コラボレーション

「静かな人」の秘めたパワー

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労働人口の30-50%は内向型人間が占めていると言います。どうすれば内向的特性をもっと生かすことができるのでしょうか?

社交的で活動的であることが評価される文化において、外向型人間はその積極性や社交性、強い自己主張がリーダーとしての素質と見なされ、もてはやされがちです。その一方、内向型人間は豊かな創造力、集中度、忍耐力などの才能と能力を持ちながらもリーダーとしての風格はないと思われていました。その代わりに、静かで、引っ込み思案で、恥ずかしがり屋、人付き合いが苦手という不利なイメージがつきまとっています。このようなイメージがあるために、多くの内向型人間は常にその傾向を克服し、仕事での成功に欠かせない外交的特質を表にだそうと必死に努力しています。無理して外向型人間にあわせて、その本質的能力を抑えながら生活することは大変疲れる作業です。

ビジネスリーダーたちも内向型であることが多く、全体の労働人口の中でもかなりの数を占め、その貴重な特性を認識し始めています。そして、とかく外向型人間がもてはやされる社会的背景の中で、その潜在的な能力を最大限に引き出す方法を模索しています。

「人口の半分から三分の一は内向型人間なのです。」と語るのは世界的に反響をよんだベストセラー著書、「Quiet – The Power of Inroverts in a World That Can’t Stop Talking、内向型人間の時代、社会を変える静かな人の力」の著者であるSusan Cain(スーザン ケイン)氏です。内向型人間は外向型人間中心のビジネス社会で成功するために無理して外向型のように振る舞う傾向があると言います。

「内向型人間が外向型のように振る舞うことは極めて不自然なことで、そうすることは心身共に疲れさせることになります。多くの努力も伴い、仕事を遂行する意欲さえも減少してしまいます。」とCain氏は語ります。

内向型人間は外向型に比べてより洞察力があり、感性豊かで、外部の刺激にも敏感な傾向が強く、彼らにとって騒がしいグループワークは体力を消耗させます。彼らはとかく、仕事を遂行するために同僚から離れて作業をする時間を必要としていますが、それに適した静寂でプライバシーが確保できる空間が不足していることが多いのが現状です。

「すべての組織にはかなり多くの内向型人間がいることになります。多様な考え方に価値を置いている企業はすべての社員の創造力をフルに活用したいと考えているはずです。もし、働き方が変化したからといって、社員に提供する「場」がすべて同じであったらどうでしょうか? 個の違いをただ単に肩書きだけでなく、性格によって分類したらどうなるでしょうか? 内向型人間が最大限に力を発揮できるようにするにはどこで、どのように働くことがベストなのでしょうか?」とSteelcaseの前CEOであるJim Keane氏は問いかけます。


偶然から生まれたコラボレーション

SteelcaseとCain氏は共同で内向型人間について、また彼らが最大限に力を発揮できる方法について深く研究し、その知識をベースにして、様々なスペースを創造しました。「Susan Cainの静寂なスペース by Steelcase」と名付けられたプライベートスペースシリーズは内装、家具、ワークツールなどが内向型人間の独特なニーズを満たすように徹底的に検討され、適切にデザインされました。

SteelcaseとCain氏の間の「Quiet Revolution™ – 静かな革命」構想は偶然にそして静かに始まりました。「私はある週末、車の中でSusanが自書についてインタビューされているのをたまたま聞いたのです。彼女はとても熱心に人間を研究して、彼女なりの内向型人間に対する考え方に大変共感しました。私たち、Steelcaseはプライバシーに関して長年研究を重ねていて、お互いの考え方に共通点がかなりあったのです。」とKeane氏は語っています。

「私たちは研究に対する熱意も含め、共通の価値観を共有しあうことができたのです。Steelcaseが仕事場で人々が何を感じ、仕事で成功するにはどうすればよいかなど人間について深いレベルまで考えていることは素晴らしいと思いました。ですからこの関係は極めて自然に築かれたのです。」とCain氏は述べています。

このコレクションはプライバシーに関する人間の普遍的ニーズにおけるSteelcaseの研究調査とCain氏の内向型人間に関する徹底した研究の両方を統合し、それをベースとして生みだされました。「内向型人間は1人でいることや目立たない環境に身を置くことで自分を充電できるのに対して、外向型人間は騒がしい場にいることで活力を得ています。内向型人間の神経システムはこのような騒がしい刺激に対してより反応してしまいます。ですから、もし内向型人間がひどく騒々しく、耳障りな音が聞こえる環境の中に入ると、その思考プロセスには無駄な認知的負担がかかるのです。負担があることで集中できずに、本来の能力を発揮することができないのです。」とCain氏は続けます。

Steelcaseの調査ではすべてのワーカーにとってプライバシーは必要であると結論づけています。米国では正社員の31%は仕事を遂行するために自席から離れることがあると回答しています。39,000人のワーカーを対象にしたSteelcaseのワークプレイス調査では95%の人が極秘会話をする場合など、静かでプライベートな「場」を必要としているということですが、41%の人しかそのようなスペースを与えられていないと回答しています。14カ国、1万人以上を対象にした他の調査では多くのプライバシーを与えることが人々の仕事への意欲や集中度を増すことに貢献していることが明らかになっています。

内向型人間にコントロールできる権利を与える

コラボレーションとイノベーションが叫ばれる現在、多くの企業はエネルギッシュでオープンなレイアウトスペースを構築しながらも、その中での音や照明、コミュニケーションの度合いなど外部からの刺激の量をワーカー自らがコントロールできるスペースをつくっている企業は多くはありません。人が欲する刺激の量は時と場合によって異なるという事実があるにも関わらず、現状はこういう具合です。

内向型人間はどこでどうやって働くかのチョイスとコントロールができる様々な「場」を欲しています。「Susan Cainの静寂なスペース by Steelcase」構想は新規または既存のワークプレイスの中に組み込める、内向型人間が成功する様々なスペースを提案しています。

Susan Cain氏とSteelcaseのデザインチームは「静寂なスペース」のためのデザイン定義を共同で設定しました。「私はデザイナーではありませんが内向型人間のエキスパートとして、なにが正しく、正しくないかを見分けることはできます。そして、Steelcaseのデザイナーはそれをすぐにカタチにしてくれました。」とCain氏は語っています。
Susan Cain氏とSteelcaseのデザインチームは「静寂なスペース」のためのデザイン定義を共同で設定しました。「私はデザイナーではありませんが内向型人間のエキスパートとして、なにが正しく、正しくないかを見分けることはできます。そして、Steelcaseのデザイナーはそれをすぐにカタチにしてくれました。」とCain氏は語っています。

Cain氏とSteelcaseのデザインチームとのコラボ構想はこうして始まり、週一回のミーティングを数ヶ月も続け、最終的に5つのタイプのスペースに絞りました。「私はデザイナーではありませんが、内向型人間のエキスパートとして、なにが正しく、正しくないかを見分けることはできます。そして、Steelcaseのデザイナーはそれをすぐにカタチにしてくれました。」とCain氏は語っています。

「例えば、人間は時によってプライバシーと自律性を欲します。静寂なスペースがあるオフィスでさえ、壁をガラスにしたりして中で何が起きているかがわかるようにデザインされています。私たちは常に見られていることは好みません。ですから、完全なるプライバシーというアイディアはあくまでも定義のひとつにすぎないのです。」

スーザン・ケイン氏とSteelcaseが構築したデザイン定義は:

  • 1人でいられる: 刺激の多いワークプレイスの中で、誰からの邪魔もなく集中して、イノベーションに向かってモノをつくりあげる自由な環境であること
  • ユーザーが環境をコントロールできる: ワークスペースの要素をユーザー自らが調節できること
  • 感覚的バランスを調節できる: 落ち着いた、くつろげる雰囲気の中で知覚的な刺激を調節できること
  • 心理的に安心できる: 安心して人に見られたり、見たりできる様々な「場」をつくること
あなたは内向型?それとも外向型ですか? Susan Cain氏は内向型か外交型かを大雑把に判断できる20の質問クイズを開発しています。
あなたは内向型?それとも外向型ですか? Susan Cain氏は内向型か外交型かを大雑把に判断できる20の質問クイズを開発しています。

5つの「静寂なスペース」の提案

Susan Cain・スーザン・ケインの静寂なスペース by Steelcase

「Susan Cainの静寂なスペース by Steelcase」では仕事場の内向型人間をサポートする5タイプのスペースを提案しています。48-100平方フィートの広さの各スペースは特定の姿勢やワークモード、そしてプライバシーが確保されたスペースでSteelcaseとSteelcaseのプレミアムブランドであるCoalesseからの厳選された製品で構成されています。また、家具の素材やテクノロジーも適切に考慮され、静かな空間というだけでなく、内向型人間が最大限に力を発揮できるような雰囲気を創出しています。また、すべてのスペースではサウンドマスキングを兼ね備えた優れた音響パフォーマンスを誇るV.I.A.ウォールを使用し、聞き取れる雑音をすべて遮断しています。

ありのままの自分でいられる

この静寂スペースではユーザーが1人になり、ありのままの自分を保ちながら.仕事ができる温かく、癒しのある空間を提供しています。視覚的、音響的プライバシーも適切に確保され、集中したり、休息したり、目を閉じて冷静に物事を見つめたりと、1日を通して必要な活力をここで養います。

CoalesseのLagunitas(ラグニタス)ソファ&テーブルはまるで自宅のリビングにいるような居心地のよい雰囲気を醸し出しながら、電源コンセントも備え、携帯デバイスをサポートする環境を提供しています。

流れに入り込む

この静寂スペースは視覚的に気が散ることがなく、集中や熟考、戦略思考など没頭できるように配慮されています。ウッドやウールのような自然素材を使用することで心の状態をフラットにし、 集中力を高め、身体的、認知的に気が散らない空間を創り出します。.

V.I.A.に統合されたモニターはデジタルコンテンツの活用を促進します。Elective Elementsデスクシステムは資料を広げるだけの十分な広さを備え、本棚に仕事ツールや好みのオブジェを置くことも可能です。照明も調節でき、V.I.Aウォールは邪魔になるノイズを寄せつけません。

スタジオ

この静寂スペースはまわりの騒々しさから逃れ、ストレッチなどをして活力を回復できる、より動的な環境を提供しています。. ストレッチをすることで血流が良くなり、脳に血液が行き渡ることで脳がフル稼働し、集中力や創造力が高まります。ユーザーがその時の気分や仕事内容によって、照明、音楽、デジタルコンテンツなどスペースをコントロールすることが可能です。

V.I.A.には調光照明やスピーカーが統合され、ユーザーは空間のムードを調節することが可能です。Hosuチェアはリラックスした、インフォーマルな姿勢をサポートし、統合されたモニターには活力を回復させるようなコンテンツを表示することに活用できます。また、床をフローリングにすることでストレッチ、瞑想などに適した環境をつくり、身体のリセットができるように工夫されています。

休憩室

この静寂スペースはミーティング中やその前後に、人と繋がり、情報を共有し、信頼関係を築く くためのインフォーマルな「場」を提供します。ネットやデジタルツールも完備された環境の中でラウンジにゆったりと腰掛けながら、リラックスした姿勢で休憩しながら、仕事の話もできます。

Z快適なインフォーマルな雰囲気を創るLagunitasソファを90°のL字に配置することで会話もしやすく、精神的にも安心して会話に集中できます。Lagunitasには電源コンセントも装備されているので携帯デバイスや壁に統合されたモニターを通してデジタルでの情報交換も容易です。照明は調光付きです。

仕事や価値観のディープな共有

この静寂なスペースは内向型人間が同僚とコンテンツを見せながらディープな会話や討論などに集中できるスペースを提供しています。部屋に誰がいるかが見えながらも、V.I.A.の組み合わせ方で、通りすがりの人には表示されるコンテンツが見えないように工夫できます。media:scapeと統合することでユーザーはホワイトボードを使ってブレストをしながら、デジタルコンテンツを編集したり、立案したりすることが可能です。

「これらのスペースは米国の大手企業でもほとんど存在しません。企業によっては似たようなスペースに挑戦する会社もありますが、2006年に本のためのリサーチを始めて以来、私が目にしてきたものは基本的にひとつの巨大な部屋があり、そこには真の意味のプライバシーを提供するスペースはほとんどありませんでした。」

「プライバシーがある静かで孤独な時間は社員の創造性やイノベーションにはもちろんのこと、企業のリーダーにとっても欠かせません。静寂なスペースとはこれらの要素をワークプレイスに組み入れる方法のひとつです。つまり、人の能力を引き出し、輝かせるには適切な「場」が不可欠だということです。」


 「内向型人間」リスト

有名な内向型人間の中には卓越した話術で人々を魅了する人、世界的なイノベーター、そして偉大なリーダーたちがいます。例えば、アブラハム リンカーン、チャールズ ダーウィン、ヴァン ゴッホ、ローザ パークス、エレノア ルーズベルト、アルバート アインシュタイン、フレデリック ショパン、オードリー ヘップバーンなどがいます。

静かな孤独の中で充電する内向型人間に対して、外向型人間は人間同士が交流する社交的な場で活力を見いだします。正反対な性格でありながらも、うまくいくと想定外の力を発揮します。例えば、アップルの創始者で、外向型のスティーブ ジョブズは共同創始者である内向型のスティーブ ウォズニアックに多大なる信頼を寄せていました。ジョブズの後継者として名前があがったのは誰でしょう。「静かなティム クック」でした。

有名な精神的、政治的リーダーであったマハトマ ガンジーは内向型人間で、「穏やかに、あなたは世界を揺り動かすことができる。」という力強い名言を残しています。”

現代の内向型人間リスト:

  • アーサー J. K. ローリング
  • ビル ゲイツ、マイクロソフト共同創始者
  • ローラ ブッシュ、元米大統領夫人、
  • ジョージ ステファノプロス、TV ジャーナリスト
  • エマ ワトソン、女優
  • ウォーレン バフェット、投資家
  • クリスチナ アギレラ、ポップスター
  • デービッド レターマン、テレビ司会者
  • ハリソン フォード、俳優
  • マイケル ジョーダン、NBA 選手
  • アル ゴア、元米副大統領
  • ラリー ページ、グーグル共同創始者
  • スティーブン スピルバーグ、映画監督

静かな革命

Susan Cain 氏は非営利組織、「The Quiet Revolution
静かな革命」を 2014 年に設立しています。この組織は彼
女のベストセラー著書、「Quiet – The Power of Inroverts
in a World That Canʼt Stop Talking、内向型人間の時
代、社会を変える静かな人の力」によって生まれた意識の
高まりをさらに推進するものです。「内向型人間の秘めた力
を引き出し、すべての人の利益とする」を使命として、
2014 年にプロジェクトに初めて着手しました。その取り組
みはオフィス家具業界のリーダーである Steelcase とパー
トナーシップを組み、労働力の半分を占める内向型人間を
最大限に活用するワークスペースのあり方を企業に提案す
るというものでした。「The Quiet Revolution 静かな革命」
の中にはワーカー用のトレーニングやリーダーシップに特化
したチームがいて、リーディングカンパニーを対象に内向
型人間の独特な強さやどう行動させることで企業の力にな
るかなど、内向型人間の価値を引き出すトレーニングやソ
リューションを成果ベースで提供しています。
2014 年から 2015 年にかけては、「The Quiet Revolution
静かな革命」はその対象者を拡大し、内向型の子供を持つ
両親や彼らを教える教員、また人々が静かで心が充実した
生活をおくれるように、例えば、旅行や自宅のデザイン、
音響、ウェルネスまで提案する様々なサービスを開始して
いく予定です。

「The Quiet Revolution 静かな革命」についての詳細は:

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