接続、多様性、可動性:中国のインターナショナルスクールの新しい潮流
中国の西安にあるXi’an Liangjiatanインターナショナルスクール(XLIS)とSteelcase Educationは共同で生徒の学力向上を加速させるアクティブラーニング環境を実現した。
第一印象
中国の西安は多様性がルーツにある都市だ。かつては長安と呼ばれ、紀元前11世紀頃から、シルクロードの起点として中国とヨーロッパをつなぐ重要な要であった。
今日、そのルーツにある多文化が未来をカタチづくろうとしている。世界のテックカンパニーは、この地域に拠点を置き、多様な文化を持つ人材を採用して中、この地域に活力と潜在的可能性があるにも関わらず、ほとんどの外国人は数年しか滞在しないのが実情だ。
XLISの校長であるLily Liu氏にとって、学校は地域の中心であると語る。 Liu氏は修士課程中にフィンランド、カタール、アメリカ、イギリスの世界でもトップクラスの教育機関を訪問し、進化する世界の教育動向を研究した。それがその後、西安にK-12インターナショナルスクールを創設することにつながる。創設の目的は、単にアクティブラーニング環境を提供するだけではなく、海外及び地元の家族がその地域とより強いつながりを築き、将来的にこの地域に根を下ろすことを最終的な目標としている。 「海外及び地元の家族がこの地域に自分の居場所を見つけ、その子供たちは21世紀のトップクラスの教育が受けられるという自負があります。」とLiu氏は語る。
彼女が情熱を注ぐプロジェクトとして始まったものは、いつの間にかアクティブラーニング環境の先駆者として中国の教育現場で注目を浴びている。「学校や大学での過ごし方はその後の人生に大きな影響を与えます。私が南カリフォルニア大学で過ごした時間はその後の私の人生にとって宝となり、XLISの生徒が同様に貴重な時間を過ごせるような環境を作りたいと願っています。」
Steelcase Educationの販売代理点であるTracy WangはLiu氏と緊密に協力しながら、そのビジョンが共有されプロジェクトは遂行された。「西安市を啓蒙し、支援することは私たちの目標のひとつです。」とLiu氏は言う。グローバルとローカル両方に意識を置くことがXLISの目標であり、強みでもある。「聞くと学ぶ」という哲学をベースにその環境作りには生徒と教師の声も反映させている。「スペースを実際に使う人をその計画に参加させることによって初めて真に機能するスペースが出来上がり、国際教育という学校の未来をカタチ作れるものと信じています。その課程の中で生徒の声が反映されることで共同で何かをつくるという自信も生徒に与えるのです。」
21世紀スキルを育てるスペース
今日の教育には、丸暗記や記憶力以上のものが求められる。創造性や批判的思考、コミュニケーションやコラボレーションスキルから、自己成長マインドや共感力、順応性といった将来のキャリアプランにつながる多様なスキルだ。そのためにはX L I Sではアクティブラーニング環境を採用し、生徒の身体的、認知的、情緒的側面のウェルビーイングに焦点を当てることで21世紀型スキルを取得しやすい環境づくりを目指している。
この学校は、「イノベーション」、「グローバル力」、「自立」という人材価値をベースにInternational Baccalaureate® Diplomaプログラムを教育課程に組み込んでいる。現在、幼稚園から高校まで400人以上の学生が在籍し、今後5年間で1,300人近い生徒数を収容する予定だ。小規模にすることで教育課程の基準に則した柔軟性の高い学習環境を提供することを強みとする。
自由と柔軟性
Liu氏は個々の生徒へのケアと注目、そして自主学習が重要だと考える。 XLISでは、教師はファシリテーターやコーチとしての役割を担い、教室の家具を自由に動かしながら生徒とのつながりを深めていくことができる。家具を簡単に動かしてレイアウトを変えながら、島型、列、円などにしてグループでの活動や講義に合うようにできるのだ。学校全体がこのようにスペースの家具を簡単に動かせることで学生を従来の固定したスペースから解放し、授業内容、教師、他生徒とよりつながることを可能にしている。
教育主体の環境には、グループの全ての人が公平に参加できることと教師が生徒と同じレベルで対話ができることが重要になります。
Lily LiuXi’an Liangjiatanインターナショナルスクール校長
「教育主体の環境には、グループの全ての人が公平に参加できることと教師が生徒と同じレベルで対話ができることが重要になります。授業内容に則してスペースを簡単に再構成できることが生徒を魅了し、学習意欲を駆り立て、授業に集中させるのです。」とLiu氏は言う。
生徒の成長を促す多様な「場」
XLISでは、あらゆるスペースが学習を念頭に設計されている。これらの「中間」エリアには、カジュアルな対話や議論を促し、親や来訪者を考慮した心地よい雰囲気のラウンジスペースもある。学校の図書館は、知識、学習ツール、書籍が所蔵された「ラーニングコモンズ」として新たに生まれ変わった。独立した自主学習からグループでの活動を念頭にコラボレーションや交流のためのオープンエリア、集中ワークができるプライバシーエリアまで多種多様なスペースが配置されている。心地よいカジュアルスペースは、デジタルツールでの情報共有とコラボレーション、読書やプロジェクト課題の作業にも利用される。
学食でのヘルシーな食事は、生徒の健康を最大限に考慮している。様々なサイズのリラックスしたカジュアルな雰囲気のグループスペースも備わっている。モジュール式家具やモダンなスツールとテーブルのダイニングセットなどフレンドリーな会話を促し、コミュニケーションスキルの向上に役立つことも配慮されている。
人間の五感とテクノロジー
現代の生徒にとって、デジタルツールの利用と人間感覚のバランスを取ることは不可欠である。デジタル時代であっても人間の五感には計り知れない価値がある。Steelcase Educationでは、アナログの学習ツールの利用も積極的に推奨している。例えば、SteelcaseのVerbホワイトボードは、自主学習やグループ学習には最適であるだけでなく、内向的な生徒が自分のアイデアを他者と共有する際にも活躍する。
UCLAの研究では、デジタルの文字入力ではなく手書きでメモを取ることは概念等の理解力の向上に効果があると報告されている。落書きやスケッチは、創造的試行錯誤プロセスの一部であり、より自然な方法で授業や課題に取り組むことができる。SteelcaseのCampfireペーパーテーブルは、表面がメモ式で筆記が可能なため、話しながら自分を表現し互いに効果的に情報を共有できる。
才能を引き付け、定着させる
良い授業にするには献身的で情熱的な教師陣も必要になる。また、教室も生徒のニーズに対応しながら生徒が授業を楽しめる明るく開放的で柔軟な教室も不可欠だ。
休息やコラボレーションが可能な心地よいラウンジでは、授業内容の計画、コーチング、交流といった活動をサポートし、電源やツールも装備されている。教師の1日の様々な活動やウェルビーイング向上のために多種多様なスペースや姿勢が取れるように工夫されている。
XLISは、各教師は自席がある従来の職員室から「教師のラウンジ」へと移行した。快適さやつながり、集中力を念頭に設計された教師のためのオアシスだ。そこにはツールも利用しながらのカジュアルな会話、同僚同士のコーチングなどが可能になる多種多様なスペースが配置され、国際的な教師陣が効果的に授業を遂行できるように考えられている。
地域社会との調和
校長をはじめとするXLISの教授陣やスタッフは、学校は地域社会との調和が重要という使命のもと、ローカルとグローバル両方の文化的価値の重視している。例えば、多様性を謳うイベントや活動を定期的に開催している。「世界であらゆるものがつながる中、XLISの生徒は、故郷である西安への想いを深めながら、グローバルなマインドセットを持たなければなりません。」とLiu氏は言う。この教育哲学と考え方こそが包含性やアクティブラーニングにおいてXLISが市場をリードする所以であり、学校のビジョンとして地域の積極的な発展に貢献しているのだ。
そして、校長としての優先事項は明確だ。「校長としてまず重要なことは、常にキャンパスの安全を確保すること。次に生徒が健康でハッピーな学校生活を楽しめるようにすることです。本校は西安市と価値観やビジョンを共有しながら、充実した学校生活を送る学生を輩出し続けてまいります。」