イノベーション

Q+A: IDEOが考えるイノベーションに不可欠な6つの資質

イノベーションに不可欠な資質を特定、効果測定する「Creative Difference」という最強ツール

世界的デザインコンサルティング企業であるIDEOは20年以上にわたり、多くの企業に向けて業界をリードする斬新な発想をもたらしてきた。なかでも有名なのはApple社の初代マウスのデザインだ。そして、今、同社は企業組織のチームの創造性における競争力を高める新ツールを開発、導入した。 「クリエイティブ・ディッファレンスCreative Difference」 と呼ばれるこのツールは、IDEOがイノベーションに不可欠と特定した6つの資質を評価、計測するツールだ。今回、360はIDEO Products部門のマネージングディレクターであるDavid Aycan氏に職場において創造性とイノベーションを促進する方法を尋ねた。.

360: 今回、何故イノベーションを育むことからそれを計測してみようと考えたのですか?

David: 私たちIDEOの仕事の大部分を占めているのが企業の組織への影響を測り、組織が自力で変革できるよう支援することなのです。元々製品とサービスのデザイン業務でした。しかし、何年も前から組織のイノベーション能力を高めたいという企業からの要望依頼が非常に多くなり、その経験と対策の質を向上させてきました。しかし、現場での対応には限りがあることにも気づき始めたのです。

私たちは、イノベーション推進に奮闘する最大手クライアントの経営トップたちと意見交換を行っています。その際、チームを次のレベルへと高めていくために何にフォーカスすればいいのかを模索しているということを何度も耳にしました。顧客中心や現状打破を謳ってもそれを達成する戦術を実行することは決して容易くはないのです。


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チーム力向上のためにIDEOがイノベーションを測定:IDEOの「Creative Difference」ツールが導き出すイノベーションの育成方法とその驚くべき知見を知ろう。

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私たちは、チームの現況を整理し、経営トップが目立った変化を起こす要素に集中できるようにしなければならないと感じたのです。そこから私たちの問いかけと取り組みは始まりました。「その要因とはなんなのか」、「チームへの影響とその効果を測定できないものか」、「組織を次のレベルへと引き上げるための具体的な行動を提案できないものか」等の問いかけが「Creative Difference」ツール開発につながりました。

360: 「Creative Difference」ツールの測定項目として最終的に選んだ6つの資質は大変興味深いものです。この中で一番影響力があるのはどれだとお考えですか?

David: 権限 委譲が最も強力な手段であることははっきりしています。 権限委譲とは、従業員の意識を変え、明確な道を指し示し、信頼を持って仕事を彼らに任せることです。それはつまり、従業員に適切なツールキットを提供し、課題により創造的に取り組み、チームとして問題解決に向けて適切に判断できるスキルを身につけされることでもあります。チームがアイデアを前進させる明確な青写真を持ち、そのゴールに向けてのやり方やツールを自由に活用できるとしたら、彼らがイノベーションに向けて情熱を持って最大の労力と時間を費やす確率は高くなります。

360: 他の5つの資質についてはどうですか?また、それぞれの資質というものはどう交わるのですか?

David: まず1つ目は 目的です。企業として利益を上げる以外に組織として明確な存在意義を持っているかということです。社会の中で多くの選択肢がある中で何故これでなくてならないのかという問いかけです。これは従業員に対しての共通使命として発信できる大きな優位点です。使命感を持った従業員は強く駆り立てられ、自身の能力を最大限に発揮しながら仕事に取り組めるようになります。

2つ目は 外に目を向けるです。テーブルを囲んだ会議が多く、社内プロセスや社内政治にばかりに膨大なエネルギーや時間を割いているのをよく目にします。大企業では成熟期に入ると意識を外に向けることが少なくなり、顧客目線を忘れてしまいがちです。これを意識的に実行している企業は、世界中にセンサーを巡らせ、顧客の声を吸い上げているので従業員は顧客や市場についてより深く理解できます。

興味深いことに外に目を向けている企業は、アイデアに枯渇することもありません。普段、問題が生じた際にどう優先順位をつけますか?多くの企業は技術的側面から試作品をつくったりテストをしたりします。しかし、それらの多くはアイデアを探求する早道である 実験という好機を見逃しています。実験 は、簡単にアイデアを試せる優秀かつ公正なる行為です。「実験」によってどうアイデアを推進し、皆が理解できる方法で適切かつ公正にアイデアに投資できるかを判断できるのです。

このチームでの コラボレーション とは、専門家をチームに集めてアジャイルな方法で課題に取り組むことを指します。肩書きやステータスといったものが一切取り除かれたこのチームは、上司、部下といった上下関係があるチームよりもはるかに効果的に機能します。仕事はある部門から次の部門に引き渡されるのではなく、チーム全体でアイデアを出し合い、課題に取り組ませることがチームの成果を大きく左右します。こうすると途中で突然誰かが待ったをかけることもなくなります。

最後に私たちが注目しているのは 改良です。技術面から製品を改良し 問題を創造的に解決することに投資をすることです。しかし、よくあるのは創造プロセスと実行プロセスとの間にある人間の頭の中での操作です。実際はその境界ははっきりしていません。つまり、そのアイデアの卓越性がいくら検証されたからといって、それが必ずしも当初の目的を達成する優れた製品になるとは限らないからです。直面している技術的問題を解決するために時間を割くことは極めて重要でより効果的に問題に対処できるようになります。

360: これらの資質の一部または全てを習得するチームは、習得しないチームと比べるとどの程度差がありますか?

David: 私たちの今までの経験で言えば、前述した6つの資質の基礎を正しく習得できるだけでその資質のすべてで優れている必要はありません。これらの基礎のいくつかでも習得できているチームは、習得できていないチームより目標を達成する確率は3〜5倍高くなります。このことが最終的にチームの目標達成や成功する製品導入への確率の大小に大きな影響を及ぼすのです。

IDEO
IDEOのサンフランシスコオフィスで働くCreative Differenceチーム。 (提供:IDEO)

360: 御社が発見した定義と関係して、職場環境はどの程度重要だとお考えですか?

David: 最も創造的で革新的な企業には、これらの資質を表すスペースがあることがはっきりしています。スペース関連データをもう少し掘り下げてみたところ、チームの成果にとってスペースの活性化というものが非常に重要だと分かり、私たちも驚いています。効果的にプロトタイプを制作し、「実験」の項目でもスコアが高い企業には、それを実行できるスペースがオフィスにあるのです。もし、従業員に新たなアイデアを試し、構築し、テストすることを求めているとしたら、それを実行できるスペースやツールを従業員に与えることです。

私たちは、スペースに関連する多くの要素に注目しました。例えば、顧客を表現するスペース、プロト制作が可能なスペース、関連テクノロジー完備のスペースなどです。パーセンタイル値を100とすると活気に溢れたスペースの90パーセンタイルという高い値のチーム成果は、50パーセンタイルを下回ったチームと比較して45%以上改善しているのです。職場環境がチームの成果にどれだけ大きな影響力を持つかは明らかです。

360: 御社はこのデータから新たな知見を見出していますが、今後もこの学びが続いていくと思いますか?

David: 私たちは、数十年にわたりこれらの資質がどれほどの効果があるものかを観察し続けています。その背後にあるデータを観ながら私たち自身も当社の在り方について学んでいます。働くことに関する手法は多く持ち合わせていますが、効果的なチームの構築やその具体策、業界毎に異なるプロセスがどの程度の頻度で起こるかなどまだまだ学ぶべきことはあります。例えば、プロジェクトに取り組む際にはどういった専門性の人を混在させるのがベストかということもそのひとつです。そういう意味からも「Creative Difference」ツールは、知識とデータの宝庫といえるでしょう。

分散型チームや組織の効果向上に向けてこれらの測定をどう利用するかなど、「Creative Difference」ツールを更に掘り下げたDavid Aycan氏へのインタビューを 360 リアルタイムポッドキャスト で聞いてみよう。


IDEO - David AycanDavid Aycan氏は起業家兼ビジネスデザイナーでIDEOの「Design for Change」スタジオの新規事業開発を担当。企業がイノベーションで業界をリードし、市場変化にも迅速に適応し、業務改善にも取り組めるように、現在、経営トップに向けてより革新的で競争力のある組織構築ができるような仕組みづくりを開発、提案している。

*写真提供:IDEO

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