デザイン Q&A

創業30周年を迎えるアムステルダムのHeyligers: デザインQ +A

創業者Willem Heyligers氏が建築デザインに対するアプローチを語る。

1988年に創立されたHEYLIGERS design + projects HEYLIGERS d+p は、建築デザイン分野で30周年を迎えた。アムステルダムに本社、ユトレヒトの中心地にスタジオを構える同社は、世界中の幅広い業種にまたがるクライアントを抱える建築設計事務所で、高度な専門的知識をベースにしたインフラ技術と卓越したインテリアデザインを特長としている。今回、360は創業者兼パートナーであるWillem Heyligers氏に過去30年間で、同社の事業と 職場環境 のデザインがどう進化したかを聞いた。

360: 過去30年間を振り返ってみた時に、御社の初期のプロジェクトは現在の事業に何か影響を与えていますか?

以下WH: 30年前の創業当時のプロジェクトは、アムステルダム内の金融のトレーディングルームやディーリングルームでした。設計が複雑でほとんど競合がいなかったためすぐにグローバルな市場に躍り出ることができました。この分野の人々は一日中複数のモニターを駆使しながら長時間働くというのが一般的でした。皆が近い距離に座り、誰が何をしているかを把握できる環境を望み、個室のような閉鎖された空間を嫌ってもいました。それは人間工学を考慮し、休憩エリアを配した極めてオープンなオフィス環境でした。それが30年も前のことです。

私たちは彼らがどんな環境を望んでいるのかよく理解していたので、当時のオフィス標準とは異なる彼らが望む完璧なオフィスを創造することが出来たのです。まず、私たちは彼らがなぜその働き方をしようと決断したのかを調べ上げました。どうスペースを使うつもりなのか?そこで人々は何をするのか?また、その建物や土地は有効活用できているのかも確認してみました。当時、私たちは既存の建物の建築とリノベーションの両方に携わっていたので、両面から異なるアプローチが可能でした。

360: 現在、プロジェクトに対しての最善のアプローチはどう決めているのですか?

WH: I現在、私が主張するのはハイブリッドなソリューションです。もはや自席を離れてオフィス中を動き回るよう説得しなくてもいいのです。それぞれが異なる働き方をするという共通認識があるからです。しかし、それはデザイナーやファシリティマネージャーが押し付けるものではなく、そこで働く人の仕事の仕方を楽にするものであることが重要なのです。これは個々の個性や性格にも非常に関係があります。専門職や同じ業務を遂行するチームのニーズを満たすのに当てはまるただ一つのソリューションというものはありません。異なる個性を持つ人々が仕事を快適にこなせる自分の「場」を見つけられる環境を創り上げることなのです。

HEYLIGERS design + projects

HEYLIGERS design + projects

HEYLIGERS design + projects

HEYLIGERS design + projects

HEYLIGERS design + projects

HEYLIGERS design + projects

360: ではそのハイブリッドなソリューションというものをどのようにデザインしているのですか?

WH: 今まで以上に顧客であるユーザーと深く関わることです。もっと対話し、顧客のニーズがどこにあるのかを見極めなければなりません。長期雇用になり、何世代もが共存し、キャップを被ってスケートボードで出勤する28歳と弁当持参で出勤する63歳との価値観のギャップも生まれてくるのは当然です。しかし、彼らは協力し合いながら会社を繁栄させていかなければなりません。協働しやすい環境をつくるには、まずはプロジェクトを発足させる前に、様々な部署の人にインタビューしてみるのが一般的でしょう。しかし、それだけでは不十分です。私たちは例えば、最年少や最年長の社員、新規雇用の人など様々な人と話をするようにしています。個人的に対話をし始めると心を開き、真のニーズを聞き出すことが出来るようになります。

360: 案件から学んだことをどうデザインに活かしていますか?

WH: 私たちが学んだことは、たとえ同じ業務をしていても人によって働き方が違うということです。例えば同じ仕事をしていても人間には「ギャザラー」や「ディストリビューター」がいるということです。つまり、「ギャザラー」とは現場に出て情報収集をし、問題を見つけてオフィスに戻り、出来るだけ最短で問題を解決しようとする人。「ディストリビューター」とは解決策を見つけたら、他者が聞きたいか聞きたくないかは関係なく誰にでもそのことを話す人です。両方とも完全に異なる仕事の仕方をしながらも、業務には欠かせない役割を持っています。異なるタスクを遂行しているのですが、それは仕事内容に基づくというよりは彼らがどう働くのかによるのです。よって、その異なる仕事の仕方をサポートするにはそのニーズを満たす様々な種類の仕事環境が必要になるということです。

360: 職場環境の設計の未来をどう予測しますか?

WH: 私たちは在宅で仕事をする人の数は減っていくのではないかと予想しています。もし、オフィスにいないと自己成長のための機会を逃してしまっているのです。オフィスにいないと何か取り残されたようにも感じるでしょう。意欲的な社員は必ず出勤します。可能な限りオフィスで過ごし、他者から何かを学ぶことでお互いを高め合うことが出来ます。継続的に何かを学ぶということは非常に重要になってきており、それは在宅勤務では不可能なのです。

交通渋滞や長距離通勤にかかる時間と労力を避ける為、企業は在宅勤務ではなく様々な場所にオフィスを分散させようとしています。一つの都市や国に一つの本社を設けるのではなく、私たちがユトレヒトとアムステルダムにオフィスを分散させているように、サテライトオフィスを設置するということです。ユトレヒトはそんなに遠い場所ではないのですが、交通渋滞がひどい時は非常に遠く感じます。

360: 企業組織にとって職場環境とはどのような役割を担っているとお考えですか?

WH: 企業のDNAはオフィスの中にあります。オフィスにもしいなければ、自分自身の成長、より良いポジションやより面白い仕事を得るという全ての機会を失っていることになるのです。オフィスの雰囲気は優秀な才能を獲得する際に非常に重要な要素になっています。そこで意欲的に働きたいと思えるオフィスでなければなりません。それこそが私が働きたいと思うオフィスです。

360: もし何をしてもいいと言われたたら、あなたにとってのドリームプロジェクトとは何ですか?

WH: 私たちのプロジェクトの約50%は建築や既存の建物のリノベーションです。建物をチョイスし変身させたいと思う建物はたくさんあります。また、インテリアデザインの方も始めたので、エンドユーザーのニーズをよく把握しています。私のドリームプロジェクトは、私たちのオフィスに隣接する1903年建設の旧発電所を手がけることです。そこはもう何年を廃墟状態なので、そこを再生できればと強く望んでいます。なぜならその地域の活性化に繋がるかもしれないからです。建築の変革やインテリアで幅広い世代に対応できる何か、そして、様々な企業からの人が集い、協働し、時間や食事を共にできるオープンな環境を創造できればと考えています。それが私のドリームプロジェクトです。


創業者兼パートナーであるWillem Heyligers氏は1988年にHEYLIGERS design + pro-jectsを創業。アムステルダムとユトレヒトの2拠点にスタジオを構える。同社はWillem Heyligers、Lonneke Leijnse、Marleen Valstarを共同パートナーとし、約20名の建築家とデザイナーを抱えている。

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