JOYEA(中国)のオフィス設計デザイン:テクノロジーと人間性の調和
中国丹陽市にあるJOYEAは、業界を変革する技術特許が注目される中、その革新性とロボット工学で高い評価を得ている産業自動化システムの企業だ。同社の継続的に革新し続ける力は企業指針の1つである人間主体の経営スタイルにある。新家屋を建設する際に同社はSteelcaseと共同で従業員ウェルビーイングにおけるビジョンを構築した。創造性、革新性、健康的ワークスタイルに向けた新スペースはテクノロジーと人間がバランスよく融合することで想定外のことが起こることを実証している。
10年前、多くの中国企業は、大量生産、コスト削減、競争力ある価格を強みとして世界的な差別化を図ってきた。しかし、この方法での経営では従業員ウェルビーイングの向上の余地すらないことは明らかだ。スキルの開発、オフィス環境の強化、ひいては持続可能なビジネスモデルを構築することでの社会的貢献という課題だ。同社の創設者兼社長であるWu氏はこの状況を目の当たりにし、変革への想いをさらに強くした。未来をリードする中国企業は才能豊かな人材を保持しなければならず、そのためには従業員を気遣い、包括的に心地よく健康的でやりがいのある従業員体験に投資することを決意した。

1992年創立以来、会社が成長できたのはWu氏が掲げる利他的価値を重んじる経営スタイルだ。 同社の中国名は「たったひとつ」という意味で道教の哲学(タオイズム)から着想を得ている。「タオイズムのベースは人間性です。人間としての尊厳を持ち自分に責任を持って生きることです。誰もが優しさを切望し、尊厳ある人生を送りたいと願っています。」
これは同社の基本的価値のベースにある。企業として寛大さという文化を奨励する倫理的な経営環境ですべての従業員、顧客、ビジネスパートナー、そして、社会に利益をもたらすことを企業目的としている。市場をリードする同社はロボット工学分野で150以上の特許を取得し、多くのソフト開発が現在進行中である。
この「良い行いをする」という理念は会社の基盤になっている。生産工程の自動化は人々が新たな知識やアイデアを追求し、自由に革新に向けて進むことができるようにするものだ。Wu氏が強調するように機械は交換可能だが人間と文化は交換可能できないのだ。
企業文化に注力する
創業当時は梱包資材会社であった同社は、現在は顧客と協力して梱包材と自動製造設備のカスタム化を業務としている。乳児用粉乳包装資材で85%の国内市場シェアを含み製薬、ヘルスケア、乳製品業界向けの梱包、包装材を提供している。これらの業界は衛生面と精度において高度なクオリティが要求される。
同社の従業員数は150人、平均年齢は29歳だ。その多くが中国の製造業で強く求められている高度なエンジニアリングスキルを備えている。従業員は業務で試すことを積極的に奨励していることから同社のイノベーションに向けての姿勢が分かる。そして、例え、それが損失をもたらしたとしてもその失敗にはペナルティがない。但し、その失敗を分析し、プロセスを見直すことで二度と同じ失敗を繰り返さないような体制も確立している。このようなダイナミックで独創的な環境にあっては高いレベルの信頼と自己責任が問われる。企業の繁栄はそこで働いている人次第で決まると言ってもいい。同社が指し示すポリシーの多くは寛大さ、優しさや思いやりのある行為を奨励している。
この考え方は企業文化の共有に具現化されている。社内教育は同社の哲学の最重要事項で従業員のスキル向上や自己開発、知識共有やアイデアや視点の交換が積極的に奨励されている。
同社は人材を引き付け、定着させ、育成するために従業員が有意義な仕事をし、家族からも誇りに思われる職場だと感じられる新たな社屋「ウィスダム・パーク」を創り上げた。屋内バスケットボールコート、バドミントンコートからジム、オリンピックサイズのスイミングプールまであらゆる面で従業員の健康とバランスの取れたライフスタイルが促進するように設計された。社屋は多くの来訪者を受け入れ、アイデアでリードし、学んだ教訓を共有し、未来に対するビジョンがスペースを通して表現されている。

「世界中の多くの企業の注目はどうやってイノベーションを起こすかです。当社の場合には、それは職場環境でどうイノベーションをサポートするかということに尽きるのです。」
MR WU,JOYEA創設者兼社長
STEELCASEとの協業を選択
「世界中の多くの企業の注目はどうやってイノベーションを起こすかです。当社の場合には、それは職場環境でどうイノベーションをサポートするかということに尽きるのです。」とWu氏は言う。同社新家屋が従業員のための理想的な環境にするために頼ったのSteelcaseだった。 「Steelcaseは、革新的なチームにとって機能する最適な職場環境を創造することで組織や個人が成長することを目指している企業で当社としては完璧なパートナーでした。」
Steelcaseの中国市場の営業本部長であるThunder Ray氏は、Wu氏に初めて会った時にその考え方に触発されたことを明確に覚えていた。「Wu氏は情熱的かつ謙虚で従業員が尊敬と尊厳を得ることができる職場環境、つまりパフォーマンスを妥協しない人間主体の「場」を作ろうとしていました。」
最初から話は明確だった。新家屋のスペースは、従業員がイノベーションに向けて創造的に働き、考え、お互いに刺激しあいながら能力を発揮できるオープンな職場環境を必要としていた。学習する組織として文化を共有できること、個々の個性や帰属意識を高められること、スペースを容易にパーソナル化できることなどだ。
Steelcaseはこのプロジェクトにあたりさまざまな国の専門家からなるチームを結集した。 「さまざまな部門の人間がプロジェクト全体の計画と実施に参加しました。」と語るのはSteelcaseの上海を拠点とするインテリアデザイナーのMichelleだ。チームは、同社の経営層や従業員からヒヤリングを行い、その行動を観察し、ワークショップを行い、彼らの期待、ニーズ、行動を明確にしながら新たなスペース設計へのビジョンを立案した。
「ワークショップが終了してから初めて私たちの作業が始まるのです。」初期データを分析し、レイアウトや仕上げや張り地の選択、グラフィックデザインや家具に変換する作業だ。信じがたいほどの作業量ではあるがやりがいがありその成果は計り知れないものだ。

社内教育の重要性
社会の変化とともに求められるスキルも劇的に変化していく。同社は競争力を維持するために、継続的な社内教育と自己開発の必要性を実感し、企業文化や従業員体験に関しての教育に重きを置いている。イノベーション文化を確立するための同社の教育の柱は、コラボレーション、創造性、批判的思考、コミュニケーション、好奇心の5Cだ。
同社の新家屋には、新入社員やインターンも含めた従業員の実用的スキルと自己啓発のためのトレーニングルームと講義スペースがある。実践的なスキルトレーニングでは、メカ、電気設備、デザイン、有限要素解析、シミュレーション、交渉などのトピックを学ぶ。導入トレーニングには、同社の企業戦略、哲学、価値観に関する講義もある。調達、人事、マーケティングに関する企業管理コース等も充実している。
Wu氏は北京大学、東南大学、南京大学など国内の主要なビジネススクールから招聘され講演も行っている。多くの教育機関やMBAプログラムと戦略的パートナーシップを確立するためのパイプラインも構築している。
企業と教育機関との協業は両者が恩恵を受ける。教育機関には、学生が社会人になってからの現実と直面する課題を提示する責任がある。民間企業と協力することで学生は新たなテクノロジーや研究分野について学ぶことができる。また、企業に取っては有能な才能の発掘にもつながる。
「ウィスダム・パーク」にはこれらの活動をサポートするトレーニングルームがあり、Steelcaseは教育分野での知識をベースに新社屋のトレーニングルームにアクティブラーニング環境を採用した。これによってペアまたは小人数でのグループワーク、アイデア作成、問題解決からグループディスカッション、講義形式まで、さまざまな活動に合わせてそのスペースのレイアウトを自由に素早く変更できる。同社のアクティブラーニングスペースには可動性の高い家具とコミュニケーション用にさまざまなデジタルおよびアナログツールが装備され、活発な議論や情報の交換ができるように設計されている。

目的意識と「場」の感覚
Steelcaseは同社向けに統合テクノロジーからウェルビーイングを配慮したデスク、コラボレーションスペース、教育用教室、さまざまな収納庫など総合的なソリューションとなる製品を提供した。「10,000平方メートル以上もの面積の案件は初めてで私のデザインキャリアの最初の大型プロジェクトでした。」とMichelleは語った。
同社の新家屋はさまざまな機能を持つゾーンに区切られ、Steelcaseの設計チームは家具やシステムだけでなく、装飾も含めて包括的にチームをどうサポートするのが最善かを検討した。各スペースの目的を反映し、自然光を取り入れ、建物の建築的側面を強化するために色彩も配慮された。
デザインの背後にある意図は、従業員が自分のリズムですばやく仕事に取り組めることだった。「従業員が多彩なスペースや家具を効果的に使用しながらイノベーションに向けてアイデアを生み出し続けられるワークスペースを創造したかったのです。一部のスペースは、建物の事情で物理的に分離されましたが複数のワークモードをサポートする多彩なレイアウトを配置しながら情緒的に空間とつながる場が出来たと思っています。」

実行に移されたソリューション
Steelcaseの上海を拠点とするインテリアデザイナーのMichelleは、チームと協力して同社の職場環境の変革を支援。その特徴的なスペースは、企業文化の共有とオープンな経営スタイルを提示している。
タウンホール
同社はコミュニティとチームスピリットの構築を前面に掲げ、社員全員が集えるスペースを設置することを重要視した。タウンホールの会議室は100名まで収容可能で特注のフォーマルな中国式円形テーブルを中心に今までのオフィスにない風景を打ち出した。
通常、中国では、これらの伝統的な円形テーブルは聴衆席の列が囲んでいますがそのスタイルは同社の経営スタイルには合わないため、メモが取れてパソコンも使え、様々なタイプのミーティングにも対応できるよりカジュアルな可動式のカフェテーブルが採用された。より会議をオープンにし、従業員がより積極的に参加したり、必要であれば席を外しやすい環境を提供している。

Wu氏の役員スペース
Wu氏の役員スペースは、個での集中ワークや熟考はもちろん、コラボレーションも考慮されている。決してサイズは広くはないが1日を通しての様々な仕事内容をサポートしている。今日のリーダーは、プライバシーや集中ワークとオープンでフラットな経営スタイルと企業文化をバランスよく融合すべきである。スペース設計の際の中心はコラボレーションであり、社員や中国全土に広く散らばるお客様と容易につながることができるテクノロジーは不可欠である。また、Wu氏は熱心な読書家でもあり特注サイズの書棚を設置、常に学ぶこと、知識や多様な視点に触れることの重要性を社員に対しても説いている。

ディレクターのスペース
経営層や管理職との近い距離も同社の経営方法のベースだ。同社のディレクターは、Steelcaseのアドバイスで「場」のエコシステムを採用し、ひとつのスペースの中でさまざまな活動をサポートできるように設計された。初期の話し合いでは従業員や経営層がスペースに何を求めているかを正確に把握するために多くのワークショップが実施された。ワークショップはチームに貴重な知見をもたらす方法でもある。ヒアリングによると1つはソーシャルな人とのつながりをサポートするスペース、もう一つはコラボレーションだ。現地訪問の際には未来のスペースのあり方が明確に提示された。従業員は、監督者や取締役とも対話ができ、企業としての透明性やカジュアルな雰囲気を高く評価していることは明らかだった。チームはよりオープンなスペース、会議室、カフェエリアへの強い要望を持っており、その従業員の声が最終的ソリューションとして反映された。ディレクターのスペースは集中ワークと活発な討論、静かな熟考の間をスムーズに行き来ができるようにデザインされている。

現在と未来をデザインする
同社の新家屋スペースは革命的でもある。 Steelcaseと同社は引き続き協働しながら、急速に進化する目的地として訪問者を惹きつけている。日本のラーメン店や他地域の施設設備の導入はオフィスの枠を超えている。「ますます多くの中国企業は、従業員の帰属意識を高めるために職場環境づくりに投資をしています。これは人材獲得競争の激化に伴って競合他社よりいかに有能な才能を引き付け、定着させるかのひとつの方法です。Steelcaseが提供したサービスはその構想から設計デザインにまで至ります。日々のニーズを満たしながらも最も重要なことはポジティブな人間関係の構築であり、それは職場環境が果たせる重要な役割だということです。」と語るのは Steelcase中国のマネジングディレクターのThunder Rays氏だ。新しくオープンで快適な職場環境は、効率を改善し、企業のイノベーションと独自の視点を助長するものだ。
「ますます多くの中国企業は、従業員の帰属意識を高めるために職場環境づくりに投資をしています。これは人材獲得競争の激化に伴って競合他社よりいかに有能な才能を引き付け、定着させるかのひとつの方法です。」
THUNDER RAYSTEELCASE GREATER CHINA、マネジングディレクター
会社に対する従業員の忠誠心も高い。Wu氏の経営哲学は、仕事ではなくまるで大家族の一員であるかのように感じられるのだ。元従業員でさえ同社を賛美し、中国の成長と繁栄の輝かしい一例として挙げている。同社の哲学は地域社会だけでなく、国にとっての未来の働き方を示す先駆けとしても注目されている。