イノベーション

職場での創造力を高める「場」づくり

Turnstone

多くの企業が事業をよりスピーディに、より大きく、より賢く経営しながら競争に打ち勝たなければならない時代にあって、イノベーションと創造性はキーワードになりつつある。そして、その実現のために、最も優秀でスキルを備えた人材を登用し、そのコストは莫大だ。スピードが増し、より競争が激化する市場の中で、多くの企業は新たな方策を打ち出すこと求められている。

その中で、イノベーションや創造性を土台としているスタートアップやベンチャー企業に比べて、大企業は俊敏さやスピード感に欠け、時代についていくのに苦労しているように見える。かつては繁栄を導き、事業経営の合理化を推進した組織風土やそのルールは、にたなアイデアや発明の蕾を摘んでしまう阻害要因になることもある。今、企業経営者たちに求められるのは、いかに職場での創造性を育てるかだ。

ベンチャー企業からヒントを得る

SteelcaseのセカンドブランドであるturnstoneやSteelcaseの研究集団であるWorkSpace Futuresグループは、ベンチャーの企業カルチャーや大企業の中でも起業家的な思考を推進している企業を長年にわたり、観察、研究している。そうすると、デザイン、財務、人事、IT、マーケティング、もしくは企業経営層であるCスイートのリーダーたちが、創造性を加速させる「スタートアップカルチャーを社内に啓蒙しようと努力していることがわかった。デザイナーはイノベーションセンターの設立、ITはブレストとプロトタイプのための「場」づくり、HRはミレニアム世代の後のヒップでITに精通した若い世代の獲得に躍起になっている。各部門がいかに発明や創造性を推進する土台への取り組みに期待を込めているのが分かる。

エコノミスト誌の最新記事によると、大企業の経営者たちは機能する解決策を求めて、世界で最も注目度の高いベンチャー企業のイノベーションセンターを訪問したりしているという。卓球台を設置したり、社員食堂を改装したり、フードやドリンクを提供することは「楽しさ」には有効だが、独創性にはつながらないと気づき、ベンチャー企業にその答えを見出したのだ。Steelcase WorkSpace Futuresグループの担当副社長で、人類学者でもあるDonna Flynn氏は、お手玉やビデオゲーム以外に、組織として創造性や発明といったものをどう実現していくかの鍵を握っているのはまさに経営トップなのだと語る。

「いろいろな業種で創造性とイノベーションで成功している企業を観察すると、社員が試み、失敗し、新たなソリューションを探求できる自由な環境を組織として意図的に設計しているのに気づきました。多くの人は創造性とはいかにもミステリアスな魔法の才能と位置づけていますが、創造性を市場価値に転換するには構造とプロセスの確立が必要になります。組織のリーダーたちは、新たなことに挑戦する企業風土をサポートし、人材や予算を投入し、主要ビジネスに適用している規範とは異なるイノベーションに向けてのより柔軟な規範を設定することが重要になります。」

創業者など起業家と言われる人々は、イノベーションに向けて、常に柔軟で流動的な環境に身を置き、アイデアを製品にすることから、リースや給料などの支払いに至るまで、その古い慣習を壊してきた。人材登用に関する制約や会社の方針というものがなければ、起業家気質を持つ社員たちは、今までの伝統的な枠を越えてアイデアを推進していくことは間違いないだろう。問題はそこから何を学ぶかだ。大きな組織の中でそれをどう適用できるかだ。

David Kidder氏は、世界最大手の企業が半世紀にわたり、イノベーションを加速させるために空間や仕事ツール、ITをどう活用すべきをアドバイスしてきた人物である。彼はベストセラー本、「The Intellectual Devotional」と「The Startup Playbook」の著者として知られている。彼はBionic社の共同創設者兼CEOであり、組織的成長と変革を目指しているFortune 500企業のCEOたちとも定期的にコンタクトを持っている。彼は企業のリーダーたちは、資産である職場空間が組織を成長させる価値を持つことを認識し、空間を再考するべきだと主張している。

「人と異なる考え方や態度、行動をとることが大事ですと啓蒙しながら、自分のデスクに戻って働きなさいとは言えないでしょう。デスクに座ってばかりでは、組織の成長や収益につながるアイデアを生成することはできません。企業のリーダーたちは、まず、人々の考え方や思考方法を真に変えるためには、その物理的環境を壊すことです。」

DAVID KIDDER、BIONIC社共同創始者兼CEO

彼は「スペースとは多くのものからなる集合体で、それは個々の部分とは比較になりません。」と指摘している。「スペースを単にコストと見なすと、その目的である組織の成長や創造性を生み出すことはできません。組織の成長、イノベーション、創造性を助長する環境をつくるのだという新たなマインドを築くことが重要となるのです。経験とはコストではなく、収益を生み出す成長であるべきです。」

彼が強調するように、既存の組織的思考やイノベーションに対するアプローチ方法が、革新的なビジネスモデルや製造プロセスを生み出す速度を加速させたり、減速させたりもする。企業のリーダーたちは、オフィススペースやそのデザインを、書類や保証規定で表現される資産としてのコストではなく、組織の成長にとって不可欠な運営コストの一つとして見なすべきだ。スペースの捉え方を変え、創造的カルチャーを構築できれば、イノベーションに向けた取り組みにようやく針を動かすことになる。

「人と異なる考え方や態度、行動をとることが大事ですと啓蒙しながら、自分のデスクに戻って働きなさいとは言えないでしょう。デスクに座ってばかりでは、組織の成長や収益につながるアイデアを生成することはできません。企業のリーダーたちは、まず、人々の考え方や思考方法を真に変えるためには、その物理的環境を壊すことです。」

イノベーションリーダーとしてのパワー

スタートアップ企業やベンチャーの創業者にとって、働く「場」を壊すということは、スペースがイノベーションを生み出すことを認識しながら、スペースを再構成することだ。つまり、人が繋がり、試作し、デザインし、想像するという空間をつくるということである。これは会社をゼロからつくる起業家にとってはごく自然なことである。働く「場」がどう見えて、機能するかについての先入観は全くないはずだ。しかし、確立された組織の中の社内起業家にとっては、まずは創造性を促進するための俊敏で、イノベーションが実際に起こるようにオフィスを改革していくことが要求される。

Jeff Schuetz氏はSonoco社のコンシューマーパッケージング担当副社長である。同社はサウスカロライナ州ハーツヴィルにある創業116年を迎えるパッケージングの世界的リーダーで、2年前に経営陣が変わり、スペースをまずは変革の鍵として位置づけた。

「新たに CEOに就任したのは社内の人間で、イノベーションによる成長を事業戦略の重要な要素と位置づけました。弊社は卓越した技術力を保有していますが、職場環境はベージュ色の極めて旧態依然としたものでした。私たちはすでに様々な取り組みを行っていましたが、新CEOが「Go」と言ったとき、今までにない変革を提示したのです。」

これによって、どうやって既存の開発センターが壊され、ゼロからやり直すことになったかをShhuetz氏は説明している。結果を伴ったこの大改革は過去からの離別であり、未来に向けての布石を打つことになった。

「上質な会議室、人が行き交うエリア、快適なソファ、ワークカフェ、屋外のスペースなど、数多くのコラボレーションのためのスペースを設置しました。私たちはオフィススペースを有能なミレニアム世代を惹きつけるためのツールと位置づけました。目指したのはそこに入った瞬間にある種の感動を与える空間でした。」

「上質な会議室、人が行き交うエリア、快適なソファ、ワークカフェ、屋外のスペースなど、数多くのコラボレーションのためのスペースを設置しました。私たちはオフィススペースを有能なミレニアム世代を惹きつけるためのツールと位置づけました。目指したのはそこに入った瞬間にある種の感動を与える空間でした。」

Jeff Schuetz, グローバルテクノロジー担当副社長、コンシューマーパッケージング、SONOCO社

情熱を持ったリーダーが破壊的思考を促す

イノベーションチームを率いるものは、現状の問題点を見直し、創造性を促進するために社員の自律性を促そうとする。業界を改革することが必要だと感じている経営者たちは、チームやそのリーダーに対して、今までにないレベルの裁量権を与えてもいる。イノベーションへの可能性を追求するためには、特別予算を計上し、人を新たに登用せず、課題なしでも魔法のような力を発揮できるようにしている。

「2014年の初め、イノベーションが全社的に啓蒙された際でも、私たちのCEOは具体的な指示を出すどころか、逆に何をしたいかの詳細を提示するように言ってきました。弊社はあの当時、企業カルチャーとテクノロジーの両面でのイノベーションに取り組んでいました。物理的な職場環境は新たな企業カルチャーの柱の一つで、CEOのサポートなしには決して起こらなかっただろうと私は確信しています。」とSchuetz氏は語っている。

起業家と社内企業家の両方の経験を持つKidder氏は、「リーダーシップの重要な役割の半分はCEOが担っているのです。気合いを注入し、土台を構築することです。自由裁量権を与え、社員たちが方向を見誤って失敗し、その失敗から学び、成功に向けて邁進するという土壌を作ることです。それができれば、半分は成功しているようなものです。」と述べている。


創造性はそこから始まる

ベンチャーの経営者や大企業のイノベーションチームのリーダーたちは、多分同じDNAを持っているのだろう。共通しているのは、現状に疑問を投げかけ、壊し、検証し、挑戦し続ける姿勢である。従来にはない飛び抜けたものへの意欲は、いかに自由な環境の中に身を置いているかにもよる。

あなたは、ご自身のチームのために、このような生態系にも似た「場」づくりを創ろうという考えていますか? その際には是非以下のことを考慮に入れてもらいたい:

リーダーが及ぼす影響

ベンチャーの創業者や大企業の組織の有力なリーダーたちは、自由闊達な思考、探究性、創造性、失敗への許容を受け入れる企業カルチャーを構築することで、イノベーションへの土壌を築いている。つまり、社員が失敗を恐れずに、創造性を発揮しながら、新たなアイデアを追求できる環境である。

  • リーダーたちは、曖昧さを受け入れ、社員を信頼して仕事を任せる
  • 十分な情報を持って、プロジェクトを遂行できるようにする
  • アイデア生成にアナログ的手法を容認する
  • 最大の成果につながる意見や発想の違いを受け入れる
  • 大企業の官僚的仕事の仕方を出来るだけ排除数r
  • イノベーターにできるだけ多くの自律性を与える
  • アイデアの表出を促す散らかってもいいような空間を提供する

Schuetz氏は次のように述べている。「私たちは、過去を振り返ると、集団的思考を重んじる傾向がありました。しかし、これからは多様な思考や破壊的思考を推奨し、リスクを取りながら創造力豊かに働ける環境が重要になります。」

社員が及ぼす影響

イノベーションの土壌をつくる際の人材が及ぼす影響は莫大である。企業カルチャーにあうか、情熱や士気があるか、信頼できるかなどその質が重要になるため、革新的な経営者は人事に任せずに人材を登用しようとすることもある。「イノベーションの達人ー発想する会社をつくる10の人材」の著者であるTom Kelley氏は、リーダーシップの役割を担い、会社の方向性を明確に示し、社員の能力を最大限に引き出している「取締役」と言われる人々が、自由な人材登用にどう価値を置いているかを明確にしている。

ハリウッドには、「演出の90%はキャスティングである」という古い格言がある。ビジネスにおける優秀な演出家は、演出をあまりせずに自らを実例とすることでプロジェクトをリードするチームを構築している。

いつ、どこで発言し、自分たちの革新的カルチャーをつくろうと努力している人材を探すことがいかに重要かということだ。人間同士の意味あるつながりは社員に安心感を与え、真のコラボレーションと創造性への扉を開いていく。

  • 人材登用する際には、個々の性格がいかに噛み合うかを考慮する
  • 可能であれば、チームの数名をインタビュープロセスに参加させ、そのマッチングが合うかどうか検証する
  • 個室を減らし、コラボレーション環境を創造する
  • 各チームと部門間の自然な交流を促進する活気に満ちたスタートアップカルチャーを育む
  • 社員同士が成長でき、信頼に基づいた人間関係を確立する

スペースが及ぼす影響

ベストセラー作家でTEDでも講演しているSteven Johnson氏は、「歴史を見れば、イノベーションとはインセンティブだけでなく、様々なアイデアがスパークする環境の中から生まれています。」と語る。創造性に溢れ、イノベーションを生み出すには様々な「場」をパレットとして用意することである。

  • チームメンバーが癒される休息のための空間をデザインする
  • 企業カルチャーを助長し、自然な交流を促進するチームスペースを創出する
  • グループプロジェクトやミーティングのためのコラボレーションスペースを設置する
  • アイデアの生成を可能にするホワイトボードを装備する
  • プロジェクトの進捗状況、品質測定値、目標などを追跡する「ダッシュボード」をつくり、チーム全員が見られるようにする

遂行している作業に応じて、クリエイティブメンバーが1日を通して自由に移動できるようにすることで、チームに俊敏性が加わり、成果を達成できる前向きな環境が維持できる。

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