デザイン Q&A

Q + A レイ・オールデンバーグ

Ray Oldenburg, Q + A with Ray Oldenburg – 360 Magazine Issue 69: Making Distance Disappear

「第3の場所」を提唱した社会学者、レイ・オールデンバーグへのインタビュー

自宅と仕事の他に存在する社会的な「場」としてのパブリックな「場」という考え方は、何世紀もの間存在してきましたが、それが「サード・プレイス (第3の場所)」として辞書の中に登場したのは、社会学者のRay Oldenburgが1989年の著書「The Great Good Place」の中でその概念を詳細に解説してからでした。それ以来、この考え方は常に注目されてきました。

「第3の場所」という概念は地域社会や社会的つながりから「場」の重要性に関するものまで、専門的な分野でしばしば引用されてきました。彼の著書は今も増刷されています。スターバックスはかつてオールデンバーグに自社カフェの推薦を依頼したことがあるほどです (彼は断りましたが!)

第1の場所 (自宅) および第2の場所 (仕事) ではない「第3の場所」が、近年脚光を浴びるようになってきています。これは企業内に「第3の場所」、すなわち、社員がコーヒーや時にビールさえも飲むことができるようなカフェや、カジュアルでとびきり居心地のよい場所で同僚とつながることに社会的な価値を見出すようになってきたからです。

米ペンサコラにある西フロリダ大学の社会学名誉教授でもあるオールデンバーグは、8年かけて書き上げた自身の著書について、フロリダの地に移住したことでその本のインスピレーションが沸いたと語っています。

オールデンバーグの「第3の場所」に関する自著は25年前に発表されたものですが、未だに増刷されており、彼の人や「場」に関わる理論は未だ色あせず、古さを感じさせません。

ペンサコラへ移住したことがきっかけで著書「The Great Good Place」へのインスピレーションを得ることができたのですか?

私たちの最初の家の近隣には多くの若者が住んでいて、定期的に近隣住民が集まっていました。最近の分譲地ではプライバシー重視の排他的な近隣関係ができるのが普通ですが私たちはそうはしたくなかったのです。しかし、私たちの2番目の現在の家は分譲地でプライバシーを重視するあまりに歩道すらプライバシーを重視して、歩道さえなく、人の気配すら感じない環境です。チャールストン市長は、アメリカ人は都市計画ができないと以前よくぼやいていました。住みやすい都市には歩ける範囲に日常必需品が買える施設があることが必須です。しかし、私たちはそうしたものからはるかに離れ、何をするにも車が必要な場所に移住してしまったのです。

それで、あなたはどうされたのですか?

私は自宅の2台の車が置ける車庫をバーに変えました。しょうがないので自分で「第3の場所」を作ったのです。私は本物のマホガニーの棚を手に入れて、酒類を並べました。ビールが詰まった冷蔵庫やワインクーラーまで揃えたのです。私自身はそれほどお酒を飲むほうではありませんが、バーは水曜と日曜の週2日を営業日としました。あらゆる人たちがやってきます。大学の図書館員、義理の兄弟、退職した医師、その他大勢です。

ここ25年間で「第3の場所」で最も驚いたことは何ですか?

最も驚かせたことはまずは企業が関心を示したことです。企業はかつて、デスクに社員が長い時間向かっていればいるほど、より生産性が上がると信じていました。それが打ち砕かれたのです。経営幹部たちは社員が望む場所で、望む時間に働くことで生産性が上がるということに気づいたのです。ビジネス環境は競争が激化し、とにかく企業はどこよりも速く革新的な製品やサービスをだすことを強いられているのです。もし、社員を集わせ、密につなげることができればイノベーションは加速します。多分、この考え方は今後長きに渡って企業や業界のベースになると私は思っています。

「経営幹部たちは社員が望む場所で、望む時間に働くことで生産性が上がるということに気づいたのです。

今日、最も重要な「第3の場所」はどこだと思いますか?

図書館、コミュニティホール、教会、リフォームされたYMCA、そして誰もが気軽に利用できるカフェです。旅行する際に私はいつも目的地に着く20-30分前には高速から降りて地元の街中に入るようにしています。そこにしかない景色や現地にしかないものに出会うからです。時には期待はずれの食べ物にも出会いますが。。

ソーシャルメディアは新たな「第3の場所」となりえると思いますか?

「第3の場所」とは対面式であることが条件です。電子コミュニケーションがバーチャルな「第3の場所」になるという考えは誤解を招くものです。「バーチャル」の本当の意味はカタチが原物ではないが本質的あるいは効果として現実であり、原物であることです。しかし、この場合にはそれは当てはまりません。あなたが「第3の場所」に行くと、そこにいる人が誰であれ、自分をさらすことになります。そこにいるのはあなたと全く異なる人々かもしれません。想像してみてください。知らない隣人をあなたは不審に感じるでしょう。そう感じたままに行動するとしたら決して友好的な関係を築くことはできません。あなたは嫌いではない人と時間を過ごしたいと思いますよね。これと同じです。

企業はもっと「第3の場所」を推奨するべきだと思いますか?

優秀な人材を惹きつけることには貢献はするでしょう。但し、人々をハッピーにする「場」でなければなりません。こうしたことを積極的に行うことが違いを生みだします。また、これは多種多様な世界において、その多様性と相互作用を活性化することへの一歩にもつながります。ダイバーシティとは人種、宗教、民族、国の出身地、社会的や経済的格差などを含む多様性のことを指します。人間は個々に異なります。しかし、この違いがお互いへの関心や興味を生み出しているのです。

企業内に「第3の場所」を設けると、どのような利点があると思いますか?

コーヒーを飲めたら人は集まりますか? 間違いなく集まるでしょう。しかし、人は他者から逃避したくなる時もあるのです。職場でも密な人間関係を築くことはできますが、それだけでは十分でないと私は考えます。オフィス以外のパブリックの場所での「第3の場所」ではさまざまな人に出会い、それが個の成長にもつながります。ある意味、人との違いや多様性を快適に体験できる「場」だからです。人間は本質的に社会的動物であり、ハッピーな人の周りにはハッピーな人がいるものです。あなたにとって快適な「第3の場所」を見つけてください。そこでより多くの友人をつくることです。友人が多ければ多いほど、長生きします。企業は自社の近くの「第3の場所」の使用を推奨してもうまくいくでしょう。社員がオフィスから逃げ出す機会を持てるようにすること、それが有能な人材を確保することにも貢献します。


「第3の場所」の10の機能

レイ・オールデンバーグはとびきり居心地の良い「場」に関して10の機能を特定しました。ますます多くの企業のワーク環境が、いわゆる企業内の第3の場所 (カフェ、コーヒーカウンターやジュースバー、その他の人が集う場) を持つようになるに連れ、以下のような疑問が湧いてきます。「それは社外の第3の場所と同じような機能があるのか?」ということです。下記内の星マークはSteelcaseのワークカフェで適用できるものです。

1
民主主義の助長
アメリカの哲学者ジョン・デューイはかつて「民主主義の精神とその実現は街角で隣人同士が自由に集まって、会話したり、議論したりできる緊密なコミュニケーションによって形成される。」と主張しています。

2*
隣人との絆
近所の集会場所では近隣同士が知り合い、絆が形成されます。密に交わることで誰を信頼できるかを判断でき、隣人に対する不審の念が払拭されます。

3*
複数の友人関係
多くの友人を持ち、頻繁に会える唯一の方法は住んでいる近くに中間的な集いの場を持つことです。人間はより多くの友人を持つことで、より長生きすることができます。

4
精神的活力
Joie de vivre (生きる歓び) やla dolce vita (甘い生活) というような人生観は街の歩道やカフェなど公共の場で頻繁に人と会話をして交流することから生まれます。

5
集いの「場」
ハリケーンアンドリューがフロリダを襲った際、多くの人々が助けを求める中、近所に公共の集会場所がなかったためにどこにいけばよいのかわからない人で溢れていました。災害の際は公的援助より個人的援助が早く行われるため、そのような「場」の設置が大きな重要性を持ちます。こうした状況においても、「第3の場所」の存在が役に立ちます。

6*
社会資本の生成
さまざまのスキルと興味を持つ人々がお互いに交わり、信頼関係を構築することは経済にもプラスの効果を与えます。米南部では昔、パブを許可した地域は許可しなかった地域よりも経済が繁栄したという話があります。

7
無償のヘルプ
「第3の場所」は異なる職業、才能、スキルを持った様々なタイプの人を惹きつけます。人が助けを必要としていることが人々のトピックの一つになることもあり、その中の1人でも援助の手を差し伸べようとします。「第3の場所」で会う人々との関係は友人と比べて「弱い結びつき」であることは間違いありませんが、例えば、仕事を探す際などには役に立つことがあります。

8
定年後の「場」
もし、家の近くに自分の「第3の場所」があれば、定年後でもリフレッシュするために「家を出たい」という欲求を満たすことができます。

9*
「個」の成長
自宅のようなオフィスのような空間でさまざまな人たちと顔をあわせることになります。「第3の場所」は異なる職業、背景、社会的経済的地位、価値観を持った人々を惹きつけます。これらの人々と交流することで、世の中のさまざまなことを学び、成長することができます。

10*
知的な討論の「場」
日常的な問題やその他の多くの問題について、定期的に非公式に議論することがあります。参加者は自分の考えをしっかりとまとめることを学び、適当な意見は反対の大合唱を呼ぶことも多々あります。


より詳細な情報

レイ・オールデンバーグや彼の第3の場所の概念をお知りになりたい方は下記をご覧ください:

Oldenburg

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