カルチャー

「オフィス」にこだわる15の理由

テレワーク導入でオフィスの役割がこれまで以上に重要になった。

アラン・スミス、グローバルマーケティング統括副社長、Steelcase

テレワーク導入でリモートでのチームコラボレーションが増えるにつれて、改めてオフィスの在り方とそこで何を成し遂げるかが問われている。オフィスは単なる働く「場」だけではない。企業の成長戦略につなげるためのイノベーションを促し、組織文化とコミュニティ意識を育みながら、社員が真に生産的になるために必要な「場」と「ツール」を提供する目的地でなければならない。人をつなげるリアルな「場」には多くのメリットがある。それにこだわる15の理由をここに紹介しよう。

1. 成長: コロナ禍後は、企業間の生き残りをかけての競争が激化するだろうと予想されている。企業はコロナ禍を契機として、イノベーション創出に向けて変革を加速し、さらなる成長を実現しなければならないからだ。イノベーションこそが企業成長の要である。そして、人が集い、新たなアイデア生成に向けて創造力を発揮させながらコラボレーションすることでその土台は築かれる。それと同時に、企業は、ウォールームのような戦略策定、実行、進捗管理のためのプロジェクトルームを設け、会社のあるべき姿であるビジョンを中核に事業の優先順位を従業員に共通認識させることが極めて重要なポイントになる。

2. イノベーション: イノベーションはリアルな「場」で起こっていることが調査からも分かる。働く「場」は、部門を超えての横断的なコラボレーションやコミュニケーションの創出に加え、コンテンツ共有やプロトタイプの検証、仮説や実験が繰り返される創造サイクルををサポートしなければならない。リアルな三次元空間での人同士の相互作用が二次元のバーチャル空間にそう簡単に取って変わることはないだろう。

3. 組織文化: 同じ体験共有が人の行動や価値観を形成し、時間の経過とともに企業の組織文化をかたちづくっていく。企業と従業員との間で共有される価値観や規範が共同体的精神を確立し、難局を打開し、業績や競争力を左右していくことになる。例えば、オフィスの通路で偶然交わされた何気ない会話、同僚とのランチなどの対面コミュニケーションは、画面を通してではなかなか再現できないものである。

4. レジリエンス: コロナ禍によって、混乱や危機に立ち向かう企業の適応能力である「レジリエンス」の重要性が増している。強固な経営体質や組織文化の確立と、対面での俊敏な意思決定を促すツールを備えたスペースづくりは、予期しない混乱に立ち向かうための土台である。危機対応力のあるリーダーシップと健全な組織こそがどんな危機にも決して折れずにしなやかに変容しながら前進できるのだ。

5. 創造力: 「創造力」とは、アイデアを生み出し、困難な問題を解決し、好機を捉え、より良いモノやコトをつくり出していくという本来人間に備わった能力である。例えば、チームでのブレストなどでは、テクノロジーとスペースが統合しながらメンバー同士の思考や活動をサポートする環境を築くことで創造力は最も発揮される。

6. コラボレーション: コラボレーションとは、これからの企業成長とイノベーションには不可欠な作業である。付箋が飛び交うブレストやホワイトボードを囲んでのカジュアルなディスカッション。共にアイデアを共有し、発展させ、定着させる。対面ならではのコミュニケーションにある表情や声のトーン、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションには、暗黙に伝達される情報が多い。また、すべての会議が時間どおりに設定されるオンライン会議では、リアルな「場」で交わされる雑談やちょっとした会話を盛り込むのは難しい。

7. デジタルトランスフォーメーション: コロナ禍を機に加速しているのが「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」である。DX化を通して、企業は国内外で激化する競争上の優位性を確立することを余儀なくされている。新たなビジネスモデルを構築し、戦略室としてのウォールームを立ち上げ、敢えてチームルームを配置する企業もある。特に社会的混乱や危機の際には、直面する問題に迅速に対処し、それを評価、解決するために集うことに勝るものはない。

8. つながる: 邪魔されることなく仕事に集中できると在宅勤務を喜ぶ人もいれば、孤立化や孤独感を感じ、いつの間にかコロナ鬱に陥る人もいる。チームの支援なしでは、孤立し、労働意欲が低下し、離職率上昇にもつながることにもなりかねない。コロナ禍の中、企業は人材流出防止と優秀な人材獲得に奮闘しているのが現状だ。また、同僚とのやりとりが減ったり、オフィスに出勤しようとしない人が過小評価されがちで、人事評価が難しいという声もある。これは個々のキャリアプランだけでなく、将来のリーダー育成計画を含めた人材開発や人材マネジメントにも影響を与えることになる。人間同士の有益なつながりを築く「場」はこれまで以上に重要になっていくだろう。

9. アジリティ: 成果をもたらすことで注目されているのがアジャイルな働き方やアジャイル型組織だ。アジャイルな働き方は、チームがスピーディに学習しながら柔軟性と透明性を持ってプロジェクトを運営することを目指すものだ。しかし、これには、さまざまな学習のステップ、反復やコラボレーションをサポートする多彩な「場」が必要になる。アイデアを生み出し、発展させ、プロトタイプで実験、検証するというプロセスの中で、その状況に合わせて家具を自由に動かしながらスペースを再構成できること、それは絶えず変化する活動をスピーディにこなすことを求められるチームには必要不可欠な要素である。

10. コミュニケーション: テクノロジーの進化でコミュニケーションの仕方は大きく変化した。そして、対面での会話が減ることで何かが失われたことも確かである。チーム活動をサポートするためのオンラインプラットフォーム、SMSやアプリは確かに便利だがそこには危険性も内在している。スマホなどの過度の使用は、倦怠感や居眠り、さらには生産性の低下を招く可能性が高い。連絡を取り合うことは、仕事を進捗させるためには不可欠である、しかし、対面でのコミュニケーションに代わるものはない。

11. 人材の確保と定着: 働く「場」であるオフィスは、企業が安定して有能な人材を獲得し、定着、活用するための重要な戦略ツールでもある。企業のアイデンティティを表現するだけでなく、従業員ファーストが読み取れるツールでもある。個人の裁量でどこでどう働くかのチョイスとコントロールを提供しているか? 同僚と語らうスペースはあるか? テクノロジーがチームワークをサポートしているか? テクノロジーは、社員研修などのオンライン化には役立つが、チーム内で個々が才能を最大限に発揮しながらチーム力を強化し、コミュニティ形成するための人間関係を構築するには十分ではない。

12. ウェルビーイング: 働く「場」は、くつろぎと働きたいと思える雰囲気を促進するように設計されるべきだ。人間工学的配慮はもちろん、作業中はなるべく姿勢を変えられるなど身体を動かすよう促すことも必須である。従業員ウェルビーイングの改善に加え、精神的、心理的側面から安心・安全を考慮するなど、これまで以上にそこで働く人を念頭に設計されなければならない。これからの働く「場」に今まで以上に重要視されるのは、ワークライフバランスの創出である。

13. 分散型ワーク: タイムゾーンを超えた自宅からのオンライン会議が増える中、慣れない映像や雑音に会議に集中できないなどチーム力の強化に支障があるという声も多い。音が聞き取りづらい、声が途中で途切れる、ミュートに気づかないなどの音声トラブルや、誰か1人が喋り続ける、表情や身振りなどの非言語情報が読めないなどの課題も多い。空間環境はそこでの体験を大きく左右する。チーム全員が対等な環境の中で仕事ができる環境が一番望ましく、オフィスがコラボレーションの「場」として位置づけられるのにはこうした理由もある。

14. テクノロジーの統合: 人とテクノロジーがうまく連携するように綿密に設計された没入型スペースは、生産性を向上させるという点からこれからの新たな働き方をサポートすることになる。後付けでただ単に補足的にスペースに追加されるテクノロジーは不十分で、テクノロジーや高性能デバイスは、スペースと統合されてはじめて最大限に機能が発揮される。

15. チェンジマネジメント: テクノロジーの導入などで企業がさまざまな変革を実現する際、それを従業員にスムーズに伝達するには、新たな行動指針を策定し、従業員の気持ちに寄り添いながら共にその仕組みを作り上げることが大切である。オフィスの通路ですれ違うことで偶然起こるおしゃべりや会議前後で交わされる何気ない会話。それらは、特に不確実な時代には価値ある機会を与えるものだ。成果に向けて同じ目標を共有し、共に学び、確認し合いながら業務を遂行していくというプロセスは、ただ単なる言葉のやり取りよりも効果的であることは間違いない。

人が働く「場」とは、人、テクノロジー、内装や家具といった目に見えるもの以上のものを育む空間でもある。適切に設計デザインされた「場」とは、そこで働く人が必要とし、望んでいるモノやコトをサポートするスペースである。さらに、人と人、人とテクノロジーをつなぎ、協働することの中から信頼が生まれ、従業員が幸せでより豊かに働ける環境を創出していく。そして、最終的に生産性を高め、企業の持続的成長や収益につながることを再認識すべきだろう。コロナ禍での制限を通して、企業が直面する課題に柔軟に対応する中で、私たちは人間のつながりたい基本的欲求に目覚め、これを好機としてビジネスを前進させたいものである。


Allan Smithアラン・スミス(Allan Smith)は、1991年にSteelcaseに入社。現在、Steelcaseのグローバルマーケティング統括副社長。Steelcaseのグローバルブランド、ニッチプロダクト、および、子会社事業の製品戦略とその管理、および収益性を統括。調査研究や知見から革新的な製品開発に導く際の中枢的役割を担うチームを率いる。

コメントを残す