合である。

19% 在宅勤務重視³企業の割合
29% オフィス勤務(小)企業の割合
18% オフィス勤務(中)企業の割合
16% オフィス勤務(大)企業の割合

ウェルビーイングが意思決定を左右する
コロナ後は、従業員やチームのウェルビーイングが勤務形態を選択する際の大きな要因になるだろうとも推測している:

72% 家具選択の際に「感染予防」はひとつの要因になる
70% 家具選択の際に「サステナビリティ」の重要性は増す
68% オフィス設計には「従業員ウェルビーイング」は重要要素になる

 

なぜ一部の企業はより俊敏に動けるのか

多くの企業が変革を視野に入れていますが、ある一部の企業は他社よりも意欲的にスピーディに変革を前進させようとしている。

調査によると、コロナ禍に創業した企業は、人事、IT、施設管理の連携が確立しているため、変革により柔軟で迅速かつ包括的な意思決定機能を備えている。

「従業員をオフィス勤務に復帰させなければならないことは明らかです。しかも可能な限り少ないコストでそれを最大化しようとしています。」

調査被験者

新・働き方と新・スペース
世界中の企業がオフィスでの固定席のあり方を検討している中、アメリカの大企業(従業員10,000人以上)は、柔軟性とコラボレーションの強化を軸に大幅な変革を計画している。89%がフリーアドレスを増やす方向にシフトする予定で(ドイツでも55%)、67%はコラボレーションスペースをさらに増やすとしている。

調査によると、企業の多くがオフィスは同僚同士(対面とリモート)および従業員と組織の間のつながりを促すための重要な装置であると捉え、特にオフィスの中の下記のエリアの重要性が高まってくるだろうと予測している:

71% 狭い個人用スポットに最新ITを完備
69% 高機能補助的スペース(共有スペース)
69%一般的な コラボレーションスペース
68% ハイブリッドコラボレーションスペース

さらに、より流動的に動く未来を見据えてコロナ後の従業員の柔軟性を高めようと計画している企業は、チームと個人、両方の働き方をオフィスでしっかりサポートすることを検討している:

69% 会議(情報型)
55% 集中
49% 学習
47% コラボレーション(生成型)
29% 交流
7% 小休止

的確な判断と意思決定をするには

意思決定プロセスの信頼性を高めるために、企業は従業員の声を反映させることも検討している。従業員の行動様式が変化し続けることから、オフィスの利用実態、さらには人員変動のために環境がどう流動的に変化するかを把握しなければならない。実際、90%の企業は、オフィス利用率の測定と分析を計画に入れている。

「データは極めて重要です。それをベースにオフィス面積を判断し、各チームのニーズを満たすようにオフィスを設計する予定です。」

調査被験者

試験的運用を優先づける
これからのオフィスはより戦略的、計画的になるだろうと思われる。何を、どこで、いつ、どのくらいの頻度で行うのかなどを把握した上で意思決定をするというプロセスが必要になる。そうすることで投資のリスクは最小限に抑えられる。さらに、意思決定プロセスを加速するために、多くの企業が試験的運用や行動規範の試作モデルを導入している:

大規模な試験的運用
を導入する企業
小規模な試験的運用
を導入する企業
オーストラリア 73% 26%
日本 56% 42%
ドイツ 60% 36%
インド 58% 37%
米国 55% 39%
中国 86% 7%
英国 55% 37%
フランス 52% 39%

アメリカ、フランス、ドイツ、中国、インドでは、大規模な試験的運用を実行に移すと計画している企業は、オフィス利用率の測定も同時に検討している。

適切なハイブリッドソリューションを見つけ出すことは、企業進化のひとつのプロセスに過ぎない。それを成功させるためには戦略を明確にし、時間の経過とともにアップデートしていくことが重要になる。そして、人事、IT、施設管理部門が連携し、従業員のリアルな声に耳を傾けながら新たな行動規範を設定し、それを試験的に運用してみること。そのことこそが試行錯誤しながらも着実にコトを前進させ、個とチームがより豊かに働ける環境を構築することにつながる。

1. オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、イギリス、アメリカが含まれる。
2. 勤務形態を決定する企業の中で、フランス、ドイツ、オーストラリアは主に個人や業務によって決定、アメリカやインドは、部門とチームによって決定される。
3. 在宅勤務重視企業とは、80%以上の従業員を恒久的に在宅勤務とすると位置づけている企業。オフィス勤務(小)とは、フルタイムでのオフィス勤務が50%未満である企業。オフィス勤務(中)とは、フルタイムでのオフィス勤務が50〜80%程度の企業。オフィス勤務(大)とは、フルタイムのオフィス勤務が80%以上の企業とそれぞれに定義される。

 

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