ハイブリッドワーク

ハイブリッドおよびブレンド型学習環境を設計する方法

コロナ禍で注目されているのがブレンド型学習という新たな教育スタイルである。

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この記事は、「来たる時代へ舵を切る:ポスト・コロナ時代のオフィス」シリーズの一部です。

パンデミックがもたらした学校閉鎖によって、193か国、16億人もの生徒や学生が影響を受けた。企業のテレワークと同様、予期せぬかたちでオンライン授業へとシフトせざるを得ない中、教育関係者や生徒、学生たちは何が足りなく、何が機能しているかを認識し始めた。

自宅のリビングや寝室での学習に悩みや不安を抱えている家庭も多いはずだ。当社は、ブレンド型学習に関する最新調査を長年に及ぶ研究と組み合わせることで、いかにユーザーエクスペリエンスを高めるかを導き出した。

ブレンド型学習は、学習成果を高めるために対面授業とオンライン授業を組み合わせた学習形態を指す。

綿密な計画と透明性、テクノロジーへのアクセスとノウハウが違いを生む

調査によると、推進要因が教員と学生・生徒のユーザーエクスペリエンスに大きな違いをもたらすことが分かっている。学校が連携しながら透明性を持って前進しようとする時に学生・生徒や教員はリモートからのオンライン学習に価値を見出していた。全学生・生徒がネットやデバイスを公平に使用でき、教員がツールやそのシステムに慣れながら効果的に活用できている場合も同じだ。自主学習を実践できている学生・生徒は、オンラインへの適応も早い。また、学校、学生・生徒、教員、保護者の間での透明性の高い有意義なオープンコミュニケーションも非常に有効となる。

主要な知見

Steelcaseの研究員たちは、コロナ以前とコロナ禍での調査研究から、下記の4つをブレンド型学習の最重要項目と特定した。

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大学での学習は、高次のスキルと個々にあった学習体験にシフトし始めている。

対面での授業や講義の代わりに、そのコンテンツをオンライン上で閲覧でき、教員は学生・生徒と問題解決、コミュニケーション、コラボレーションといった項目に重点的に取り組むことができる。

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学生・生徒と教員との間の親密度合いや心地良さは、それぞれに異なる。

Microsoft TeamsとZoomの専門家たちの間では、ミュート(マイクの消音)を解除するのが難しいと感じる人がいる。教育現場が適切なツールとオンライン学習を定着させるには、さまざまなトレーニングや「適切」なコミュニケーションが必要である。


テクノロジーは人間同士を切り離すこともできる。

学生・生徒のオンライン授業は、孤立化を招く可能性もある。他人から目を逸らし、孤立感や孤独感を感じるか、大人数でつながるオンライン授業の実践のいずれかである。オンライン学習の場合、個別学習指導がしやすい反面、多くの場合、テキスト重視でコミュニケーション不足が指摘されている。

スペースには多くのことが要求される。

全てのスペースは、より高度な認知レベルでの活動をサポートするだけでなく、自然発生的に起こる人間同士の交流や学習を通してのコミュニティ構築も念頭に置かなければならない。多くの学習環境は、多機能を考慮して設計されていない。学生・生徒の活動がオンラインにシフトし、場所や時間の制限がなくなるにつれ、ラボや図書館、共有スペースといった場所が新たな学習の「場」としての役割を持つようになっていく。

 

設計デザイン原則

調査によって導かれた知見をベースに、当社では、安全かつ成果が上がるブレンド型学習環境を設計するための基本原則を下記の5つに特定した。

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心構え + 準備

スペースという物理的環境は、戦略的アプローチとコミュニケーションを強化することで、そこで取るべき行動を促し、適切なスペースとテクノロジーでこれからの取り組みを支援しなければならない。計画をする際には下記の項目を念頭におこう:

戦略的計画と連携

特定されたプラットフォームと指導法

参加者全員が公平に利用できる

サポートとコミュニケーション

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人間同士のつながり

「人」、「テクノロジー」、「場」が画期的な方法で統合されて初めてその学習効果は高まる。その際に考慮することは、人を適切につなぐ環境づくりである。例えば:

画面上または対面しながらコンテンツをより視覚化することで内容に集中できる。

リモート参加者も画面上でコンテンツや参加者をきちんと見る/見られるように視界環境を考慮する。

ネットとリアルの参加者全員が等しくミーティングに参加できるように環境の格差を是正する。

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高度な柔軟性

新たなテクノロジーの導入とそれによって進化する授業をサポートするためには、教室やインフォーマルなスペースには高い柔軟性が求められる。例えば:

より実践的な授業のように新たな指導方法の提供や様々な学習モードの間を容易に切り替えられること。

変更可能(ユーザーに合ったスペース)と変換可能(ジムを教室として利用など)

学習の「場」として教室外の「中間の場所」を有効活用することで学習スペースの区切りを緩和する。

ホスティング + 統合

ホスティングは、ブレンド型学習環境の鍵です。特に重要なことは:

部屋全体に電源を確保する。

動画ストリーミング配信や録画環境を整備—コンテンツやリモートユーザーのカメラの角度や複数の画面を考慮する。

アナログとデジタルをサポート—デジタルツールやホワイトボードなどのアナログツールは、共に協力しながら思考を視覚化する。

次のステップを考える—学習強化のための音声インターフェース、AIやVRは実験段階にある。

密集度 + 規則性 + 分割

ブレンド型学習は、密集度を下げる意味では有効ですが、対人距離の確保も同時に考慮する必要がある。

椅子や机を取り除き、体育館や図書館などの未使用の広いスペースを教室として転用することで密集度を減らす。

机を90度回転させるなどの什器の規則的配置を変える。互い違いに配置することで机の周りのスペースが広くなる。

ユーザー自らが動かせる間仕切りを追加し、スペースを区切る。

ブレンド型学習環境

教室、ラボ、コラボレーションや交流スペース、教員スペースにおける主な原則を採用することでブレンド型学習は強化されていく。

 
学生・生徒が対面で授業に参加できない場合は壁面表示を利用して参加し、天井に設置したマイクで音響をサポートする。

 
このラボスタイルの教室は、テクノロジーを介したコンテンツ共有に最適である。トライアングルレイアウトは、画面コンテンツを見えやすくし、互いに目線を合わせやすくなる。

 
この多目的教室は、専用の教室、または教育イノベーションラボのような共有スペースとしても利用できる。

 
オンラインでの指導は、対面での学習体験とバーチャルでのグループとしての学習を融合できる。

 
学生・生徒は、自習に適した場所や椅子を選択できる。コラボレーション型テクノロジーにより、他学生・生徒や教員との情報共有や復習なども容易になる。

教員用スペース


慎重に配置された吸音ポッドは、遠隔教育をサポートするためのスペースとツールを提供し、複数の教員で利用できる。

 
 

 
 
教員への要求が増える中、個室にすることで教員は小休止しながら熟考できる時間をつくることができる。

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