イノベーション

Q + A インタビュー

ハリケーン、干ばつ、不況、システムクラッシュ、地政学的紛争。今、私たちの生活の秩序は乱れ、危機感が高まりつつあります。

Andrew Zolli 氏はその著書、「Resilience: Why Things Bounce Back」 の中で物事は立ち直ること、そして、ある企業が繁栄する一方、ある企業 は混乱に直面し、破綻している状況の中で企業組織には回復力が求めら れると語っています。回復力がある組織は未来の一つのプランに固執しま せん。あくまでも身が軽く、共同で何かをこなし、俊敏でもあるのです。 変化の最中にただ生き残ることだけを考えているのではなく、どうやったら 繁栄するかを常に考えています。その回復力とはどこから生まれるのか? まずは中間管理職に権限を与え、組織のソーシャルネットワークが育つよ うに助けることだと言います。

Zolli 氏は未来を変える要因を探求し、世界 の難題を解決する新たなアプローチを創り上げる主旨で創設された、世界 的にも影響力をもつグローバルなイノベーター会議であるPopTech のエグ ゼクティブディレクター兼キューレターとしても活躍しています。Nike、 American Express、GE などの企業に対して、グローバルな製造環境を 進化させ、不安定な世界の中で秀でるにはどうしたらよいかをアドバイスし ています。

「イノベーションと回復力は密接に関係している。」

Andrew ZolliExecutive Director and Curator of PopTech

今日、危機の発生頻度が増えているように思えます。今、回復力というものがホットな話題になっている要因はこれですか?

はい、その通りです。振り返ってみてください。2012 年だ けをとっても、熱波によってワシントンD.C. の飛行場の滑 走路が溶けたり、今世紀最大の干ばつのために国の半分に 連邦緊急事態がしかれたり、史上最大の停電によって地球 上の9 人に1 人(インド全体)が暗闇に怯えたり、温暖化 の影響で巨大なハリケーン、サンディが発生したりとその数 は数知れません。

このように永久的で本質的な不安定な状 態が普通になってきているのです。私たちはより多くの混乱 を経験しているだけでなく、その結果を予測することが極 めて難しくなってきています。何故なら、世界は私たちの想 像に及ばない方法で連結しているからです:天候、エネル ギー、金融、社会的/ 政治的なシステムはすべて連結して おり、観察するのも難しいのです。さらに悪いことに破壊的 な変化になると、私たちは本能的に認知をしようとしなくな るのです。人間の脳は特定の変化に対して適応できるよう に訓練されていますが他の変化には適応できないのです。 ゆえに私たちのモデルは住んでいる世界と同じように微妙 な違いもないということで常に驚かされます。複雑性や相 互連結、そして無知を合体させ、システムと一緒に連動させ、 すべてに力点を置くなら、変わりやすく、不安定な状況や 危機に陥ることになります。

個人や組織への影響はどういうものですか?

明らかに金融危機、干ばつ、食料不足、ハリケーンなどの 危機はシステム上コストがかかります。昨年のデータによる と2011 年は人間の歴史上最もコストがかかった年で、多 分2012 年はそれを上回ると予測しています。しかし、あく までもこれは始まりに過ぎないのです。そこにももちろん、 間接的なコストもあります。例えば、ますます上昇する保 険費用や長期的計画の難しさなどが挙げられます。そして 人々は目に見えない、ダメージの大きな心理的ストレスにさ いなまれることになるのです。

企業の回復力という点から例をあげてもらえますか?

大型のハリケーンが米国南東部を襲ったとき、その地域は 莫大な被害を受け、実際に家屋が水没した地区もありまし た。人々はお金、モノ、身分証明書などほぼすべての所有 物をなくしたのです。最も重要な地域の銀行の一つであっ たHancock Bank は115 支店のうち90 の店舗を失い、 本社は停電や浸水でまったく機能しない状況に陥りました。 ところがこの銀行はその独創的な対応でその状況を乗り越 えることができたのです。

「物理的スペースには信頼や協力、そして回復力への行動を支援するための驚異的なパワーがあります。」

Andrew Zolliexecutive director and curator of PopTech

彼らはテントやトランプ台をオフィス代わりにして顧客であ ろうとなかろうと、ID なしで現金を必要としている人々にそ の場で150 ドルを提供しました。まさにそれは地域社会に 対する信頼を行動にして示した素晴らしい行為でした。そし てHancock はこの方法で4000 万ドルの現金を貸しだし、 その結果はどうだったと思いますか? 貸し付け金の99.6% は返済された上に、銀行は新たな顧客を増やし、ハリケー ン後90 日での銀行の純資産は10 億ドルへと増大したの です。これが適応力や柔軟な対応ということでまさに回復 し、復興する企業の見本なのです。この行為は企業のトッ プからではなく、企業価値を理解し、それによって動機づ けられた現場をしきる中間管理職によってされたものでし た。

そのような回復力というものはどこから来るものでしょうか?

回復力には多くの相関性があります。まず第一に、固く結びついた企業文化と緩い戦術を持つ組織に見られるということです。継続的で、リスクテイクも控えめで、状況に対して柔軟で適応性がある企業ということです。

興味深いことにこれらの企業では必ずしも社員が全員同じように考える企業ではなく、ほとんどの企業はその多様性を受容しています。世界を異なる見方で捉え、同じ事実や同じ問題を別の視点から考えるということです。

もう一つの組織的回復力の重要な側面は「信頼」です:人々は例え仕事がうまくいかないときでも互いを信じて協力するという姿勢です。回復力は形式や規則を重んじない柔軟な組織力ともいえますーそれは多くの異なる役者たちのコラボレーションから築かれるもので、限られた人たちのトップダウンによって生まれるものではないのです。つまり、多くの信頼、多様性、コラボレーションを助長している企業にそれは多くみられるのです。

企業は場当たり的な解決法をどうやって見いだしていますか?

それはあなたが考えるものとは多少異なるかもしれません。 危機にある昔ながらのリーダー像とは、四角い顎の先見の 明があるCEO かストリートの扇動者でした。しかし、混乱 が起きた際には事情を説明してトップダウンの命令を取り付 ける時間もない一方、現場のフロントラインは俯瞰的思考 能力がなく、判断も難しいのです。回復力のある企業の真 の強さは組織の中間管理職からきています。

中間として強くつながっており、素早く対応する文化もあり、彼ら共通の価値や使命感で独創的に危機に対応することができるのです。そして企業のトップに判断を仰ぐこともしなくてよいのです。規則があるわけでなく、その時にあった方法を発明するのです。つまり、なにかすごいこともできる立場にいるわけです。

Hancock 銀行の従業員は銀行は人々の資産の目的を達成 できるようにお手伝いをするという使命を深く理解していま した。銀行の首脳陣はテーブルやテントを設置することなど 考えもしないことです。この自由な裁量権を与えられた中間 管理職が独創性と即興性でこの危機を乗り越えるソリュー ションを生み出したのです。

企業が大惨事に直面していないときにどのようにコラボレーションを築けばよいでしょうか?

混乱に耐える能力とは大体は主に物事が落ち着いてい るときに決定される副産物のようなものです。回復力 は4 つの基本能力から生まれるものだと考えています。 まずは、物事がうまくいっているときに再生能力を構 築するための能力です。これは組織文化の健全度、リ スクへの受容度、社内外のソーシャルネットワークの強 さ、人々の心身の健康状態、多様性の受容と適応力、 そして信頼レベルなどによって測られるものです。この 自己再生能力が回復力の最も重要な側面であり、それ は先のことを考え、事前に対策を講じるもので、決し て待ちの姿勢ではありません。

2 つ目は変化を察知し、緊迫した混乱を感知する能力 です。これは極めて弱い合図で、今は分からないかも しれませんが、直に大規模な混乱を起こすかもしれま せん。これらの合図を解釈し、様々な変化の形を準備 し、計画を実現するための筋道を予測することです。

3 つ目は議論したような形式や規則に柔軟に、即興的 に対応し、混乱を鎮める能力です。

最後は学習と転換、適応力を養い、将来の変化に備え るなどの能力で企業として立て直すことです。回復力 はこれらの能力の一つだけでは生まれません。4 つの すべての要素をうまく実現することで初めて生まれるも のなのです。

企業の物理的スペースは回復力に影響しますか?

もちろんです。物理的スペースには信頼や協力、そして回復力への行動を支援する驚異的なパワーがあります。人間は社会的な動物で、自然環境を好み、人が近くにいる場を好むものです。人はそういう場にいることで、持続的ストレスによるコルチゾールレベルは減少し、人のために何かをしたくなり、信頼に値する行動をとるようになるといいます。

しかしながら、多くのオフィスでは人々を建物の中に閉じ込め、自然や自然光から遠ざけているのが現状です。パネルに囲まれた中で人の心も閉ざされ、人間が本能的に好む環境が奪われているのです。実は低ストレスを実現した環境の中で働くことによってワーカーのパフォーマンスや回復力は飛躍的に向上することが分かっています。

信頼と協力を築くために、まずは信頼に基づいた環境の中で働ける「場」に変えましょう。人間として本能的な信頼ある行動を助長し、ストレスがなく、不安がなく、くつろいで仕事ができる環境を築きましょう。

人々のモバイル化は加速し、グローバル化により組織は世界中に分散してきています。人々が分散する中でどうやったらうまく一緒に仕事ができると思いますか?

1970 年代にネットワークを通じて仕事をみつける方法につ いての有名な研究がありました。ほとんどの人がよく知って いる友人からの紹介ではなく、知人の知り合いから雇用に つながることが多いという事実でした。これは「弱い靱帯」 とも呼ばれ、知人の知り合いなど「あまり知らない間柄」 の重要性を明らかにしました。研究者たちはどちらかといえ ばこの繋がりの薄い関係を通じて雇用や新しい情報を得る 可能性が多いことを発見したのです。ですから、もしあな たが新しい情報を探しているとしたらこの「あまり知らない 間柄」のネットワークを持つことです。そしてソーシャルメ ディアはまさにこの繋がりを構築できるベストな方法かもし れないのです。しかし、もし新たな仕事や製品を開発する ということであれば、より親しい、強い密な繋がりのほうが よいのです。

最強のチームとは小規模な親しい関係のグループで、それ ぞれが個人的にはあまり知らない大きな弱いつながりを持 っている状態です。彼らは異なるアイディアやさまざまな思 考方法を持つ人々と連絡をとりあっています。そして新たな アイディアや情報を小さな親しい間柄の人々と継続的に共有 しているのです。それぞれが良き協力者となって、大きな弱 いつながりのネットワークは成り立っています。Twitter は 人々がこの大きな弱いつながりを活用している典型的な例 です。そして、もしあなたがもっと密に仕事がしたいときに は、会ったり、電話や動画を活用してその関係をさらに築 いていけばいいのです。

360 Issue #66 Q&A

秘訣は適した仕事には適した「場」を選ぶということです。例えば、もし新製品をデザインするとしましょう。チームなら、強い絆のもとに一緒に仕事をしなければなりません。最も効果があがるチームとは、親しい間柄の小規模のグループでありながら、それぞれが大きな弱い繋がり、つまりチームメンバーとは面識があり、多くの情報や知識を持ち、インスピレーションを得られる人たちとのネットワークを持っているということです。

最近、一部の企業はホームベースの社員をオフィスに戻しています。分散型の働き方がある一方でのこの動きは何を意味しますか?

企業は社員同士がずっと離れた状態で働くことはできない、対面しながら仕事をする重要性に気がつき始めています。多くの企業はこの動きに同調し、人間が対面しながら対話をすることの価値、そして恊働することの必要性を感じています。人間の認知プロセスはまさに人間の相互作用のためにデザインされているようなものです。

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