不動産の最大化

回復力のある不動産: 適応力がある システムとしての 「スペース」

Chris CongdonとGale Moutreyによって

次から次へと危機が訪れる不安定な状況において、ビジネスリーダーは新しいグローバル経済の中で企業として繁栄するための新たなスキルや戦略を模索しています。同時に今までに前例のない複雑なこの時代にあって、回復力の研究が科学者、経済学者、政府の指導者、心理学者の間で注目し始めており、絶え間ない変化の時代にあって、システムや企業、そして人々がいかにその状況に適応できるかを理解しようとしています。

Andrew Zolli 氏の著書、「Resilience: Why Things Bounce Back」の中でエコロジーや社会学から「劇的な 変化に直面した際のシステムや企業、そして人々がその目 的や統合を維持するための能力」として「回復力」をあげ ています。「もし我々が変化の不安定な状態をコントロール できないとしたら、それに備えてよりよいボートをつくるこ とはできます。」と彼は言います。

回復力の概念は、一般的に経済やマーケット、生態系、 そして人間のことを述べる際に語られ、企業の不動産と関 連して言われることはめったにありません。大手不動産業 者は、彼らの資産をいかに柔軟性の高いものにするかを模 索していますが、多くが回復力のための戦略を立案するこ とをテコにしてこれらの資産を有効活用できるなどと思って もいません。Steelcase ではこの回復力の概念を社員をつ なぐ「場」の創造に適応できないものかと考えました。今 日の複雑さをテコにし、変化のスピードについていく戦略 を立案することはできないのだろうか? 不動産をより流動 的にシフトすることで、企業の戦略、ブランドや文化を支 援できる、より適応力のあるシステムにすることはできな いのだろうか? 不動産を通して「より優れたボート」をつく ることは可能なのだろうか? いずれのケースも私たちはそ の答えがYES であることを信じたいと思ったのです。

グローバルな動向

2013 年度従業員一人当たりのスペース

オーストリア 130 sq ft / 12m2
フランス 180 sq ft / 17m2
ドイツ 320 sq ft / 30m2
イタリア 215 sq ft / 20m2
スペイン 162 sq ft / 15m2
アメリカ 190 sq ft / 18m2
イギリス 170 sq ft / 16m2

10 年前、アメリカでは従業員一人あたりの平均スペースは 250 平方フィートでした。今から5 年後にはその数字を150 に縮小する方向だと言います。他の国々も基本的に同じ方向 性に向かっています。 グローバル企業は不動産のフットプリントを縮小するだけでな く、従業員のパフォーマンスを向上させることも目指していま す。回復力というのはすべてのことを小さくするだけでなく、より優れたものにすることです。

持続可能なアプローチ方法

研究者らは「回復力」を目的と統合性を維持しながら、変化の状況に適応する能力と定義しています。この回復力の定義を探ることで、その適応力を養うために不動産戦略としてのフレームワークを把握することができます。

不動産戦略がこれらのアイディアを支援した時に初め てさらにサステナブルなアプローチ方法を創造するこ とが可能になります。それは不安定な経済状況にも耐 える強さを養うことができるようになるだけでなく、信 頼と協力をも構築することにつながります。これがまさ にZolli 氏が言う「ここぞという時に他人と恊働できる 能力」ということです。仕事場での人同士の相互交流 を増幅し、信頼に基づく強い絆を通しての回復力のあ る仕事環境を構築することになり、それは最も困難な 状況のもとで養われるものなのです。

現在までにこの急速に変化する状況に対応するため に、企業は在宅勤務、ホテリングやモバイルワークな どのオルタナティブワーク戦略 (AWS)を採用してき ました。これらは従業員のワークバランスの実現やカ ーボンフットプリントの削減などの企業目標を支援しな がら不動産コストを減らす方法として採用されてきまし た。この戦略は1989 年にIBM 社によって開発されま したが、最近の調査では80% の企業がここ5 年間に 不動産の削減と従業員のモバイル化を加速するための 方法としてこの手法を採用していることが明らかになっ ています。

CoreNet Global によると、全体的にこの戦略は6-10%ほ どの不動産のサイズを削減しました。現在5 分の1 の従業 員がこの働き方を採用し、さらに拡大することでこの削減 が推進されることになります。一部の企業はスペースを有 効活用しないまま、この戦略をただ単にスペースの削減と いう目標で実施しています。そしてこの働き方を採用してい る従業員の11% は相変わらず自席を持っているのです。

オルタナティブワーク戦略によって、不動産はある程度まで 削減することに成功しました。10 年前に従業員一人あたり のスペースは平均で250 スクエアフィートでした。今日、こ の数字は185-195 の間、そしてここ5 年間でさらに150 まで縮小するといいます。グローバルな不動産会社、 Cushman & Wakefi eld によるとヨーロッパでも同様の数 字が報告されています。イタリア215、フランス180、スペ イン162、イギリス170、ドイツ320、オーストリア130 という平均的結果がでています。

コスト削減傾向が奨励される中、この戦略が効率だけでなく効果をも追求するアプローチであるならば、効果的な戦略になるという認識が高まりつつあります。これにはまず仕事というものが社会的な努力であるものという理解、つまり成功するには人は人を必要とし、テクノロジーへのアクセスや人が集う「場」も必要であるという基本的合意がなければなりません。私たちの研究員の一人がこう言いました、「仕事場は元来はソーシャルなネットワークです。よって企業のトップはそのスペースは企業の成功のための主要要素として認識されなければならないのだ。」と。

人々が働きたいと思える「場」づくり

以前は、働くためにはオフィスにいかなければなりませんでした。オフィスにいなければ同僚とも接触ができず、プリントアウトも会社のサーバーにもアクセスができなかったからです。つまりオフィスにいなければ働くことができなかったのです。その後、テクノロジーの進化が働く場所としてのオフィスへの縛りを解き、グローバル経済が市場を拡げ、経費の削減が重要な課題になりました。

テクノロジーは働き方や従来のオフィスに対する概念を再考 することによってコストが削減できるというのではないかと いう幻想を人々に与えました。オフィスは本当に必要ないの でしょうか? 人々は自宅で仕事をし、バーチャルで繋がるこ とで仕事をこなすことができるでしょうか? 企業はオルタナ ティブワーク戦略を採用することで不動産やそれにまつわ るコストを大幅に削減できるのでしょうか? ただ単にスペー スを減らし、狭いオフィスに社員を詰め込むことを選択して いる企業はある厳しい教訓を学んでいました。「企業はその プロセスの中で何かを失うのです。チームは真の意味での コラボレーションもできず、社員はバラバラだと感じ、リー ダーは創造性と生産性の低下に悩まされたのです。」と世界 的な不動産サービス会社、Jones Lang LaSalle のマネジ ングディレクターのPeter Shannon 氏は語っています。

今日、いくつかの企業は社員のコラボレーションを推進し、組織としての連帯感を最構築する方法として、オフィスという「場」を見直し始めています。

「分散」しながら働く方法と「共に」働く方法に関しては賛否両論が多くあるにも関わらず、不動産関係者はこの問題はワークプレイスが企業のパフォーマンスと業績を向上させるものであるという意識を高めることになると言います。

市場をリードする企業はこのことがただ単にオフィスに人を 集わせる以上の意味があることを認識しています。それは 環境の美観以上のもので、社員の士気を高め、分散した同 僚たちとの信頼を築き、よりスピーディにイノベーションを 起こすことができる「場」の創造なのです。「企業は学んで います。そして人々が働きたいと思えるワーク環境を創造す る方法を求めているのです。」とShannon 氏は述べていま す。

今日の課題

社員と企業のパフォーマンスを増幅させる「場」をいかに創るかを知ることは今日、存在する課題を理解した上でデザイン、設計をすることなのです。

  • デバイスのモバイル化が進めば進むほど、人が集い、繋がり、コラボレーションする固定した「場」が必要になります。
  • テクノロジーが小型になればなるほど、他の人と情報を共有し、効果的にコミュニケーションする度合いが高くなります。
  • より多くのデータを生み出すようになればなるほど、納得できる「場」が要求されます。
  • コラボレーションが増えるにつれ、一人の時間も必要になります。
  • ワーカーが分散するにつれ、一緒にいる時間も増えます。
  • よりバーチャルになるにつれ、よりリアルな場を望みます。

これは「場」が果たすべき役割なのです。ますます相互に連結し、相互依存型経済においては、組織が一体になることが今まで以上に重要になってきます。

問題は単に小さなオフィスをつくるだけでなく、人々を魅了する「目的地=場」の創造なのです。なぜなら、そこでは人々は能力を最大限に引き出すことができるからです。そこを使用する人々の意味のある体験を提供する「場」、回復力のある組織として成長し、繁栄する「場」であることはまちがいありません。

回復力のある不動産戦略を構築する

回復力の研究から生まれた3原則は、企業の使命を果たしながらも刻々と変化する状況に不動産を流動的に適応できるフレームワークによって構成されています。

#1 クラスタリング

Zolli 氏はこう述べています。「回復力は、適切なクラスタリ ング、つまりあるひとつの機能としてのシステムによって、 人材、資産、ツール、アイディアというようなものをお互い に近づけることで活性化しやすく、この場合、密集度と多 様性が特長です。」

回復力のある不動産戦略とはこの定義を基本として、人やアイディア、経験が集まる「場」を通して、異質なもの同士が融合するということ。そしてこれらの「場」は個人であろうと、チームであろうと、隣り合わせであろうが、世界中に分散していようと、人間同士の相互交流を円滑にするようにデザインされるべきなのです。

また、このような「場」は例えば、素早く、簡単に同僚と繋がること、仕事に必要なツールが用意されていること、そして仕事のパフォーマンスを向上させるテクノロジーが完備されていることなど、重要とされるツールや経験が備わって初めて人間の相互交流を量的、質的に強化するのです。

仕事場での人々の行動についての継続的なデザイン調査を通して、私たちは人々がどこで、どうやって働くかを選択でき、コントロールできることが社員の満足度と士気を高めるという事実を見いだしています。身体的、社会的、認知的なウェルビーングを考慮する方法でさまざまな仕事モードをサポートする「場」では、人々は最も効果的に生産的に仕事をこなすことができます。

この理解の上で、私たちは顧客の皆様はもちろん、自社の スペースにおいても応用できる、ひとつのコンセプトを開発 しました。それが相互に連結するワークプレイス、「インタ ーコネクトワークプレイス」という概念です。それは下記の 3 つの主なる特長を持つスペースのエコシステムの中で、ユ ーザー自らが働く「場」を選択、コントロールできるという 考え方です。

  • 「場」のパレット: 個人やチームで「所有」、「共有」されるスペース
  • 「姿勢」のパレット:「 動き」をサポートするスペース
  • 「存在」のパレット:「リアルとバーチャル」な空間、また「アナログとデジタル」の情報共有において自分の存在が混在するスペース

このコンセプトはワーカーがどこで、どうやって働くかのチョイスを可能にするワークプレイスの創造を可能にするものです。仕事の内容と仕事に集中できる環境という考え方をベースにした「最高の理想的な場」と定義し、建物のあらゆるスペースが対象になります。その結果、人々の相互交流を増大させるようにデザインされたスペースは、企業の不動産のフットプリントとコストを削減しながら同時に、グローバルレベルのエコシステムとして機能することになります。

このアプローチ方法によって、企業は今日の複雑な課題をテコにして、ただ単に不動産を削減するのではなく、少ない資源で多くのことを達成し、スペースを再考するという課題にたちむかうことができます。回復力のある不動産は企業の主な資産である「人」に投資することなので、それがもたらす利点はコスト削減を超える方法で収益に結果をもたらします。

#2 #2 モジュール性

回復力のあるシステムには、それが必要なときに劇的に再 編することで継続性を持続することができるという構造的 な特徴があります。「このシステムは一見複雑に見えますが、 実際はLego ブロックのように要素を差し込むだけのモジュ ール式のシンプルな構造になっています。このモジュール性 によって、混乱が起きた際にはシステムの一部の障害を防 ぎ、正しいタイミングで拡大するか、縮小するかを判定し、 即座に再編成することが可能になるのです。」とZolli 氏は 述べています。

回復力のある不動産戦略とは個人ワークやグループワーク、個人やチームによって所有、共有されるなどバランスのとれたスペースが意図的にデザインされた時に初めて、この定義が実現されることになります。ユーザーが仕事に集中できる「場」を選べることが、企業の変化するニーズに柔軟に対応できるワークプレイスを創造することにつながります。回復力のあるスペースの観点から見ると、モジュール性は、インテリアアーキテクチャー、家具、テクノロジーを統合し、特に急激な変化と混乱の時代には容易にレイアウトを再編でき、企業のさまざまなタイプのスペースをサポートできる適応性を備えています。

ユーザーのニーズが変化し、外部要因が事業経営に大きな影響を及ぼす中で、これらのスペースは全体のフットプリントと事業運用コストを増やすことなく、必要に応じて変化したり、進化したりするために不可欠な要素として存在しつづけます。

回復力のある「場」とは、スペースの隅々までがそこで働くワーカーが能力を発揮できるように活用され、最大のパフォーマンスを引き出すように設計、デザインされていることです。これを理解すると、私たちは不動産についての従来の考え方や、何故いままでスペースの垂直面ではなく、水平面だけを考えていたのかに疑問を持つようになります。

さらなる研究開発を重ねながら、私たちは人間の相互交流を増大させるために、いかに壁を活用した垂直面のスペースを拡張し、集中やコミュニケーション、そしてコラボレーションといった基本要素を助長することができるのかを模索しています。垂直面の活用は、相互に連結されたワークプレイスの創造における基本的な要素で、スペースが機能的であると同時に、知的に賢くデザインされて初めて、回復力のあるスペースを支える土台を構築できます。

#3 #3 フィードバックループ

経済から生態系まで、すべての回復力を持つシステムは正 確なフィードバックメカニズムによって急激な変化や重大な 限界点が近づいていることが分かります。「私たちはセンサ ーの世界に浸かっています。これらのセンサーが生成するフ ィードバックデータはシステムのパフォーマンスを管理し、 特にこれらのデータが他の同様のデータと関連づけられた 時に回復力を増幅させるための強力なツールになります。」 とZolli 氏は述べています。

不動産関連企業の幹部や一緒に働くチームはこのフィード バックメカニズムというものに注目しています。このメカニ ズムは変更が必要な時や重大な問題がある時に定期的に 継続的にフィードバックを提供するもので、これと同様の考 え方を不動産にも適用する必要があるのです。「事業のサイ クルはとてもダイナミックで変動し、環境は常に変化します。 そして事業がどこに向かっているかを常に予測することは不 可能です。ですからどんな状況にも対応できる能力を高め ていかなければならないのです。不動産に関しては柔軟性 というものが非常に重要になってきています。」とJLL の Shannon 氏は述べています。

グローバルな不動産戦略においては、このフィードバック分析は困難と思われていますが、データを獲得する方法はいくつかあります。そのひとつがスペース自体に企業に不動産戦略を知らせるフィードバック機能を持たせるということです。個人スペースやグループスペースを高度な予約システムで統合することで予約のパターン、照明、室温などを測定し、リアルタイム分析やスペースの稼働率も把握することができます。

PricewaterhouseCoopers 社の不動産グループはスタッ フメンバーが携帯デバイスからネットワークにアクセスし、 ホテリングシステムでチェックインしたり、アクセスカード を使用した際に、それを追跡したり、それぞれの支社のワ ークプレイス測定データを注意深く監視しています。デー タは毎日とられ、サービスの種類(税務、保証など)や社 員の分類(パートナー、部長、平社員)によって分けられ ています。「その分析では、オフィスに出社するのは誰か? 会社のモバイル化は活用されているか? というような情報 が鍵になります。」とアメリカのPwC 社のワークプレイス 戦略部長であるSteve Adams 氏は語っています。

PwC 社のそれぞれの地域や施設を管理するシニアリーダ ーやパートナーは、毎月、この更新したワークプレイスパ フォーマンス情報を社内のウェブ上のダッシュボード等で入 手し、例えば、オフィスのホテリングを使用する際にその 規約を誰が守っているか、会議室の使用方法、顧客リスト をもとにした他の企業の反応、どこに位置しているのかな どの詳細を確認できます。「もし、この情報なしでワークプ レイスを管理するとしたら、それはまるでバランスシート(貸 借対照表)なしに事業を運営するようなものです。オフィ ス環境がどのように稼働しているかを理解することは不可 欠な作業なのです。」とAdams 氏は語っています。(ワー クプレイスパフォーマンスを測定する革新的な他の方法を 知りたい場合は対向ページの「ビジネスのマネーボール」を ご参照ください。)

すべてのバランスシートがそうであるように、ワークプレイ スパフォーマンスのデータは全体の一部の情報を明らかに しているだけです。 「知識経済社会の中で事業をしている ほとんどの企業がそうであるように、社員である「人」は 自分たちの製品なのです。お客様のために働いているのが 彼らなら、企業は社員に最高のパフォーマンスが発揮でき るような場の体験をさせなければなりません。」とAdams 氏は言います。この体験とは、モバイルワーカーを支援し、 人材を惹きつけ、確保し、企業ブランドを伝え、コラボレ ーションと信頼、そして企業文化を持続させる関係の構築 をサポートするということなのです。

ワークプレイス調査は、社員が仕事に従事するという体験 を監視し、測定できる効果的な方法のひとつです。 Steelcase ではお客様に対して、モバイル化、コラボレー ション、従業員満足度などさまざまなワークプレイス調査 を実施しています。そして自らのグローバルな不動産資産 の効率性を測定するためにこれらの調査を活用しています。

回復力のある組織

企業にとって「人」と「不動産=スペース」は最大のコ ストであると同時に、最大の資源でもあり、この2 つ は無くてはならないものとして絡み合っています。不動 産とはそのスペースで働く人のパフォーマンスを向上さ せながら、企業の価値を高めることにもっと貢献でき るものなのです。そこに企業への最大の価値があるわ けです。

次から次へと訪れる危機的状況を乗り越えているよう に思える世界の中で、回復力というものが個人の、グ ループの、そして企業の成功と失敗を分ける重要な要 素にもなっています。「さまざまな状況下で混乱を緩和 し、稼働させ、ひとつの状況を乗り越え、次へと前進 させるように、組織を、制度を、そしてシステムをデザ インし直すことができます。」とZolli 氏は述べています。

先に述べたクラスタリング、モジュール性、そしてフィードバックに基づいて立案された、回復力のある不動産戦略は、ワークプレイスでの人々の強い絆を築き上げます。変化にも適応し、急変するグローバル市場にも素早く、決定力をもって対応でき、強いチームワークで恊働できる環境を創りだすことが可能になります。

信頼をベースとした、俊敏で、革新的、弾力性のある人材が育ち、彼らが組織の中心となって回復力のある企業になるように先導していくのです。


ビジネスのためのマネーボール

より良いワークプレイスを構築するためにビックデータを活用する

17-18 平方メートル。これは今日の米国の知識労働者の典 型的な占有スペースの面積です。CoreNet は今から5 年 後にはこの数字は13 平方メートルになると予測しています。 Steelcase のグローバル本社では、この面積は14.4 平方 メートルです。「これは2 年前に比べて2.8 平方メートル少 なくなっていますが、同時にさまざまな疑問も持ち上がった のです。これらのスペースでコミュニケーションやコラボレ ーションが適切にサポートできるのか? 新たなテクノロジー やプロセスに対応できるのか? 時間をかけて回復力のある 企業に成長できるだろうか? というものでした。」と Steelcase のWorkSpace Futures グループの部長であ るDave Lathrop 氏は言います。しかし、Steelcase はワ ークプレイスパフォーマンスをより正確に測定する新たな調 査方法を見いだしました。「その結果は今までより正確で、 詳細で、微妙な違いをも明らかにするものでした。」と Lathrop 氏は言います。

例えば、その研究調査で分かったのは、同じ場所でも午前 中の会話はよりプロセスに関連し、夕方に近づくにつれ、 交流はより親密でカジュアルになるということでした。「人々 は午前中にようやく活動を開始し、集中を要する仕事をこ なしています。プロジェクトがピークを超えて、終盤にさし かかると結論がでずに意見のやりとりが加速し、今までの 内容の共有と結論への議論を重ねることになるのです。」と Lathrop 氏は主張しています。

新しいワークプレイスでは人々はスペースが離れている同僚 とは会う、メール、動画、ショートメッセージなどを通して より多くのコミュニケーションをしようとします。「近くの同 僚とは基本的に数年一緒に仕事をし、よく知っているから、 離れた同僚ともっと繋がる必要があると感じているので す。」とLathrop 氏は語ります。

これらの詳細なるデータを提供するために、従業員はセン サー(会社のID バッジのサイズのもの)を着用し、数週間 にわたって人の動きや会話に関する詳細な情報、例えば、 人の身体の動き、会話のエネルギーレベル、場所の位置、 使用、交流した場所などが記録されました。「これらのデー タを分析することによって、私たちは会社内の情報の流れ、 関係の多様性、使用頻度の高いスペース、人がどうやって つながり、つながらないか、チーム内でどのようにメンバー 同士や情報とつながるかなどの情報を追跡することができ ました。」とLathrop 氏は語っています。

企業がつくりだす価値のほとんどの人々が相互に交流することから生まれるものであるがゆえに、その交流を最適にサポートするスペースを理解することが不可欠なのです。」

Lathrop のチームはMIT メディアラボ(マサチューセッツ 工科大学内の研究所でSteelcase は長年仕事を共にして いる) から独立した人が創設したSociometrics Solutions と一緒に仕事をしています。Sociometrics は そのセンサーと、集積されたデータを分析するソフトも開 発しました。

Sociometrics のCEO であるBen Waber 氏は、この仕 事は映画「マネーボール」が提唱した選手の評価に今まで のような直感と観察ではなく、選手の詳細なる統計データ が勝利に導く理論になぞられています。「私たちはこのマネ ーボール理論をビジネスに適応したのです。私たちは長い 間をかけて質的なプロセスが何かを考え、データを活用し て人に伝え、意思決定を行っていました。例えば、もし、人々 に昨日話した相手を覚えているかを尋ねたら、約30% の 人しかその相手を覚えていないのです。もちろん、よく知っ ている、自分の好きな人なら、すぐに答えることができる のです。それは不正直ということではなく、そういうことは なかなか覚えていないものだということなのです。彼らの交 流を追跡することによって、非常に緻密で正確なデータを 入手することができたのです。」 個人は識別されません。つ まり人々がチームにリンクし、集計データのみが分析され、 個人情報は機密保持されます。

結局はこの情報によって私たちはいままでになかった製品のデザインやアプリケーションを微調整する能力を高めることができました。

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