コラボレーション

遠隔コラボレーションを成功させるヒント

テレワークをしながら、チームの高い連携力を維持し続けるにはどうすべきか

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当ストーリーは、Steelcase 360「距離を感じさせない工夫」の一つです。

慣れないテレワークの中、多くの人が孤立感を抱きがちで、チームの中でどう仕事をこなせばいいのか不安になった人も多いはずだ。

世界中の企業が未曾有の厳しい環境にある中、その困難をどう乗り切るかはその企業のイノベーション能力にかかっているともいえる。例えば、今までにない方法でテクノロジーを活用しながらプロセスを刷新し、いかに俊敏で適応力のある組織文化を育んでいくかである。こうした緊急事態のピンチをチャンスに変え、収束後の成功を見据えて次の一手を講じるには、創造力とイノベーションが不可欠となる。

しかし、平時でさえイノベーションを起こすことは容易いことではない。チームは、メンバーの頭の中の思考や発想を整理、可視化させながら素早く共有できる環境をつくらなければならない。同じスペースにいる場合でも難しいのに、突然、チームが孤立化、分散化する中、どう連携し仕事をこなしていけばいいのかに戸惑う企業も多いはずだ。製品開発、製造チームなどは、現実が突きつけている新たな要求を満たすために方向性を変えようと必死である。今までのように数か月とか数年という単位ではなく、数日でゼロから新たなものをつくるように求められているからだ。

「何かを生み出す作業に不可欠なのが、チームでコンテンツ共創できるデジタルプラットフォームです。」

パトリシア・カマー
主任研究員、Steelcase

コラボレーションには3つのタイプがある。プロセスや製品など新たな何かを創造する「生成型コラボレーション」では、その行動や活動は広範囲に及ぶ。一方、「情報型コラボレーション」は、情報共有や調整、「評価型コラボレーション」は、選択肢の中から意思決定を下すことが主たる目的となる。どちらの作業もそれほど複雑ではないのに対して、「生成型コラボレーション」は、多角的な立場や視点からものを捉え、何かを構築、前進させようとすることからそのプロセスは複雑さを伴う。これを成功させるには、メンバーがどこにいようとチーム全員がプロジェクトに対して共通認識を持つことが鍵になります。」と語るのはSteelcaseの主任研究員であるパトリック・カマーだ。

リモートで働いていても、個々に取り組んでいる業務状況をチーム全員が把握できること。そうすることで職場に復帰した際にプロジェクトをさらに前進させることができる。その共通認識がない場合には、職場に戻ってもそのギャップを埋めるのに多くの時間をかけることになり、最終的には業務効率が下がり、仕事を停滞することになる。

しかし、問題はテレワークの中でこの生成型コラボレーションを行う場合である。カマーはこう提案している。「まずは、ホワイトボードや付箋などを活用したアナログ作業をデジタルに変えてみることです。ゼロから何かを生み出す作業に不可欠なのが、チームでコンテンツ共創できるデジタルプラットフォームです。例えば、Muralや、Google Drive、Microsoft Teamなどのツールです。リスト、チャート、図表などで思考を整理できるデジタルな付箋やホワイトボードを活用することで、ストレスなく思考や作業を視覚化し、資料を整理しながら全員が平等に共有することで共通認識を構築できます。」

Coalesseデザインディレクターのジョン・ハミルトンも、これはそんなに簡単ではないと語る。彼は世界中に分散するチームメンバーと協力しながら製品を設計デザインし、異なる場所と時差を強みとする方法を長年模索してきた。2017年から、ドイツ、ミュンヘンに位置するSteelcase ラーニング&イノベーションセンター(LINC)に仕事の拠点を移し、Steelcaseの研究開発と設計のグローバルチームのベースを構築してきた人物だ。その代表プロダクトがカーボンファイバー製のLess Than Five(レス・ザン・ファイブ)チェア。約2キロという驚きの軽量さで移動性やスタッキング機能の常識を塗り替えてきた。

共通言語を持つ

ハミルトンによれば、透明性の高い流動的な業務プロセスを実現するために必要なのがチーム共有ツールの活用である。個々に様々なデジタルツールを使うのは、物理的に一緒にいる時にはコンテンツ共有も容易だが、今回のような予期せぬ事態ではそれが困難になることが分かった。情報共有が上手く機能しないことからの意思疎通の欠如が、結果としてプロジェクトの停滞や業務効率の低下を招いてしまうことになる。

アドバイス:「チームの共通認識のための共通言語を持つこと。チーム全員が同じツールを使用すれば、誰でも同じ情報を平等に共有できることになります。ツールが上司主導や個人所有でないことが誰もがコンテンツに積極的に参加し、チームに貢献したいと思える環境を創出するのです。」

「世の中には業務効率化に役立つさまざまなデジタルツールがあります。しかし、どれもそれだけでは十分ではなく、そのチームにとって最適なツールの組み合わせを探し、試すことが大事です。」

ピーター・ボッケル
地域担当デザインマネージャー、Steelcase Asia Pacific

その一例だが、ハミルトン率いるチームは、最近、CADソフトを開発しているAutodeskと組んで、チームの1ユーザーが3Dモデルを操作しながら、他者が図形や図面を見て注釈をつけたり、簡単に引き継ぎや手を加えることができるようにした。これによってもはや隣にいなくても仕事ができる環境が整ったのだ。

香港のアジアパシフィック地域担当デザインマネージャーであるピーター・ボッケルもその重要性を強調する。彼のチームは、過去6か月間、テレワークを余儀なくされた。香港民主化デモの後のコロナ危機だ。「私たちのチームは、分散しながら抽象的な作業から多くの仮説のもとで作業をすることが多いので、作業の文書化、情報の収集や共有、抽象的アイデア出し等の方法に多くの労力を費やさなければなりません。世の中には業務効率化に役立つさまざまなデジタルツールがあります。しかし、どれもそれだけでは十分ではなく、そのチームにとって最適なツールの組み合わせを探し、試すことが大事になります。」

チーム全員の思考の視覚化とその表現を可能にする共有デジタルツール。それらを活用すればするほど、物理的距離はもはやコラボレーションの障壁ではなくなる。しかし、いままで隣同士に座っての作業に慣れてきたがゆえに、これは決して自然に起こるものでもない。 「分散型チームにとって、プロセス全体でメンバーの誰もがデジタルでコン​​テンツ共有できるということが必須になります。これをしない限り、チームリーダーとして各メンバーの能力を最大限に生かし、その士気を高めることは困難だと考えます。誰もが同じものを見ながら会話ができる。そのことでプロセスはより自然な流れの中で流動的になる。こういったことが創造プロセスをはるかに容易にしていくのです。 」とハミルトンは言う。

動画の浸透

動画は、生成型コラボレーションを成功させるもう1つの必須ツールだ。今日のほとんどの動画プラットフォームでは、お互いを見ながらコンテンツ共有ができる。なんといっても互いに顔を見ながらの会話は、ジェスチャー、何気ないしぐさや顔の表情で「空気を読む」ことができる。加えて、話を被せたり、遮ったり、他のことをしながらの通話を防ぐことにも有効だ。むろん、これにはまったくの制限がないわけでもない。

互いに顔を見ながらの会話は、ジェスチャー、何気ないしぐさや顔の表情で「空気を読む」ことができる。加えて、話を被せたり、遮ったり、他のことをしながらの通話を防ぐことにも有効だ。

「これらのコラボレーションツールを利用する際には、人はコンテンツに集中するため、誤解を招きかねない非言語的なジェスチャーや表情を読み取ることは少し難しくなります。会議でしゃべりにくそうにしている人の発言を時に誘導すること、口頭で話を中断するかわりにチャット機能を利用して質問や疑問点があるかどうかをそっと確認することなど、メンバーを適切なタイミングで会話に引き込み、全員に確実に伝わるように調整、統制する人の存在が必要になるのです。」とカマーは語る。

アジャイルから学ぶ

こうしたプロジェクトの進捗状況を監視、調整、統制する役割を務める人を設けることも一つの方法である。アジャイル型チームが採用しているスクラムマスターのような存在だ。分散型チームでは、大きな目標に向けて仕事やプロセスを可視化し、全員が共通認識を持って効率的に働くことが要求される。「物理的距離がある中で各人の仕事がチームの大きな目標から逸脱しないように監視するということが非常に重要になってきています。この調整役が、まさにこの全員の作業状況をきちんと把握するという役目を担うのです。リモートワークには、一同がオフィスにいる時よりもさらに統制された環境が必要になるのです。」とカマーは説明する。

コミュニティを探す

仕事とは、社会的な活動でもある。しかし、今回の突然のテレワークが孤立感を深め、メンタルな不調から協調しながら働くことができなくなるケースも多い。「人と肩を並べながら仕事をする際のエネルギーや活力はまわりに伝染していきます。この相互作用は創造ワークに不可欠といってもいいほどです。しかし、現在、私たちは、テレワークや人との接触を最小限にすることを強いられています。」とハミルトンは語る。その中で私たちが提案するアイデアは、仕事を離れた雑談タイム、つまり「ソーシャルアワー」を設けることだ。ビデオ通話にログインして、全員が個別に作業をしている間も継続してつながり、誰とでも気軽に雑談ができる「ワームホール」の設置だ。日課としてのスタンドアップミーティングの前に何気なくかわす会話など、オフィスで普通にやっていたことをそのままバーチャルな世界でも実践してみてはどうだろう。

「仕事関係、趣味を通じたコミュニティ、友人や仲間と意識的に積極的につながってみよう。情報共有から得るものは多くあります。ネットで知らない人と共通の趣味や好きなものでつながる、何か大きな目的に向かうグループでつながる。こうして好奇心を持ち続け、自分がしている/信じていることで幅広くバーチャルにつながることで世界が広がり、人間をさらに豊かにしていくと私は考えます。」


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