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ハッピーな「職場」の秘訣:ロン・フリードマンに聞く

それは必ずしも費用をかけることではない。

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「従業員がハッピーな職場をつくる秘訣。それは決してお金をかけることではなく、従業員が最善の仕事をこなすための環境をつくることだ。」

ロン・フリードマン著The Best Place to Work: The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace最高の仕事ができる幸せな職場

受賞歴のある社会心理学者、作家でもあるロン・フリードマン(Ron Friedman)博士は、 創造性を発揮できるスペースでの企業の従業員エンゲージメントの向上を目指している組織団体、 ignite80では、何千もの学術的研究を活用し 「最高の仕事ができる幸せな職場(The Best Place to Work: The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace)」では、何千もの学術的研究を活用しオフィスを幸せな職場に変えるための実用的なヒントを紹介している。今回、働く「場」を効果的に機能させる方法をSteelcaseの360のインタビューで語っている。

360: 職場での優れた従業員体験とビジネスの成功はどう関係があると考えますか?

Ron Friedman: 最上の職場を築くための事例はあります。仕事を好きになると人間はより創造的になり生産性が上がることは研究でも分かっています。自分にもっと投資し、仕事に楽しみを見いだすことでより多くのことを成し遂げることができます。仕事でハッピーでいられれば、より良い顧客サービスも提供できます。このことで顧客体験は向上し、ブランドへの信頼や愛着も増し、売り上げ増へとつながります。最上の職場環境づくりが収益性と関係があることを企業がここまで認識したことはかつてなかったはずです。

360: 素晴らしい従業員体験を生み出す際の最大の共通認識はなんだと思いますか?

RF: 間違った最大の共通認識は費用がかかるということです。プールやバレーコート、30ものレストランやカフェなど贅沢品に投資している多くの企業にはこの傾向があります。会社が繁栄するには全てが完備されたリゾート施設を造らなければならないという印象を受けます。これは実際には間違っています。最上のワーク・エクスペリエンス(職場体験)の核となる要素は、基本的な人間らしい心理的ニーズを満足させることなのです。これは多額な費用をかけなくても実現が可能なのです。

360: チーム体験を向上させようとした際によく経営トップが犯す間違いは何だと思いますか?

RF: もちろん善意ではあるのですがそこにも多くの間違いがあります。よくあるのは、従業員のモチベーションを引き出すためには多くの給料を支払わなければならないと考えていることです。例えば、期待以上の労働意欲が上がるように複雑なボーナス制度を導入したりです。お金をぶら下げて期待する成果を告げる際に従業員はなんとかその目標を達成しようとどんなことでもするでしょう。例え、そのために規則を曲げたり、組織の本当の利益にならないようなことをしてもです。

もう一つの間違いは報奨金かもしれません。よくあるのが「今月の従業員」と謳って競争意欲を駆り立てることです。もし勝ったとしてもそれが続くことはないわけです。また、新しい管理職が来るとよくやるのが休憩なしに何かを達成した人を讃えることです。これは仕事がまるで罰であるようなメッセージを従業員に与えます。真に機能するアプローチはより多くのことをこなすようにモチベーションをあげ、さらなる責任を与えることで個々がさらに能力を高め、自分の仕事をよりコントロールできるようになることです。

360: 従業員の仕事への意欲を持続させるにはどうすればいいですか?

RF: ひとつは能力向上という人間の基本欲求を満たすことです。それは単に仕事を立派にこなすだけでありません。組織での役割が高度になるにつれ、人間は自分が成長できている感覚に満足するものなのです。時間の経過とともに自分のスキルが向上していると思えれば、仕事への意欲も増し、さらにそれを伸ばしたいと思うでしょう。さらなる報酬やボーナス、スイミングプールなどは必要ないのです。より良い仕事をし、自分のスキルが伸びているという感覚を得たいだけなのです。

360: 組織が従業員のモチベーションを妨げているものは何ですか?

RF: 多くの場合、管理職や経営トップは仕事をする上での目標を持っています。新規顧客の獲得、プレゼンテーション、メディア対応などに日々追われ、個々が十分なモチベーションを持って働いているかなど心配する時間もないのです。本当は彼らがいなくても自動的にそれが出来ることが重要なのです。自動的といってもコンピュータプログラムで何かを動かすという意味ではなく、上司が心配しなくてもそうなるシステムです。

360: それはどう機能するのか事例を話してもらえますか?

RF: シンプルなアイデアは決して多額の費用を必要としません。仕事において継続的に従業員が成長できるようにすることです。 その1つが全従業員に読書する時間を予算として計上することです。例えば、仕事に関連する本を四半期に一度購入出来ると想像してください。そうすることで新たなアイデアや今までにない新鮮な視点で物事を捉えられ、それが仕事上に応用できれば自分の能力が向上していると感じられるのです。こうしたシンプルかつ基本的なことを実際に試してみる企業はほとんどないでしょう。

もうひとつは、「本を読む必要はありませんーブッククラブ」。これは何かというと、ひとりの人が本を読んでそこからのアイデアや情報を他者と共有していくことです。こうすることで本を読まなければならないという強迫観念を持つことなく、アイデアを巡って議論が生まれてきます。全員が1年に1冊の本を読んでも、他者にしつこく聞くわけにはいかないでしょう。でもこの場合だと誰もが何かを学ぶことができます。全従業員が書籍を購入することで1年に1つでも良いアイデアを思いつけば、このプログラムは成功したと言えるのです。

360: あなたはモチベーターとして、継続的な学習以外に他にどんなメリットがあると思いますか?

RF: アメリカ発のワゴン、ラジオフライヤーは面白いことをしました。自転車を通勤手段にしている人たちに走行距離で金銭の払い戻しをしているのです。これは仕事で車を運転している人のためだけではありません。もし、あなたが健康維持のために自転車を使っているなら、走行距離を記録し、仕事中に運動したことに対する金銭的インセンティブを受けることができるというものです。運動は体重減だけでなく健康的に見た目や気分も良くなるだけでなく、仕事での思考力も改善することが多くの研究から分かっています。

もう一つの例は、昼も夜も休みなく働くことを敢えてしない人に報酬を与える企業が増えていることです。カリフォルニア州のランド・コーポレーション(Rand Corporation)は財務の施策を上手く活用し、従業員が休暇の日数を決め、休暇中も実際には5割り増しの賃金を受け取ることができるようにしました。これはアメリカ人の多くが休暇を取らない中、従業員が休暇をとるように仕向ける巧妙なアプローチです。この背景には精神的にエネルギーを補充することで高度なレベルで仕事が出来るということがあるのです。

360: 従業員がこれらのメリットを積極的に利用出来るような制度を導入するようどう企業に勧めているのですか?

RF: 正しい行動を形成するより優れた制度はないですし、行動規範の冊子に何が書いてあるかなど重要ではないのです。重要なのはトップの人が自ら示すことです。よく目にするのが誰も利用しないような運動施設を導入している企業です。利用されないのは仕事中に時間が無駄だと思われているからです。それよりも経営トップが「歩きながらミーティング」をすることです。そうすると、他の従業員も身体を動かして動き回るようになり、スタミナもつき気分やエネルギーも改善します。

フリードマン氏への次回のインタビュー、「ワーク・エクスペリエンスはどう変わったか?,」 では、4年前に彼の本が出版されて以来、何が変わって、最上のワーク・エクスペリエンスの核である何が変わっていないかを聞いている。


Ron Friedman博士は、人間のモチベーションと高いパフォーマンスを専門とする受賞歴のある社会心理学者。作家の顔も持ち、著書には 「最高の仕事ができる幸せな職場(The Best Place to Work: The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace)」がある。従業員エンゲージメントの向上を目指す組織団体、ignite80 がある。従業員エンゲージメントの向上を目指す組織団体、

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