テクノロジーは教育をどう変えるのか
スタンフォード大学教授が2011年に人口知能に 関する無料のオンライン講座を開始したら、たち まち190 カ国から16 万もの学生からの応募が あり、かなりの注目を浴びたことがあります。
スタンフォード大学教授が2011年に人口知能に 関する無料のオンライン講座を開始したら、たち まち190 カ国から16 万もの学生からの応募が あり、かなりの注目を浴びたことがあります。
これはまさにテクノロジーが世界中の教育を立て直していくという顕著な例のひとつです。大規模なオープンオンライン講座の急増から、さまざまな「ブレンドされた学習方法」(オンライン上または実際の建物内で)をサポートする情報端末の普及まで、テクノロジーが早期教育から大学まで、すべてのレベルの教育過程において新たな機会を生み出しています。
「テクノロジーは教育における関係、特に教師と生徒の間の 関係を変化させはじめています。教育者が学習体験を再考 しはじめると、その進化をサポートする教育用スペースの立 て直しも重要になってきます。」とSteelcase WorkSpace Futures の研究員で教育とテクノロジーがスペースに及ぼ す影響を研究調査しているSteelcase Education Solutions のメンバーでもあるAndrew Kim 氏は述べてい ます。現在までに、その研究調査で20 もの学校の生徒と 先生を観察し、彼らにインタビューも実施しています。
教育のすべての過程において、最も急成長し、逆戻りしないトレンドは、ノートパソコンやタブレット、そしてその他の情報端末の使用の増加です。多くの小学校ではすべての生徒にノートパソコンやタブレットを与えています。大学では多くの学生がノートパソコンやタブレットを所有し、使用しています。携帯できる利便さはいうまでもなく、学生の多くが授業のコンテンツがスマートフォンに配信されることを望んでいます。
数年前までは、情報端末というものは配布資料や、オーバーヘッドプロジェクター、本、紙やペンなどの従来型のツールに対する唯一の代用品として活用されていました。しかし、今日ではどうでしょうか。これらのテクノロジーが講義や学習が実際に行われる方法を変換し始めているのです。
教師は今までの標準化された暗記学習にとって代わるものとしてテクノロジーを活用し、学生のためによりパーソナルで自己主導型の体験を創造しようとしています。これからは複数のユーザーがコラボレーションし、ソフトを活用しながらバーチャルな対話をサポートし、マルチなデバイスを同期させる環境が教室内外で起こることはまちがいありません。そして学生や教師はアニメーションや動画を多く使用しながらデジタルなコンテンツを作成していく機会が増えていきます。
「興味深いのは、学習がバーチャルになればなるほど、バーチャルな活動はよりリアルになるということです。ある人はバーチャルとリアルが真ん中で出会うようなものだと言っています。」
Andrew KimSteelcase WorkSpace Futures
過去に教師が所有していた情報の多くは、現在、学生は簡単にネット上で情報を得ることができます。それは従来のように教師が内容を講義し、学生が吸収するという古いスタイルを大きく変える要因になっています。その結果、教師は教室でテクノロジーを活用して、自分たちの役割を変化させていこうという動きがあります。テクノロジーはもはや教師が一方的に情報を与えるというのではなく、学生と一緒になって問題解決やコミュニケーション、コラボレーションを推進することを可能にするのです。つまり、これは教育評論家が言う、今の教育の目標ともされている、より次元の高いスキルを養うということなのです。
「教室は知識の創造vs 知識の消費という「場」に変化して いきます。学生が学ぶために何を使用するかの選択肢を持 ち始めると、よりクリエイティブで、何かを生み出すという 作業を支援するスペースが必要になります。つまり、これは 教室内外においてのモバイル化の増加とさまざまな個人作 業や学習のレベルをサポートする新たな学習スペースが登 場することを意味しています。また、オフィス環境と同様に 教育の環境においても、「場」、「姿勢」そしてバーチャルと リアルの両方の相互交流を促進する「存在」のバレットが 重要になるということです。実際、学校は情報端末の活用 という意味では急成長している企業のようなもので、多く がオフィスと同様の課題に直面しています。」とKim 氏は 述べています。
まさに津波のように起きているテクノロジーの動向は教育の場を一掃しながらも、ある部分は今までと同様に変わらないものもあります。例えば、学生も教師もアナログな素材を決して放棄したわけでなく、それはこれからもすぐに変わるというものではありません。彼らは引き続き、ホワイトボード、紙の資料、ノートを活用し、思考を可視化し、そのスペースはこのアナログとデジタル両方を併用しながら活用できるようにデザインされるべきなのです。
ブレンドされる学習方法
「教育のための理想的な「場」とは人、テクノロジー、スペースが革新的な方法で統合されていることです。」
教育のすべての過程において、学習活動はオンラインとリアルに対面する相互交流の双方を組み合わせたブレンドされた学習プログラムを通して、遠隔からそして敷地内の両方で発生することになります。数ある例の中の一例をあげれば、フリップ授業モデルというものがあります。学生は授業外でオンラインでコンテンツにアクセスし、宿題をし、授業中には討論やグループワーク作業などのアクティブラーニング(能動的学習方法)を通して、新たな知識を獲得していくというものです。
このブレンドされた学習方法はコスト削減に貢献するという意味で、今日の厳しい経済状況に適した方法として人気があります。いくつかの研究からも、学生が情報へのアクセスの仕方を自分で選択できるようにさせることは対面やオンライン上で授業を受けたりするより、効果的であるという結果がでています。
「興味深いのは、学習がバーチャルになればなるほど、バー チャルな活動はよりリアルになるということです。ある人は バーチャルとリアルが真ん中で出会うようなものだと言って います。」とKim 氏は言っています。「多くの例は、一つの 授業の中でさまざまな異なる科目の授業が行われており、 複数の教師が個別指導教師として、また士気を高める人と して直接指導をするということです。それは学生と面と向か うというよりは、肩を並べての指導といったほうがいいかも しれません。」
オンライン学習が定着しつつある
授業配信の技術は当たり前になってきています。
160k2011 年、スタンフォード大学によって |
20k教育と学習のアプリケーションはiPad |
79%フランスの中学校教師は過去2 年間で |
65%アメリカの学生の65% はオンライン授 |
このブレンドされた学習方法は、教師の役割を進行役とかコーチのような立場に変化させるために、助手的な教師を使うことも増えており、教師の側にいてオンライン学習をしきったり、授業を手助けしたりします。また、スペースの意味合いも異なってきています。教室の前で授業をするというスタイルにあわせてデザインされた教室は、コラボレーション作業や自己主導型の学習を同時にサポートするスペースに変換される必要があります。例えば、アメリカのいくつかの幼稚園ではオンラインでの自主学習用に別のゾーンを設けているところがあります。また他の幼稚園では今までの授業用のスペースを削減し、広い開放的なスペースや自己学習用のスペースを増やしているところもあります。
大学ではさまざまなオンライン講座を開講しながら、学生と教授の関わり方を構築し、パフォーマンスを監視し、測定する方法を模索しています。特に欧米の大学で盛り上がっているMOOCs(ムークス、大規模公開オンライン講座)はまだ実験段階ですが、最先端の動きとして注目されています。オンライン上の討論フォーラムにもかかわらず、多くの学生はまだ教授と面と向かって話せる動画通話を望んでいます。ムークスのプラットフォームはこのニーズにも対応し、学生同士は地理的な近接度によってグループ化された、オンライン上のコミュニティ型ポータルサイトを通して簡単に出会うことが可能です。
教授は学校が認知的または社会的学習を生み出すことで、ネット上での学校にさらにリアルな空間を追加するという模索が続いています。例えば、あるムークスの教授が移動している街のカフェで「オフィス時間」という設定をし、学生が実際に教授と会うことができるようにしました。あるコミュニティカレッジではムークスのコンテンツを活用し、ムークスがオンライン講座を提供し、コミュニティカレッジは学生と教授が実際に相互交流するリアルな体験をつくるというようにブレンドされた授業を実施しようとしています。
学習はよりバーチャルになり、教授と実際のリアルな物理 的な「場」は教育の均一化という意味では貴重な要素であ り続けることが予想されます。「私たちが研究調査を続ける 中で、教育のための理想的な「場」は人、テクノロジー、ス ペースが革新的な方法で統合されるていることだと確信し ました。もし、教室というものがただ単に知識が消費され る「場」ではなく、知識が生み出される「場」であるとする なら、それは柔軟性がすでにビルトインされた、個人ワー クとコラボレーションが容易に切り替わるイノベーションス タジオと類似しているところがあります。これまで以上に、 教室は新たなテクノロジーが要因となって生み出された新 たな学習への行動様式をサポートする柔軟性の高いスペー スになりえると見ています。」とKim 氏は言います。
発展途上国で起きている急速な発展や新たに台頭するテクノロジーが知識の変換や具現化の方法を変化させたことから、教育はさらに有益なものとして、世界中で重んじられるようになりました。その探求は教育が行われる過程と「場」をさらに改良しつづけ、止まることはないでしょう。
オンライン学習が定着しつつある
授業配信の技術は当たり前になってきています。